ちょっとしたパーツに秘められた、女性の社会参加を巡る長い歴史
自転車に乗っていて、長いスカートの裾がひらひらと舞い上がり「後輪に巻き込まれるかも」とヒヤッとした経験はないでしょうか。 コートの長い裾やフレアスカートなど、動きのある服装で自転車に乗るときは特に心配になります。
【画像】そうだったの!? まったく気にもしていなかった自転車の便利パーツ「ドレスガード」を見る
服の裾などが後輪に絡んでしまうと、単に服が汚れるだけでは済みません。生地が破れてしまったり、ひどい場合は車輪に深く巻き込まれて自転車が急停止し、転倒してしまう危険性もあります。
そんなトラブルを防いでくれるのが、後輪付近に取り付けることができる「ドレスガード」というオプションパーツです。
モノによっては最初から装備されていることもあり、普段意識することはあまりないかもしれませんが、後輪上部に取り付けられている板状の部品で、装備することでスカートやコートの裾が後輪に巻き込まれることを防いでくれます。
服装以外でも、後ろに子供を乗せる場合、何かの拍子で子供の足が後輪に巻き込まれることを防ぐため、ぜひとも装備しておきたい部品です。
実はこの「ドレスガード」は、150年以上前の女性たちの願いが込められた、興味深い歴史があることはあまり知られていないかもしれません。
時は19世紀後半のヴィクトリア朝時代(1837年-1901年)のイギリスに遡ります。自転車の歴史における大きなターニングポイントとして、1885年にイギリスのジョン・ケンブ・スタンレーが「セーフティバイシクル」と呼ばれる自転車を発明しました。これは現在の自転車の原型となる、前後の車輪がほぼ同じサイズで、チェーン駆動で後輪を回す方式の自転車でした。
さらに1888年には、アイルランドのジョン・ボイド・ダンロップが空気入りタイヤを発明。これにより自転車はより快適で実用的な乗りものとなり、一般市民の間で大ブームが起こります。
そしてヴィクトリア朝時代のイギリスでは、産業革命の恩恵で中産階級が拡大し、女性の社会進出も目覚ましい時代でした。教育を受ける女性が増え、職業を持つ女性も現れ始めていました。
そんな時代背景で、自転車という新しい移動手段は、女性たちにとっても大きな魅力を持っていたのです。
自転車に乗れば、徒歩よりもずっと速く遠くまで移動することができます。これは行動範囲が制限されがちだった当時の女性にとって、まさに夢のような道具だったと言えるでしょう。社会進出を目指す女性たちにとって、自転車は単なる移動手段以上の意味を持っていたのかもしれません。
しかし、ここで大きな問題が立ちはだかりました。当時の女性の正装は、足首まで完全に覆い隠すロングスカートが一般的でした。現代の感覚では想像しにくいですが、足首を見せることすら「はしたない」とされる時代だったのです。このようなロングスカートで自転車に乗るのは、実際問題として非常に困難です。
この問題に対する解決策として、1849年にアメリカの女性解放運動家であるアメリア・ブルーマーが考案した「ブルーマー服」や、「合理服」と呼ばれるパンツスタイルという選択肢がありました。膝下丈のスカートの下にゆったりとしたズボン(パンタロン)を合わせたり、いまで言うところのニッカポッカのようなスタイルの活動的な服装です。
実際にそのようなパンツスタイルで自転車に乗る女性がいたようですが、当時の社会は、ふくらはぎを露わにするスタイルを「いかがわしい」、「女性らしくない」として強く非難し、新聞や雑誌では辛辣な批判記事が掲載され、街中では冷たい視線を浴びせられることがあったとも伝えられています。
(ちなみに、今も昔も男性諸君が考えることはあまり変わらないようで、「いかがわしい」もの見たさで、ブルーマーを着用したウエイトレスがいる店もあったとか……)
社会的な批判を避けてスカートのまま安全に自転車に乗りたい……。そんな中で選ばれた解決策のひとつが「ドレスガード」だったのです。
この時期にはスカートの裾を適度にたくし上げて、乗車用ピンで留める方法や、自転車専用のやや短めのスカートなども考案されました。これらすべては、女性の社会参加への憧れと、保守的な社会の価値観との間で生まれた工夫でした。
ドレスガードの普及により、多くの女性が「社会的に許容される範囲で」自転車を楽しめるようになりました。これは当時の女性にとって、想像以上に大きな意味を持っていたと言えるでしょう。
そして実際に、自転車は当時の女性解放運動の重要なシンボルのひとつとして数えられました。アメリカで女性参政権獲得のために活動したスーザン・B・アンソニーは、「自転車は、世界中の他の何よりも、女性解放に多大な影響を与えたと思います」と、米New York Sunday World紙(1896年)のインタビューで答えています。
現代のママチャリ(シティサイクル)に装備されているドレスガードは、もちろんヴィクトリア朝時代のものとは材質も形状も異なります。しかし、その根本的な役割である「スカートを履いた女性が安全に自転車に乗れるようにする」という機能は変わっていません。
通勤、通学、買い物、子供の送り迎え……様々な場面で、女性たちは自転車を日常的な移動手段として活用しています。普段何気なく目にしているドレスガードという地味な部品は、機能性と社会性を両立させるという設計思想を現代に伝えているのではないでしょうか。
この小さな部品が秘めている壮大な歴史を知ると、単なる部品以上の意味を持った存在として、少し違って見えるかもしれません。(史(ちかし@自転車屋))
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みんなのコメント
て昔の映画のワンシーンを何故か思い出してしまった。