GRヤリスがイメージを牽引する4代目
text:Richard Lane(リチャード・レーン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
根っからのクルマ好きの場合、トヨタ・ヤリスが新しくなったと聞いても、熱い話題にはならないかもしれない。しかし、自動車業界全体としては興味深い話題だ。
ほぼ完全に新しくなった4代目トヨタ・ヤリスが、英国へも上陸する。初代が英国へやって来たのは1999年。当初日本では、ヴィッツを名乗っていた。
可愛らしい曲線で包まれた、初代のボディ。メーターパネルがダッシュボードの中心に、歪んだように付いていた。
見た目が楽しいだけでなく、車内は広々で、運転は安楽。トヨタの想像以上に、初代ヤリスは好調に売れた。若者の支持も高く、モディファイして乗っている姿が見られたものだ。
2000年代半ばには、フォード・フィエスタなど容姿で優れるライバルが登場。英国では、ヤリスは年配層を中心に売れ続けた。2012年には、3代目にハイブリッドが追加。人気を支えた。
欧州でのヤリスには、年配層というイメージ的な課題があった。代替わりのたびに、トヨタはリフレッシュを試みてはいたが、過剰に感じられるスタイリングが水を指していたように思う。
最近のトヨタは、刺激と欲望といったものを活用している。新しいヤリスは、WRCマシンがイメージを牽引中。限定量産モデルの、GRヤリスだ。
260psを発揮する1.6Lターボエンジンを積むGRヤリスは、トルセン・デフを備える四輪駆動。その甲斐あってか、再びヤリスがクルマ好きの話題に上がることになった。
TNGAを採用し、価格は上昇
ただし、今回試乗するヤリス・ハイブリッドは、GRヤリスとは異なる。3ドアは選べないし、ロータリー交差点でドリフトもできない。でも、確かにイメージは重なる。
膨らんだフェンダー、傾斜するリアハッチ、後方へと跳ね上がるベルトライン。従来のヤリスにはなかった雰囲気が漂う。
エントリーグレードの16インチホイールを履くヤリスでも、記憶に残る。楽しそうにも見える。一方で英国価格は、1万9910ポンド(270万円)へと高くなってしまった。
価格上昇の理由は、トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャ(TNGA)にある。ワンサイズ大きく、優れたカローラの土台もなす、比較的高価なプラットフォームを利用しているためだ。
そのおかげでシャシー剛性は高くなり、重心は低下。運転支援システムへの対応もメリットだろう。スペースの有効活用も可能となっている。
新しいヤリスは先代より全長が55mmも短く、4mを切っている。その反面、ホイールベースは50mmも延びた。
最小回転半径は、先代同様に小さい。フォード・フィエスタやフォルクスワーゲン・ポロより小回りが利く。
ハイブリッド・システムも一新されているが、内容自体はトヨタとしてはお馴染みのもの。トヨタによれば、英国の場合、約80%のユーザーがハイブリッドを選ぶと見ている。24.8km/Lという燃費を考えれば、疑問はない。
インテリアの知覚品質は飛躍的に改善
ガソリンエンジンはアトキンソン・サイクルの1.5L 3気筒。駆動用とスターター・ジェネレーター、2基のモーターが組み合わされる。英国仕様のシステム総合での最高出力は115psだ。先代の力不足だったヤリスより、16psも高い。
CO2の排出量は、20%ほど減少。バッテリーは、先代はニッケル水素だったが、新型では軽量なリチウムイオンになった。より高いエネルギー放出も可能としている。
今回の試乗車は、ベルギー仕様。欧州では中グレードに位置するヤリスで、ホイールは17インチだった。カラー・ヘッドアップディスプレイや、ワイヤレス・スマートフォン充電機能などを装備する。
インテリアは、これまでのヤリスで最も興味深い。新しいカローラ同様、知覚品質は飛躍的に改善した。内装パネルや部品のテクスチャーの雰囲気も良く、使いやすい小物用のスペースもふんだん。リアシートの空間も従来よりベターだ。
サポート性の良いシートに、スポーティなステアリングホイールを付ければ、ぐっと冴えた運転環境になりそうだ。ステアリングコラムの調整幅は、もう少し欲しい。
一方で、フロントガラス左右のAピラーは太すぎる。大きなタッチモニターが、ドライバーの視界を奪ってしまう。インフォテインメント・システムのインターフェイスもイマイチだが、アンドロイド・オートとアップル・カープレイには対応する。
そんな新しいヤリスのドライビング体験は、良い点と良くない点が混ざる。
最も評価したいのは新しいシャシー
バッテリーはモーターだけで6kmほどの距離を走れる容量があり、システムが知的に制御する。停止状態からのスタートは、電気の力だけで静か。力強いトルク感は、交差点からの立ち上がりなどで有用だ。
電気モーターで走りが賄えなくなると、エンジンが始動する。エンジンと電気モーターが協働し、中速度域での加速は充分にカバーできている。
一方で追い越し加速は、しっかりした見定めが必要。アクセルペダルを戻すと、エンジンはすぐにストップしてしまう。
パワートレインとして、ドライバーを引きつける力は薄い。ターボエンジンのフォード・フィエスタの方が楽しめる。そのかわり、経済的。今回の試乗では、複合的な条件で得られた平均燃費は22.3km/Lだった。
ステアリングフィールは、普通のヤリスだから、可もなく不可もなくといったレベル。操舵感は軽快で、レシオも良い。GRヤリスは、もっと良いはず。
トランスミッションはCVT。従来のような、ゴムバンドのような緩いフィーリングは改善している。
乗り心地は、高速道路の速度域で落ち着きがなくなるようだった。選ぶなら、標準の16インチ・ホイールの方が良いだろう。
新しいヤリスで最も評価したいのは、新しいシャシー。挙動はとてもニュートラルでコーナーをピタリと曲がり、控えめなタイヤながら、しっかり路面を掴んでくれる。
多くのヤリス・オーナーは、コーナーを攻めることはないだろう。仮に試せば、破綻しにくい足腰を備えていることに気付くはず。ちゃんと能力は秘めている。
先代からの明確な進化と強い個性
4代目ヤリスは、主要な要素で先代より明らかに進化している。しかも、過去にないほど個性的な存在にもなったと思う。
乗り心地を考えれば、ホイールは16インチの方が良いだろう。さまざまな路面を走行したが、強い突き上げを感じる場面が多かった。
サスペンションは、17インチのホイールには硬すぎる設定なのだと思う。16インチに下げれば、乗り心地が良くなると想像できる。
4代目のトヨタ・ヤリスは、AUTOCARの読者が気にするモデルに対しても、期待させてくれる内容だといえる。アツアツのGRヤリスが楽しみだ。
トヨタ・ヤリス(欧州仕様)のスペック
価格:2万1920ポンド(298万円)
全長:3940mm
全幅:1745mm
全高:1470mm
最高速度:175km/h
0-100km/h加速:9.7秒
燃費:23.3-24.4km/L
CO2排出量:92-98g/km
乾燥重量:1160kg
パワートレイン:直列3気筒1490cc+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:115ps/5500rpm(システム総合)
最大トルク:-
ギアボックス:CVT
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
愛車管理はマイカーページで!
登録してお得なクーポンを獲得しよう
「とりあえず増税ね」で50年!? 「世界一高い」自動車諸税&ガソリン税“見直し”正念場 “年収の壁”の向こうの璧
「黄信号だ。止まろう」ドカーーーン!!! 追突されて「運転ヘタクソが!」と怒鳴られた…投稿に大反響!?「黄信号は止まるの当たり前だろ」の声も…実際の「黄信号の意味」ってどうなの?
“生産版”「“R36”GT-R」公開に反響絶大! 日産の「旧車デザイン」採用&4.1リッター「V6」搭載で「借金しても欲しい」の声! 1000馬力超えもあるArtisan「“和製”なスーパーカー」が話題に
「緊急車両が来て道を譲らないとどうなりますか」 理由に「『聞こえんかった』は通用するのですか」 譲るのはマナー?義務? 具体的にどう譲ればいいのですか。
「中古車を買いに来たら『支払総額表示』で売ってくれませんでした、詐欺ですよね?」 「別途費用が必要」と言われることも…! 苦情絶えないトラブル、どんな内容?
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
申込み最短3時間後に最大20社から
愛車の査定結果をWebでお知らせ!
店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!
みんなのコメント