メルセデス・ベンツの乗用車シリーズで「Eクラス」はラグジュアリークラスの「S」と、コンパクトクラスの「C」の間に位置するミドルクラスモデルに相当する。歴史的には1930年代からメルセデスはこのクラスのモデルを生産しており、約110年の歴史のあるシリーズになる。「Eクラス」を名乗ったのは1993年からで、最新モデルは6代目。2024年1月にセダンとステーションが発売され、オールテレインは3月に加わった。
ワゴンをベースにしたSUV的クロスオーバーカー
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ちなみにオールテレインは「Eクラス」だけに設定されたモデル。初代は2017年9月に5代目の追加モデルとして登場した。「Eクラス」のステーションワゴンをベースにはしているが、SUVとステーションワゴンの実用性を併せ持つクロスオーバーモデルとして設定された。「Eクラス」はメルセデスの乗用車シリーズの中でも1976年からステーションワゴンをシリーズに加え、ファミリーカーとしても地位を築いたヒット作。それだけにファミリーカーの新しい姿として、ワゴンをベースにしたSUV的クロスオーバーカーを企画したのだ。
5代目同様、6代目の新型オールテレインも、ボディー前後のバンパー下にはクロームメッキを施したアンダーガードを装着。ホイールアーチには黒のオーバーフェンダーが取り付けられている。ボディサイズは「Eクラス」ワゴンより全長は同じ(4960mm)、全幅は10mm広く(1890mm)、全高は高い(1495mm)。しかし、最低地上高は、ノーマル車よりも25mm高く、145mmを確保している。
メカニカルな部分では4MATICの車名どおり、4輪駆動を採用している。「Eクラス」で4輪駆動は、現在では唯一の存在だ。4ドアセダンにもステーションワゴンにも設定がない。パワーユニットは直列4気筒、2.0Lのディーゼルターボ+モーター。エンジンと変速域の間に23PS、205Nmのモーターが組み合わされ、加速時などに駆動するマイルドハイブリッド方式を採用しているクルマなのだ。4輪駆動+ディーゼルターボの組み合わせも、オールテレインだけのもの。
パワーユニットに組み合わされる変速機は9速AT。サスペンションは連続可変ダンピングシステムADS+とエアサスを組み合わせたAIR MATICが標準装備。基本的にセルフレベリングだ。クルマに乗りこみ、走り出す前にEクラス+オールテレインのコクピットドリルを頭に叩きこまなければならないが、オールテレインの新装備は、とても1回聞いただけでは理解できなかった。それほどに新しいデバイスがてんこ盛りなのだ。
試乗車は、オプションのデジタルインテリアパッケージ(40万4000円)を装着していたので、前席の目の前のインパネは運転席から助手席の前まで、一枚のスーパースクリーン。インフォテイメントシステムのMBUXは第3世代に突入した。アイコンの表示方法も変更。サードパーティ製のアプリケーションのインストールを可能にするオペレーティングシステムも開発された。乗員が車載のセルフィー&ビデオカメラを使えば、デザリングさえしておけば「webex」や「Zoom」のビデオ会議が利用できる。もちろん音声アシスタントやジェスチャーでコントロールするインテリア・アシスタントも実用化されている。これらを駆動すると、とても自動車に乗っているとは思えない現象を体験できる。自宅のソファでパソコンやスマホを操作しているようだ。
アクティブ家族には、安全安心のファミリーワゴン
現実に戻り、オールテレインの運転席でポジションを調整する。9速ATのシフトは、コラム右から生えているメルセデス共通のポジション。R/N/Dをシフトし、Pはレバーの頂部を押す。ドライビングモード(DYNAMIC)はE/C/S/Iの4モード。C(コンフォート)を選んでスタートする。
直4、2.0Lのディーゼルターボはアクセル・オンでの唸り音が2500回転から大きくなる。Sモードだとアイドリングからシートに振動が伝わってきた。試乗車は生産初期モデルということを考えると、これはすぐに解決するはずだ。トルクは1700回転あたりから太くなり、アクセルレスポンスもよくなる。
一方、高回転域は、アクセル全開加速でエンジン回転計のレッドゾーン(4400回転)手前の4300回転まで上昇し、シフトアップ。0→100km/h加速は8秒台。車重2トンのディーゼル4WDとしては速い。パドル操作で4000回転を目安に引っぱると1速40、2速65、3速で95km/hに達する。高速走行では100km/hの巡航で6速2100、7速1700、8速1400回転。9速はかなり高速セッティングで、マニュアルモードで120km/h以上に達しないとシフトできなかった。日本仕様では100km/hで9速巡航を使用するセッティングにしたい。
燃費は試乗中にロングドライブができなかったこともあり、12km/L前後どまりだった。
オールテレインの魅力は、最低地上高が145mmと高いこと。これは、轍の深い山間部や郊外で安心感がある。サスペンションもAIRMATICはCモードではタイトコーナーでゆり戻しがあるほどソフト気味だが、Sモードでは乗り心地も硬めになり、重めの操舵力でスポーツ運転を楽しませてくれる。4輪駆動の頼もしさは、ウェットな山間路で、体感できる。コーナーでの動きや、高速直進性の安定感が違うのだ。
本格的なオフロード走行を楽しむというより、最低地上高145cm、という安心感と4WDの走りがオールテレインの魅力。1098万円の車両本体価格は同じエンジンを搭載する「220dステーションワゴンアバンギャルド」よりも140万円ほど高額だが、ファミリーで高速ドライブやオートキャンプが趣味というアクティブ家族には、安全安心のファミリーワゴンだ。
■関連情報
https://www.mercedes-benz.co.jp/passengercars/models/estate/e-class-all-terrain/overview.html
文/石川真禧照 撮影/萩原文博
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みんなのコメント
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