チューニングされていても付加価値がある希少な存在
GT-Rオーナー、とりわけRB26DETTオーナーにとって、NISMOが展開するエンジンチューニングメニューは、いつかは施したい憧れの対象だろう。現在、RB26DETTに対してはS2/R3/R4というメニューが用意されている。R35GT-RのVR38DETTについてはS1のみ。また、かつてはZ33フェアレディZにもS1が用意されていたが、現在はラインアップにない。
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このNISMOのS○/R○というチューニングメニューは、リセールバリューも確保されている点が大きなメリットだ。一般的にチューニングカーの下取り査定価格は、かけた金額に対してはむしろ減点対象となるケースが多いが、NISMOのエンジンチューニングメニューは例外のようである。確かに初期導入コストは高いが、長い目で見れば決して高い買い物ではないところが人気となっているのではないだろうか。
S○/R○のエンジンチューニングメニューは、クラッチやLSDなどのパーツと異なり、ニスモ大森ファクトリーが独自に展開するファクトリーラインとなっている。パーツの組み込みや調整など熟練の技が要求される部分なので、ニスモ大森ファクトリーのみ施工可能なのだ。
よりユーザーの理想に近づけるため細分化
これらのエンジンチューニングメニューは2000年代初頭に誕生した。すでに20年近くが経過するわけで、「SとRってナニ?」という声も聞かれるようになった。
SとRは、NISMOのチューニングコンセプト、S-tune/R-tune/Z-tuneに基づいている。このチューニングコンセプトも2000年代初頭に生まれた。それ以前、NISMOのストリートパーツのコンセプトは、多くのチューニングパーツメーカーがそうであったように「ストリートからサーキットまで」をカバーするというものだった。
しかし、パーツが売れるようになるとストリートとサーキットを両立することが難しくなってきた。NISMOの場合、一般的なチューニングショップとは異なり、お客さまのニーズが多様で広い間口を要求されるのだ。ある人はストリートしか走らない、一方でサーキットをガンガンに攻めたいという人もいる。
パーツで言えばサスペンションだ。前者は乗り心地も重視する一方、後者はSタイヤを装着してサーキットでのタイムアップを目指す。ブレーキパッドも同じように、前者はダストや音を嫌う。しかし後者は確かな制動力と耐フェード性があれば音やダストは気にしないという風にだ。
そこで、当時、チューニングコンセプトを別けることにしたのだ。さまざまなユーザーニーズに合わせていたパーツラインアップを、現実的な使用状況を想定し、カテゴリー分けを行った。それが、S-tune/R-tune/Z-tuneという3つのコンセプトだ。それぞれのコンセプトを当時のNISMOのリリースから紐解いてみよう。
【S-tune】 ワインディングを代表とするストリート走行における速さと快適性を追求したチューニングコンセプトがS-tuneです。アクセル操作にリニアに反応するエンジン特性、走行性能をアップしながらも乗り心地を損なわないサスペンション、鳴きの発生を極力押さえたブレーキパッド等、その全てがストリートにターゲットを置いたスペックです。
【R-tune】 より楽しく、より速くを追求しサーキットへ足を踏み入れてしまった人のための、NISMOからの提案がR-tuneです。サーキット走行で必要な絶対的パワーとトルク特性、そして耐久性を持ったエンジン、Sタイヤ装着を前提として開発され、きめ細やかなセットアップを可能とするサスペンション、ストッピングパワーと耐フェード性を追求したブレーキパッド等、サーキット走行に於いて真価を発揮することにターゲットを置いたスペックです。
【Z-tune】 ロードゴーイングカーとして、世界トップクラスの速さと耐久性を目標に進化しつづけているのがZ-tuneです。車の総合バランスを確保しつつ速さを追求することでエンジン、ボディ、サスペンション、ブレーキ等、ユニットの限界を探りNISMOの考える究極のストリートチューニングを磨き上げ、ここで評価されたノウハウやパーツをS-tune やR-tune へフィードバックしています。
(※当時のリリースより)
ちなみにZ-tuneは上記のように「Car」としての展開で、R34GT-Rベースのコンプリートカー“NISMO R34GT-R Z-tune”として具現化されている。
かといってどちらかを犠牲にしているわけではない
さて、エンジンチューニングメニューのS○/R○だが、上記のS-tune/R-tuneコンセプトに基づいていることがおわかりいただけるだろう。S-tuneコンセプトのS○シリーズはストリート主体。一方のR○シリーズはサーキット走行主体が主旨なのだ。
とはいえ、S○だってストリートがメインだがサーキットでも十分に楽しめる。一方のR○もサーキット主体だがストリートも普通に走れるしワインディングも楽しめるのだ。
ただ、最近はチューニング技術(制御面)が2000年代初頭に比べて進化した。そのためS○とR○の境界が被るようになり、両立が可能になってきたのではないか? とさえ思えるようになった。もしかしたら、両者が統合され、ふたたび「サーキットからストリートまで……」という風に、1本化される日が来るのかもしれないなどと思ったりもしている。
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