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フォレスターとブリザックで冬に山形県の肘折温泉を走って感じたこと

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フォレスターとブリザックで冬に山形県の肘折温泉を走って感じたこと

■物理の法則には電子制御も勝てない。重量のあるハイブリッドは雪道で滑りやすい

乗用タイプの4WDにおける始祖はスバル・レオーネというのは、スバリスト(スバルファン)でなくともよく知られている事実だろうが、その開発時に冬季テストを行なったのは山形県の月山だったという。そんな縁もあって、今シーズンのスバルの冬季試乗会は山形県で開催された。メインステージとなるのは、県内でも有数の豪雪エリアである肘折温泉。そこにスバルの最新クロスオーバーSUVを持ち込んだ。

今回、試乗したのは最新モデルのフォレスターだ。e-BOXERと呼ばれるマイルドハイブリッドシステムを搭載した「Advance」グレードと2.5Lガソリン直噴エンジンを積んだ最上級グレードの「Premium」を乗り比べることができた。ちなみにメーカー希望小売価格はAdvanceが309万9600円、Premiumが302万4000円と、さほど差はない。なお、いずれも足元にはブリヂストンの最新スタッドレスタイヤ「ブリザックVRX2」を履いていた。山形市内から肘折温泉までの国道は完全にドライの舗装で流れも速かったが、そうしたシーンにおいてスタッドレスタイヤの頼りなさをまったく感じさせない仕上がりはかねてから確認している通り。そうこうしているうちに肘折温泉に向かうトンネルが見えてきた。

肘折温泉が豪雪地帯とはいっても道路はしっかり除雪がされているので、ところどころ舗装が見えている状態。最低地上高220mmを確保したフォレスターの走破性を確認するようなシチュエーションは実はなかったりする。深雪にも対応した「X-MODE」なる悪路走破性を上げるドライビングモードも持っているが、その恩恵にあずかる必要もなかった。残念であり、雪に慣れていない自分としてはホッとしたのも事実だが……。

しかし、高い雪壁に挟まれた肘折温泉のスノーロードにおいて、意外なフィーリングを味わうことになる。実は昨シーズンに、スバル・インプレッサとブリザックVRX2の組み合わせでスノードライブを味わったことがあり、路面を問わない安定感に感心させられた記憶がある。同じプラットフォームのフォレスターであるから、基本的には同様の走りを見せてくれるはずだが、車重の違い(インプレッサの4WDは1360~1400kg、フォレスターは1520~1640kg)のためか、フォレスターでは下りコーナーで、けっこう唐突にフロントから滑っていくフィーリングが生まれることがある。試乗当日は気温も高めで路面がシャーベット状になっていることも影響したのだろうが、スバルの最新プラットフォームとブリヂストンの最新スタッドレスタイヤの組み合わせとしては、予想外なところでスリップを感じてしまうのだった。

車両姿勢を安定させるVDC(ビークルダイナミクスコントロール)をオフにしていたわけでもなく、クルマ任せで走っているときにフロントタイヤから滑り始めるのは少々驚いた。登り坂でのトラクション性能が高いだけに、下りでもグリップしていると錯覚した部分もあるにせよ、だ。とくに車重の重いe-BOXER車「Advance」グレードでは、そうした傾向が顕著なのは、どんなに電子制御が進化しても物理の法則には勝てないということであろう。その点でいえば、e-BOXER車に対して車重が90kg軽い「Premium」グレードのほうがフロントからスリップしていく感触は少なく、滑り始めてからのコントロールもしやすい印象だ。雪道に限った話ではないが、やはりハンドリングにおいては軽量なほうが有利なのだと再確認させられた。

その「Premium」グレードでは、ラフにアクセルを踏んでしまうと姿勢を乱すこともあったが、軽いカウンターステアで姿勢を安定させられるような状況ではVDCが介入しないことも発見だった。タイヤがスリップするとすぐに電子制御を入れていくメーカーもあるが、スバルはドライバーを信頼している、ドライビングによるカバーリングの領域を残しているといえる。前述した下りコーナーでのスリップにしても、エンジンブレーキなりゆきで走るのではなく、軽くブレーキを入れてフロント荷重を高めておけばタイヤは路面に食いついてくれる。電子制御でなんでもフォローするのではなく、ドライバーファーストのシャシー作りが感じられる。こうしたメーカーの考え方に共感しているのがスバリストなのかもしれない。

文:山本晋也
自動車コミュニケータ・コラムニスト

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