リヤにはアクティブ・スポイラー
リアのアクティブ・スポイラーは、ダウンフォースが必要になるとこのようにせり上がってくる。フェラーリ296GTB/GTSのエアロダイナミクスでまず目を惹くのは、リヤに装備された「アクティブ・スポイラー」である。
フェラーリ296GTB/GTSがV6+モーターを選んだ理由 120度Hot Vの実力
アクティブ・スポイラーは、458Speciale以降のフェラーリで採用してきた可動空力デバイスとは違う。従来のものはディフューザー上のフラップをハイダウンフォース用/ローダウンフォース用に切り替える可動式空力デバイスだ。ストレートではローダウンフォース用となり最高速度を上げる働きをする。
ところが、296GTB/GTSのアクティブ・スポイラーは、ダウンフォースを増加するためだけに稼働する。最大ダウンフォースが必要でない状況ではスポイラーはテール上部のコンパートメントに格納されていて見えない。車両のダイナミック制御システムが常時モニターしている加速度が、ある閾値を超えるとアクティブ・スポイラーが稼働してリヤバンパーから瞬時にせり上がるわけだ。コーナリング時のダウンフォースが増加するだけでなく、ブレーキング時の制動距離も短縮できるという。
フェラーリによれば、通常のモデルでダウンフォースが100kgが上乗せされるという。ハイダウンフォース仕様のAssetto Fioranoパッケージの場合、250km/hで360kgのダウンフォースを生むという。
フロントには「ティートレイ」が
○で囲んで部分にティートレイはある。これはフェラーリのオフィシャル写真。ティートレイは見えづらい。もうひとつ特徴的なのが、フロントに設けられた「ティートレイ」だ。どうやら、ラジエーターを車体両サイドに配置したことで、中央の空間が空き、ここに「ティートレイ」を装着することができたようだ。ティートレイなどのフロント部分の空力開発が大きく進んだことで、それを釣り合わせるためにリヤのアクティブ・スポイラーが開発された……という側面もあるようだ。
F1マシンのフロントウィングのミニ版にも見えるティートレイは、フェラーリの説明を解読すると、バンパー後方のティートレイの上面に正圧、下面に負圧を発生させる。ふたつの異なる圧力場はティートレイの両端までは分離しているが、末端で正圧と負圧の相反する圧力場がひとつになり、強力な気流の渦、ボルテックスがアンダーボディに発生する。この強力なボルテックスがアンダーボディに流れ込むことで負圧になる。この負圧がフロントにダウンフォースを発生させる。
これでも、わかりにくいか。フェラーリ296GTSの「ティートレイ」潜り込んで撮影してみた。前方から車両を見ると、ティートレイ両端で発生させた一対のボルテックスがクルマの側方に出ていかないように、もしくはサイドからの流入を防ぐためにアンダーボディには縦壁(フィン)が設けられている。
この圧力の低い空気をデュフューザー形状になっているリヤから吸い出し、ダウンフォースを得る……わけだ。
正面からティートレイを見る。アンダーボディにはボルテックスをコントロールするための縦板が見える。空気の流れをコントロールしながら、リヤのデュフューザーに向けていくのだろう。ボディ後端は全体で見るともうなっている。リヤのディフューザー部分を下から見る。リヤのデュフューザーはすっきりした直線的なデザインになっている。ディフューザー中央の流路が2回曲がっているのが特徴で、これによってアンダーボディを沿って吸い込まれた空気の流れがリヤのディフューザーから吸い出される方向を調整でき、ドラッグも低減できたという。
フロントのティートレイもリヤのアクティブ・スポイラーも、フェラーリではないブランドが装着したら、ちょっと不思議なカタチということになってしまうかもしれない。しかし、F1で戦い続けるフェラーリがロードカーに投入してくると、俄然説得力を持つ。これもフェラーリ・マジックなのかもしれないが……。
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