クルマと道路は切っても切り離せないもの。交通ジャーナリストの清水草一が、毎回、道路についてわかりやすく解説する当コーナー。今回は、勝浦と下田という、首都圏から足を伸ばして行きたい新・2大避暑地に関して考察する!
文/清水草一、写真/フォッケウルフ、千葉県、資料/国土交通省
猛暑日知らずのビーチリゾート「勝浦」と「下田」ドライブで行くならどっちだ?【清水草一の道路ニュース】
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■勝浦は首都圏から行ける快適なビーチリゾート
2024年の夏も日本列島は猛暑に襲われている。連日猛烈に暑い。夏休みはどこか涼しいところに行きたい。
最近首都圏では、千葉県勝浦市が「涼しい」と評判になっている。NHK千葉放送局は、「奥日光並みの涼しさ!? 千葉県勝浦市」と、その涼しさを報じている。
勝浦市のHPによれば、「勝浦は記録が残る明治39年(1906)以降一度も35度を超える猛暑日がなく、30度を超える日もわずか数日のみ。東京都心と比べて夏は3度から5度近くも涼しく、逆に冬は温暖な気候で雪はもちろん雨も少ない地域です」とのこと。
南に突き出た房総半島の端っこにある勝浦市が、これほど涼しいとは意外だ。今年7月の最高気温(執筆時点まで)も、平均28.9度にとどまっている。東京は33.0度だったから、平均4.1度も低かった(気温データはすべて気象庁)。
勝浦市の涼しさは、千葉県内では突出している。今年7月は、市原市牛久が連日40度近い最高気温を記録したが、勝浦市は別世界。快適なビーチリゾートなのだ。
別荘地やゴルフ場も多い南房総の勝浦には、南国リゾートを思わせる豊かなリゾートタウンが広がっている 写真/千葉県
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■もう一方の避暑地は静岡にあり!
実は首都圏にはもう1か所、意外に涼しいビーチリゾートがある。静岡県下田市だ。
気象庁は下田市のデータは取っていないが、下田市から近い石廊崎の最高気温を見ると、勝浦市とほとんど変わらない。石廊崎の今年7月の平均最高気温は29.2度。勝浦市より0.3度高いだけだった。
同じ静岡県の静岡市はこの7月、40度近い最高気温を連発して「静岡県は暑い」というイメージを作ってしまった。今年7月の静岡市の最高気温は平均33.8度と、東京より0.8度高いが、石廊崎はそれより4.6度も低く、これまた別世界なのである。
石廊崎は伊豆半島の南端。伊東や松崎など、他の伊豆半島のリゾートの最高気温データを見ると、これほどは涼しくない。南端の石廊崎が突出して涼しいのである。勝浦市も下田市も、どちらもすぐに深い海があり、海底の冷たい海水が南風で海岸に吹き寄せられるのが原因だろう。この夏休み、勝浦市と下田市は、近場のビーチリゾートとして狙い目だ。
かつてペリーが見た海岸・下田には、環境省が選定する「快水浴場百選」に選ばれた美しいビーチがある
では、勝浦市と下田市、クルマで行きやすいのはどっちか。
距離は断然勝浦市が近い。勝浦市は東京都心から約100kmなのに対して、下田市は約200km。クルマでの所要時間(渋滞なしの場合)は、勝浦市まで約1時間30分。下田市はちょうどその2倍の約3時間である。渋滞ピーク時はどちらも約1時間増しとなるが、いずれにせよ勝浦市のほうが近い。
■渋滞も考慮に入れたドライブ計画を立てたい
ただ、東京から勝浦市に向かうのは、東京湾アクアラインを利用する必要がある。アクアラインは休日、往路復路とも激しく渋滞する。往路は川崎浮嶋JCT、復路は木更津金田料金所を先頭に「ほとんど動かない渋滞」が発生し、苦痛度が高い。昨年から導入されたアクアラインの時間帯別料金も、効果が薄れている。
対する下田市は、往路復路ともに、東名の綾瀬バス停付近が渋滞のボトルネックとなる。東名の渋滞は恒常的で、平日も連日発生し、休日はさらに悪化する。それでもアクアラインほど動かない渋滞にはならないので、渋滞によるストレスは、どちらかと言えば低いと言える。
下田市へのアクセスに関しては、昨年3月、伊豆縦貫道が一部開通している(河津七滝-河津逆川間3km)。国道414号線の激狭屈曲区間がトンネルで短絡されたため、Googleマップによれば、所要時間は約10分短縮した。わずか10分だが、気分的にはかなり近くなった印象だ。
伊豆縦貫自動車道の河津七滝IC~河津逆川IC間は令和5年3月に開通して1年以上が経過している 資料/国土交通省
もちろん、絶対距離では断然勝浦市のほうが近くて行きやすい。日帰りにはピッタリだ。ただし宿泊地としては、東京から近すぎる感もある。
対する下田市は、遠いと言えば遠いが、宿泊地としてはちょうどいい距離感だ。東名沼津IC/新東名の長泉沼津ICから伊豆中央道・伊豆縦貫道を経由すれば、熱海や伊東付近の国道135号線の渋滞もパスできる。
伊豆半島は古くから開けた観光地ゆえ、房総半島よりも見所も多い。下田市の砂浜は、まるで沖縄のような白砂である。
というわけで、近場の涼しい海辺を目指す場合、日帰りドライブなら勝浦市、宿泊するなら下田市がおすすめということになる。
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