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スポーツカーブランドが手がけたEV+SUVの乗り味とは?

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スポーツカーブランドが手がけたEV+SUVの乗り味とは?

あまりそうは報道されていないようだが、実は日本は世界有数の“電動化”先進国だ。少しその歴史を振り返ってみたいと思う。1997年の初代トヨタプリウスを皮切りに、いまやハイブリッドは、あたり前のものになった。その割合は3台に1台とも言われる。

世界で初めてリチウムイオンバッテリーを搭載した量産BEV(バッテリー電気自動車)は、2010年に登場した三菱i-MiEVだった。その後、初代の日産リーフも登場する。では、なぜi-MiEVやリーフがヒットしなかったのかと言えば、航続距離や充電時間の問題ももちろんだが、ひとことで言えば経済合理性がなかったからだ。

ジャガーXJ-Sを普段使いする!

いま世界では米国のZEV規制、中国のNEV規制、そしてEUの2030年に向けた排ガス規制と、電動化に向けた動きが着々と進行している。かの地で商売をする日本メーカーも無関係ではいられず、先日の上海モーターショーではトヨタもホンダも日本市場にはない中国専用BEVを発表した。

1997年のプリウスの登場ののち、1999年の石原(慎太郎)都政による、新基準を満たさないディーゼルエンジン撤廃作戦は功を奏し、日本の空は、欧州や中国よりも遥かにきれいになった。日本には経済合理性に優れるハイブリッドカー、そして軽自動車がある。一般の人にBEVを薦めるのはなかなかにハードルが高い。

そういう理屈の関係ない、経済合理性でクルマを選ばない人たちーーすなわちクルマを複数台数所有し、用途別に使い分けできる富裕層向けに、どでかいバッテリーと高出力のモーターを積んで、1000万円オーバークラスのプレミアムBEVを発売したのがテスラだった。当初は専業自動車メーカーもまともなクルマがつくれるはずがないと高を括っていたはずだ。ところが、2015年のVWのディーゼルゲートなどでBEVに追い風がふいた。さまざまな国で補助金が用意されるなど、2018年のテスラのグローバル販売台数は24万台を超えた。実はこれはポルシェに匹敵する数字だ。

こうしてテスラが先行する日本のプレミアムBEV市場に、メルセデスでもアウディでもなく、ジャガーが一番乗りした。ジャガーと電気自動車という組み合わせに、ピンとこない人もいるかもしれないが、実は同社は2020年までにすべての車種に電動化したモデルをラインアップすると発表している。2016年からは、電気自動車のF1とも言われるEVフォーミュラカーの「フォーミュラE」にも参戦、さらに今シーズンからは、「I-PACE」を使ったワンメイクレースを実施している。電動化に向けて本格的に活動を開始しているのだ。

「I-PACE」は、電気自動車専用のプラットフォームを用いており、ジャガー自身はSUVにカテゴライズする。しかし、SUVとはいうものの全高は1565mmと、あと15mm低ければ立体駐車場にも収まるサイズで、それほど背が高い印象はない。ホイールベースは、2990mmと3mにもせまる長さで、床下に90kWhのリチウムイオン電池をしきつめている。車体中央を貫くプロペラシャフトもガソリンタンクもないので室内はとても広い。ポルシェマカンのサイズでカイエンの広さを実現したと謳う。

前後に1つずつ、計2つを配したモーターによる四輪駆動だ。最高出力は400ps、最大トルクは696Nmを発揮。0→100km/h加速を4.8秒でこなす。フロントから取り込んだ空気がボンネット上の大きなダクトを抜けて、フロントウインドウからルーフへとなめらかに流れる従来のジャガーとは異なるデザインはエンジンがないゆえに実現したものだ。風洞実験を繰り返して空力性能を追求した結果、Cd値は0.29。もちろん“電費”にも効果的で、一充電あたりの航続距離(WLTPモード)は最長470kmに達している。

乗り味は、SUVというよりは、まさにジャガーのスポーツカーそのものだ。重いバッテリーを床下に配置していることが功を奏している。ステアリングを切ると、少ないロールでスムーズに曲がっていく。それでいて乗り心地も良好だった。回生ブレーキの度合いはハイ&ロー2段階の切り替え式で、ハイを選べばいわゆるワンペダル走行も可能だ。

足まわりはベーシックな20インチ+コイルサスペンション仕様と、20インチ+エアサスペンション仕様、22インチ+エアサスペンション仕様の3モデルを乗り比べてみた。20インチ仕様では、エアサスよりもコイルサス仕様のほうが、動きもシャープで減衰の収まりもよく切れ味のいい印象だった。意外だったのが、22インチ仕様で、さすがに大きすぎるだろうという先入観が見事に吹き飛ばされた。エアサスとの相性がよく、乗り心地も静粛性もうまくバランスさせている。オプション装備なのでそれなりに高価だがスタイルもいい。オートサロン展示車ではなく、一般車が22インチを履きこなす時代になったのだといたく感心した。またエアサス仕様であれば、乗降時、通常時、オフロードの3段階で車高調整が可能だ。乗降時には40mm低く、オフロード時には最大50mm高くなる。

充電に関しては、AC普通充電と、CHAdeMO規格の50kW急速充電に対応しており、前者では約12.6時間で満充電、後者では80%までにおよそ85分を要する。実は日本国内ではこの数年、急速充電器の設置数が伸び悩んでいるという(2018年9月現在で国内7379箇所)。BEVは基本は家庭で充電し、一充電航続距離の範囲で使うのがもっとも効率的だ。470kmもの航続距離があれば日常生活で困ることはないだろう。
長距離ドライブに出る際は事前の充電ポイントの確認など、ご利用は計画的に。それさえ苦じゃなければ、ジャガーの新しいスポーツカー体験が待ち構えている。

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