最新の愛車は“2台目”のグラントゥーリズモ
自動車漫画の草分け的存在として、今もなお多くのファンを魅了し続ける『サーキットの狼』。そして、その第二章として連載された『サーキットの狼II モデナの剣』は、日本におけるスーパーカー・ファンのバイブルとして愛読され続けている。自動車生産大国と謳われる日本は東洋の小さな島国にも関わらず10社を超える自動車メーカーを抱え、モータリゼーションのトップランナーとして繁栄し続けているのは周知の事実。その根幹に大きな影響を与えた両作品には世界を代表するスーパーカーが数多く登場し、個性的なキャラクターと共にストーリーが展開されていく。
池沢早人師が愛したクルマたち『サーキットの狼II』とその後【第19回:ポルシェ 911カレラS】
そんな両作品を描き出した漫画家・池沢早人師先生は、自らもスーパーカーを愛する趣味人であり、その人生の中で80台に迫るスーパーカーを乗り継いできた。今回は、2020年の3月に納車されたばかりの「マセラティ グラントゥーリズモ スポーツ」を紹介する。ロータス、フェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェなど世界各国の名だたる名車を手にしてきた池沢先生の最新の愛車に迫ってみたい。
生涯で3台目となるマセラティ
自動車免許を取ってから約50年、改めて振り返ってみると本当に色々なクルマに乗ってきた。途中から数えなくなってしまったけど、そろそろ80台に手が届くんじゃないかな? あまりにも数が多すぎて記憶から消えてしまったクルマもあるけどね。でも、その反対に忘れられないクルマもたくさんあって、手放してから時間が経って再び同じモデルに戻ることもある。別れた彼女の魅力が恋しくなって、また付き合っちゃうみたいな(笑)。
今回、紹介するクルマがまさにそれ。人生で3台目になるマセラティだ。最初のマセラティは1976年、26歳の時に手に入れたマセラティ メラクSS。このクルマは友人がスーパーカーショーを開催することになり、納車から3ヵ月くらいで譲ってしまった。スタイルはジウジアーロが手掛けたこともあってカッコ良かったんだけど、当時マセラティの親会社だったシトロエンの血がものすごく濃かった。シトロエン SMと共用の油圧式(ハイドロニューマチック)ブレーキが個性的だったね。
次のモデルはフェラーリ F430の回でも話したけど、先輩の漫画家の本宮ひろし先生が乗っていたマセラティ グラントゥーリズモに衝撃を受けて購入したグラントゥーリズモS。上品で美しいクーペでありながらも官能的なエンジン音が最高だった。このクルマは自分から手放したにも関わらず後悔することも多かったし、失恋したような気分がいつまでも続いていたんだよね。
ずっと気になっていたイタリアの美女、グラントゥーリズモ
その時はBMW M4に乗り換えたんだけど、一度味わったグラントゥーリズモの官能の世界を忘れることはできなかった。そしてつい先日、とあるお店でグラントゥーリズモ スポーツに一目惚れ。ペットショップで目と目が合ってしまうような・・・あの感じで即決。前期型と後期型を乗るっていうのも、フェラーリ F355以来かなぁ。今回は納車されてから3ヵ月目だったルノー メガーヌ R.S. トロフィーがあったんだけど、結局グラントゥーリズモ スポーツに入れ替えた。メガーヌには申し訳ないと思ったけど、やっぱりボクにFFのホットハッチは向いていなかったってことが大きい。二股を掛けて彼女を乗り換えた悪い男の心境ってこんな感じなのかな・・・。
ボクは基本的に複数台のクルマを所有するようにしている。サーキットもこなしながらオールマイティなポルシェはエースカーで、そしてセカンドカーとしては乗るたびにときめきをもたらしてくれる「色気」や「音」とか「チョイワル感」みたいな部分を刺激してくるクルマが欲しくなってしまう。イタリアの伊達男がめちゃくちゃ似合うグラントゥーリズモのようなクルマが素敵だ。実はずっと気になっていたイタリアの美女なのだ。
正直なところ、アルピナ B3ビターボやBMW M4に乗っていたときも心の片隅には常にマセラティがいた。大好きだったけどポルシェに10年振りにたまらなく乗りたくなって手放したんだ(そのときはAMG C63もあった)。ポルシェが可愛くてフットワークのいい若い娘だとすると、マセラティは大人の色気がほとばしる30代の女性のイメージでしょ。ピニンファリーナによるクラシカルな美しいモデルのようなスタイルは、流麗さとエッジの効いたメリハリが最高にマッチしている。余談だけどフェラーリの新型モデル、ローマも基本的に似たスタイル。もうグラントゥーリズモのデザインは永遠なんだね。なぜならとびきりの女性の姿に似ているから。
10年振りに再会を果たした彼女はより魅力的になっていた
今回手に入れた2016年式のグラントゥーリズモ スポーツは、ホワイトのボディに本革の赤い内装がゴージャスな印象だ。この組み合わせは今乗っているポルシェ 911と同じ縁起の良い「紅白仕様」。基本的にホワイトのボディに赤色の内装がボクの好みなんだよね。グラントゥーリズモSからマイナーチェンジをウケたグラントゥーリズモ スポーツのフロントマスクは、古き良き時代のレーシングカーを思わせるアグレッシブかつ女性的なデザインに変更され、流れるようなクーペスタイルをより美しく演出していると思う。
内装のデザインもさらに洗練され、シート形状はスポーティでありながらも上品に仕上がっている。座り心地が良くてホールド感もバッチリ。赤色のレザーに白のステッチもアクセントとして効果的だ。オプションの20インチホイールもスタイルに迫力を添えていて、流れるようなボディデザインは昔乗っていたトヨタ 2000GTに通じる美しさがある。肉感的なフェンダーラインはさすがマセラティって感じだし、美しさを極めるとデザインは似てくるのかもしれないね。
FRレイアウトのフェラーリ製V8は“快音”を発する
自然吸気のV型8気筒エンジンは基本的にフェラーリ F430に近いものだけど、フロントにエンジンを積むことで排気管が長くなり高級な管楽器のような音色を奏でてくれる。正直な話、フェラーリと由来が共通するエンジンでも本家より美しい音がすると思う。最近のフェラーリはスタイルが過激になり過ぎてユーザーを選んでしまうような気がするけど、マセラティのグラントゥーリズモならその悩みを解決してくれる。セクシーさがありながらも4シーターという居住空間を持つ利便性の高い「大人のフェラーリ」だからね。
このクルマに乗って思い出したのがフロントに12気筒エンジンを積んだフェラーリ 365GTB/4。その昔「デイトナ」と呼ばれる名車の後ろをロータス ヨーロッパで追走していた時、ボクの耳に届いたエキゾーストノートに「なんて良い音なんだ!」と感動した記憶が蘇ってきた。エンジン音に関してはミッドシップよりもフロントエンジンの方がベストマッチなのかもしれないね。
約2mのワイドなボディは駐車場の出し入れの時には大きく感じるものの、運転時の感覚は快適そのもの。レーンチェンジでは2トン近い車重の影響もあって軽快さはないけど落ち着いた雰囲気があって悪くない。このクルマにポルシェやフェラーリのようなダイレクト感は必要ないからね。まさしく“GTカー”なんだ。
日常的にも感動を生み「女子ウケ」も高いGT
4.7リッターのV型8気筒NAエンジンはマラネッロ製とは言うものの、V8フェラーリとはひと味違った味付けが施されている。ピーキーな印象は無くしっとりと落ち着いた味付けなんだけど、ひと度アクセルを踏み込めば本領を発揮してくれる。460ps/7000rpmの最高出力は伊達じゃない。まだ納車されたばかりなので遠出はしていないけど、高速道路を使ったロングツーリングでは最高のパートナーになることは間違いない。
このクルマの素晴らしいところは、美しくてパワフルなのに4シーターモデルとして日常的にも感動を生んで気持ち良くさせてくれるところだね。以前に乗っていたBMW M4と使い方は同じで、趣味のゴルフやデートカーとして活躍してくれている。トランクにゴルフバッグがスッポリ収まるのも実用的。デートカーとしてはBMW M4も悪くはなかったんだけど、女子ウケはグラントゥーリズモの完全勝利。クルマに詳しくない女性でもマセラティの色気が伝わるみたい。まるでクルマがプロポーズしてくれるようなインパクトがある。
約10年振りに付き合うことになった彼女=マセラティ グラントゥーリズモ スポーツは、美しくより魅力的な女性になっていた。この運命的な出逢いが早々に終わらないよう、これからも優しく楽しくデートを楽しんでいきたいと思っている。
Maserati Granturismo Sport
マセラティ グラントゥーリズモ スポーツ
GENROQ Web解説:官能的なスタイルを持つロングセラーモデル
マセラティが誇るGT、グラントゥーリズモ。そのルーツは1947年に誕生した「A6 1600」へと遡る。ジュネーブ・モーターショーでデビューを果たしたA6は「アルフィエーリ・マセラティ」の頭文字と6気筒エンジンを意味し、マセラティがレーシングカーではない初のロードモデルとして提案したプロトタイプだった。その後、1957年に「3500GTクーペ」を発表し、グランドツアラー市場への本格的な参入を果たすこととなる。
1970年には「ギブリSSクーペ」が大きな話題を呼び、日本国内では社会現象となったスーパーカーブームによりその知名度を上げた。1998年にはフェラーリ傘下として初となる近代マセラティとして「3200GT」を発表。美しいボディフォルムと共に優れた運動性能を発揮した。最高速度は約280km/hを誇り、0-100km/h加速では5.1秒をマークするなどスポーツカーを凌駕する俊足GTカーとして高い評価を得た。そのDNAは2005年に登場した「マセラティ クーペ」、そして「グランスポーツ」へと受け継がれていく。
最高速度300km/hに迫る俊足GTカー
2007年に「クワトロポルテ」をベースに開発された4シータークーペ「グラントゥーリズモ」がジュネーブショーで発表されると、官能的なスタイルに多くのファンが魅了された。そのスタイルはGTモデルの始祖であるA6にインスパイアされたピニンファリーナによるデザインとなり、流麗なボディラインは大人のクーペとして人気を博することとなる。
パワーユニットはフェラーリが手掛け、エンジンブロックなどの基本設計はフェラーリ F430と共用の自然吸気V型8気筒DOHCエンジンを採用。当初は4.2リッターの排気量だったが、後に4.7リッターの排気量を持つ上位モデルが追加された。数度のアップデートによって研ぎ澄まされた4.7リッターV型8気筒エンジンは460ps/7000rpmの最高出力と520Nm/4750rpmの最大トルクを発揮する。
トランスミッションは6速ATとMCシフトと呼ばれる6速セミATを用意する。2つのATの違いは搭載位置。オーソドックスな6速ATはエンジンの後ろ側に搭載され、MCシフトはリヤアクスルの手前に置かれるトランスアクスル方式を採用。トランスミッションの違いによって重量配分も大きく変わる。6速ATが49:51(前/後)、MCシフトが47:53(前/後)となり、グレードやキャラクターに合わせて設定されている。
2018年のビッグマイナーチェンジでイメージを一新
ボディバリエーションでは4シータークーペを軸に、2009年にはフルオープンの「グランカブリオ」を追加。数度のマイナーチェンジを行いながら2018年にはクーペ、カブリオの両モデルに「スポーツ」とマセラティのモータースポーツ部門であるマセラティ・コルサの頭文字を持つ「MC」を加えると同時にビッグマイナーチェンジを敢行。内外装のデザインを大きく変更した。16色のボディカラー、14種類のアルミホイール、9色のブレーキキャリパーから自分の好みに合わせてチョイスすることが可能となり、40万通り以上の組み合わせを実現。精悍なカーボンパッケージも用意された。
2007年のデビュー以来、12年の長きに渡りマセラティのメインステージを担ってきたグラントゥーリズモ。世界で最も美しいクーペと呼ばれた同モデルは累計販売台数で2万8805台、グランカブリオは1万1715台を記録。惜しまれながらも2019年11月、最後のワンオフモデルとなる「グラントゥーリズモ ゼダ」のラインアウトと共に生産を終了した。現段階では次期モデルの詳細は発表されていないが、ブランド初となるEVユニットを搭載することが予想されている。
TEXT/並木政孝(Masataka NAMIKI)
PHOTO/降旗俊明(Toshiaki FURIHATA)
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みんなのコメント
池沢氏知ってるのか?知らないのか?
マセラティのエンジンはフェラーリ製造であってフェラーリに搭載されるべきエンジンと同じでは無い。
クランクがダブルプレーンでレクサスやアメ車と同じです
音が官能的なのは味付けが工夫してあるから