■多くのファンを持つ200系の評価はどうだったのか
2007年から14年間にわたって生産されてきたトヨタ「ランドクルーザー(200系)」が、2021年3月末でその歴史に終止符を打つことになったようです。
世界的にファンの多いランドクルーザーシリーズですが、現行モデル(以下、200系)はどのような評価をされてきたのでしょうか。
ランドクルーザーシリーズは、四駆ブーム末期の1987年頃から生産台数が右肩上がりに伸び始め、2018年には200系、プラド(150系)、70系を含めて年間生産台数37.9万台に達したトヨタの主力モデルです。
実質的なライバルであるランドローバーが高級化の道を突き進むなか、ランドクルーザーは質実剛健とゴージャスの中道をいく200系をフラッグシップにしてきました。
中東や北米、中国では非常にウケのいい200系でしたが、日本ではどうだったのでしょうか。
前述の通り、ランドクルーザーシリーズには200系、150系、そして輸出専用の70系がラインナップされています。
世界の市場を見てみると、用途もさることながら、その国でどんな燃料がメインなのかによって、輸出モデルが異なっていることが分かります。
例えばワークホースである70系は、発展途上国や道路インフラが悪い地域をメインに、150系はディーゼルがもてはやされるロシアやオーストラリアに輸出されています。
一方、200系はラグジュアリーが身上のモデルであることから、中近東やアメリカ(北米ではレクサスブランドのLXも)、中国などがメイン市場となっています。
しかし、日本では高額であること、ボディサイズが大きいことなどが要因となって、人気というには程遠いというのが実情です。
トヨタはバブル期真っ只中の1989年に、ランドクルーザー80系をリリースします。
商用的なイメージがまだ残っていた60系ワゴンを一気に高級化した80系は、時代の潮流に乗って大人気に。
当時の四駆ファンからは、「いつかはランクル」といわれるほどの憧れのモデルだったのです。
その後、時代の主役はSUVへと移り、ランドクルーザーシリーズも100系でさらなる高級化・SUV化の道を突き進みます。
しかし、性能や装備が向上した一方で、ランドクルーザーの身上であったワイルドさは失せ始め、200系では完全に高級SUVに変貌してしまったのです。
もちろん、悪路走破性や堅牢性などの基本性能は、まさしくランドクルーザーのものでしたが、日本のファンがランドクルーザーに求めるイメージとは大きくかけ離れてしまいました。
バンパーやサイドステップがエアロ化したことから、本格的なクロスカントリードライブをするとそれらを損傷するリスクが高くなりました。
オフロードでのイージードライブを実現するマルチテレインセレクトが装備されましたが、それもエキスパートには不要なものだったのです。
あまりに電子デバイスが増えてしまったレンジローバーがファンから「電子レンジ」と揶揄されたのと同様に、200系もまたオールドファンからそっぽを向かれてしまったのは否めません。
チューニングという点でも、難しい面があります。コイルスプリング装備のエントリーグレードはリフトアップが可能ですが、車高調整装置やKDSSが付いた上位グレードでは改造は実質不可能。
タイヤ・ホイールのサイズアップやエアロパーツの装着、マフラー交換くらいしかできないのです。
何よりも、レンジローバーやメルセデス・ベンツ「Gクラス」と肩を並べる高級車になってしまったために、こうしたカスタムをするユーザーが少なく、アフターパーツマーケットが小さくなってしまったのも、新車需要が国内で伸び悩んだ要因と見られています。
2015年に大幅なフェイスリフトを実施したことで、200系は国内での人気を多少盛り返しましたが、やはり高額であることがネックとなり、ヒットとなるには至りませんでした。
神奈川県でランドクルーザーを扱うショップの代表は、次のように語っています。
「100系までは、海外市場でバンモデルが発売されていましたが、200系はそれも無くなってしまいました。
そういうポジションは、150系プラドや70系に譲ってしまったのです。完全に富裕層向けのクルマになったことで、ランドクルーザーというよりは、トヨタSUVのトップモデル的な立ち位置になってしまいました。
元々、日本のユーザーがランドクルーザーに求めているのは“タフ”や“ヘビーデューティ”ですから、ラグジュアリーということであれば、よりブランド力の高いGクラスやレンジローバーにいってしまうことは致し方がないのではないでしょうか」
■200系はランクルシリーズの集大成?
しかし、200系を駄作と捉えるのは早計です。
「地上で最後に残るクルマ」という開発コンセプトを歴代で追求し続け、走破性と堅牢性、耐久性のすべての面において昇華したのが200系といえます。
キネティックダイナミックサスペンション(KDSS)やバリアブル・ギア・レシオ・ステアリング(VGRS)、マルチテレインセレクトは、トヨタテクノロジーの粋を集めたものであり、ほかの高級車が勝らない部分を多く持っています。
200系は、ある意味でランドクルーザーの集大成ともいえるモデルなのです。
とくにフェイスリフト後はデザイン的にもランドクルーザーらしさが戻り、日本でもそれなりに見られるようになりました。
細街路の多い日本では少々持て余すサイズですが、「走行距離は10万kmからが本番」といわれるランドクルーザーの耐久性は中古車になってもトラブルが少ないことを意味します。
また、リセールバリューも高いというメリットがあります。高いオフロード性能は、いつ起きてもおかしくない自然災害に対するリスクヘッジにもなります。
残念ながら新車で購入することは敵わなくなりましたが、今後、お買い得な中古車を探すというのも手ではないでしょうか。
2021年中には次期型ランドクルーザーが登場するといわれていますが、次期モデルはさらに高級化を加速させていると見られます。
ハイブリッド車が設定されるようですから、価格もさらに高くなることでしょう。
かつては「いつかはランクル」などといわれたクルマは、さらに高嶺の花となるかもしれません。となると、200系の中古車がますます気になるところです。
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みんなのコメント
文字数を埋めればよいって話じゃないぞ、ランクルって書けばビュー数が稼げると思って。
デビューから8年後のフェイスリフト後になってやっと日本でもそれなりに見かけるようになったと
この記者は日本には住んでいないんだな