80年代の現役時代は通好みのFRマシンとして注目され、90年代に入るとコミック「頭文字D」がきっかけとなって爆発的人気を集めたトヨタのAE86型スプリンタートレノ&カローラレビン。“ハチロク”の人気は2021年の現在でも続いているが、トレノ&レビンシリーズは1987年にAE86の生産が終了した後も後継モデルが開発・販売され、現在でもかたちを変えてハチロクの系譜は続いている。今回は、そうしたAE86の後継モデルを見ていくことにしよう。
文/長谷川 敦、写真/トヨタ自動車、スバル、FavCars.com
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【画像ギャラリー】ハチロクの後継たちのその後をもっと詳しく!
シリーズ初のFFモデルに! 「AE91/AE92型」(1987年-1991年)
先代の特徴でもあったリトラクタブル式ヘッドライトを継続採用したAE91/92型スプリンタートレノ。現役時代にはAE86を上回る販売台数を記録している
スプリンタートレノ&カローラレビンとしては5代目、カローラでは6代目にあたるAE91/92型は1987年5月に販売が開始された。スプリンターとカローラは先代モデルからFF化されていたが、トレノ&レビンもこのAE91/92型でついにFFモデルに変更。ボディも3ドアクーペが廃止され、2ドアのノッチバッククーペのみとなる。トレノとレビンでヘッドライト形式が異なるのはAE86同様で、トレノはリトラクタブル式、レビンは固定式を採用して差別化された。
シャシーとエンジンは両車共通であり、違いはほぼボディだけといえる。FF化にともなってフルモデルチェンジされたシャシーには、全面的に新設計されたサスペンションを装備。上級グレードのGT-APEXには電子制御サスペンションのTEMSが標準装備されていた。
エンジンは1.6リッターDOHC 4バルブ直4タイプ。自然吸気式とスーパーチャージャー仕様を用意し、幅広いユーザー層に対応した。スーパーチャージャー仕様は145psを発生し、ハイオク用後期モデルでは165psにまで引き上げられた。
FF化などによって汎用性をアップしたAE91/92型は人気を集め、当時のバブル景気とあいまってAE86を上回る新車販売台数を記録した。しかし、AE86ほどの強烈な個性はなく、中古車市場では値崩れを起こしたほど。「デートカー」としても知られたAE91/92型は、バブル景気が終焉を迎える1991年に生産を終了している。
ボディの大型化&大出力化でイメージも変化「AE100/101型」(1991年-1995年)
時代の流れに応じてリトラクタブル式ライトをとりやめ、固定式に回帰したAE100/101型トレノ。サイズの拡大もあって、AE86に比べて大柄な印象を受ける
1991年にはAE100/101型が登場。このモデルでもトレノとレビンは共通シャシーを使用し、リトラクタブルライトが特徴だったトレノも、AE100/101型から固定式に変更された。先代モデルよりもホイールベースが延長され、あわせて全長、全幅ともに拡大。ボディもよりボリュームのあるデザインとなり、高級志向が強くなっている。
トレノ・レビンともにFFモデルなのは先代と同様で、大型化に応じてエンジンのパワーアップが図られている。1.6リッター自然吸気直4エンジンは1気筒あたり5バルブ(吸気:3/排気:2)化され、160psを叩き出した。これはスーパーチャージャー仕様の170psに迫るほど。
サスペンションのチューンも行われ、上級グレードのGT-Zにはセリカで採用された好評だったスーパーストラット・フロントサスペンションを標準装備。GT-APEXにもオプションで設定された。
開発時期がバブル景気の真っただ中ということもあり、大型化による高級路線へと舵を切ったAE100/101型だったが、先代よりも80kg重くなった車体では、かつての持ち味であった走りの軽快感が減少してしまったという意見もあり、先代や先々代モデルほどの人気を得られずに終わった。
最後のスプリンタートレノ&カローラレビンは原点回帰? 「AE110/111型」(1995年-2000年)
最後のカローラレビンとなったAE110/111型。外観上の変化は少ないものの、大幅な軽量化の効果でパフォーマンスがアップ。後継車を残せなかったのが残念だ
先代モデルの反省を踏まえ、1995年登場のAE110/111型では大幅な軽量化が実施された。多くのコンポーネンツはAE100/101型より引き継がれるものの、それらの構造や材質、ボディへの取り付け構造などを見直すことによって約70kgの減量に成功。先代譲りのパワフルなエンジンもあって、トレノ&レビン本来の魅力である軽快性を取り戻している。
AE110/111型よりスーパーチャージャーモデルは廃止され、エンジンは自然吸気式へと一本化。トップグレードに搭載する1.6リッターの5バルブ自然吸気エンジンは、改良によって165psにパワーアップしている。また、スーパーチャージャーの廃止にあわせて、トップグレードのモデルはBZ-Gに改められた。
エンジンのパワーアップと軽量化の効果で、AE100/101型よりも走行性能が向上したAE110/111型だったが、2000年代を迎えるころにはバブル崩壊の影響もあって、スポーツ志向の強いスペシャリティカーの人気は凋落傾向にあった。そのため、2000年のカローラフルモデルチェンジのタイミングでトレノ&レビンの生産は終了。28年の歴史に幕を閉じた。
伝説の名称が21世紀に復活! 「86(ZN6型)」「BRZ(ZC6型)」(2012年-2020年)
「ハチロク」の名称を現代に復活させたトヨタ86(ZN6型)。ボディはAE86のイメージにとらわれず、近代的なフォルムでまとめられている
2012年、“ハチロク”の名称が意外なかたちで復活した。トヨタがスバルと共同開発したFRライトウェイトスポーツカーの名称を「86(ハチロク)」に決定したのだ。もちろんこのモデルはスプリンタートレノ&カローラレビンの系譜にあるものではなく、完全新規設計のプラットフォームを持っていた。
新生86は、プラットフォームこそ異なるものの、軽快な走りを披露するライトウェイトスポーツというコンセプトはAE86と共通であり、スバルお得意の2.0リッター水平対向エンジンをフロントミドシップに搭載。車幅はAE86より150mm広いが、全長と全高はほぼ同じであり、低重心設計とワイドトレッドが優れた走行安定性を発揮した。
スバルではこの86の兄弟モデルにあたる「BRZ」を販売。86とBRZの違いはトレノ&レビンより小さいほどで、このあたりもAE86の後継車を名のる資格がある。
洗練されたスタイルと走行性能の高さにより人気を集めた86&BRZは、BRZが2020年8月、86が2021年7月に生産を終了した。以降は後継車のGR86と2代目BRZにバトンが引き継がれることになる。
新たな伝説を受け継ぐものたち「GR86(ZN8型)」「BRZ(ZD8型)」(2021年-)
2021年に販売開始のトヨタGR86(左)とスバルNEW BRZ(右)。兄弟車だが、グリル回りの造形が異なっているため、それぞれの個性が感じられる
トヨタは、2021年4月のオンラインイベントにて、兄弟車の2代目スバルBRZとともにZN6型86の後継車たるGR86を公開した。このモデルにはトヨタのグローバルスポーツカーシリーズを表す「GR」の名称が加えられたが、プラットフォームはZN6型を継承する純粋な後継モデルである。
GR86ではエンジンを2.4リッターに拡大してトルク特性の改善に成功。0-100km/hの加速性能でも、先代の7.4秒から6.3秒と大きな向上をみせ、スロットル操作に対するレスポンスも高められた。
ボディも、先代のイメージをキープしながらモータースポーツ由来の空力パーツ装着によって性能をアップし、軽量&低重心化も実現した。
2代目BRZは2021年7月に販売が開始され、GR86も今秋のリリースが予定されている。これらのモデルがどのようなハチロク伝説を作り上げていくのか、今後も見守っていきたい。
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みんなのコメント
現代の86は全然違う車・・・