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マツダは果たして生き残ることができるのか?  役員人事改選とラージ戦略で岐路に立つマツダの命運やいかに!?

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マツダは果たして生き残ることができるのか?  役員人事改選とラージ戦略で岐路に立つマツダの命運やいかに!?

 マツダが5月25日に開催された取締役会で、2022年6月24日開催予定の第156回定時株主総会および株主総会直後の取締役会終了後の役員人事を内定した。それによると、代表取締役副社長執行役員兼COO(最高執行責任者)イノベーション・カーボンニュートラル・協業・新事業統括の藤原清志氏が任期満了で退任することになったのだ。

 SKYACTIV-X、直6ラージ戦略などこれまでのマツダを推進してきたのは藤原副社長の指揮が大きかったと思われるが、引き続き舵取りを行う丸本明社長以下、今回新任で選ばれた廣瀬一郎氏&向井武司氏の両取締役など新生マツダは、どんなクルマ作りに方向転換していくのだろうか。今後のマツダが生き残るために何をすべきなのか、国沢光宏氏が分析する。

マツダは果たして生き残ることができるのか?  役員人事改選とラージ戦略で岐路に立つマツダの命運やいかに!?

文/国沢光宏、写真/ベストカー編集部、マツダ

■藤原COO退任の理由は表向き「任期満了」だが……

日本でのFRラージ戦略第1のモデルとして登場したSUV、CX-60は藤原副社長肝いりのモデルだった

6月24日のマツダの定期株主総会において退任が決まっている藤原清志副社長兼COO

 2019年に登場したマツダ3以降のマツダ車は、6月24日に行われる次回の定期株主総会での退任が決まった藤原副社長の「作品」と言ってよい。藤原副社長の担当は広く大きかった。

 2013年からクルマ開発の全権を担当し、パワーユニットから車体、デザイン、環境技術など藤原副社長(2013年時は常務執行役員)が決めていた。最新モデルのCX-60なども100%藤原副社長のクルマだ。

 昨年6月には「COO」(最高執行責任者)というポジションになり、市販車どころかマツダの業務執行まですべてコントロールするようになっていた。その前から人事権も掌握していたため、自分の考え方を理解してくれる人を抜擢するなど盤石の体勢を固める。当然ながらCOOになったのは1年前。少なくとも3年は一段とマツダを自分の理想の姿にしていこうと考えていたことだろう。

 ところが、突然の退任発表となった。マツダのリリースによれば「任期満了のため」となっているけれど、あり得ないです。COO就任の際、マツダ関係者に聞いたところ、誰もが「間違いなく3年以上に渡って藤原時代になります」と言っていたほど。

 そんなことから退任の報を受け、私が最初に心配したのは彼の体調問題。仕事に差し障るような疾病ならお見舞いを申し上げなければならない。

■丸本社長が今年3月のスーパー耐久会見で突如発言したことが前兆だった?

マツダはスーパー耐久シリーズに「MAZDA2 Bio concept」と「ロードスター」の2台で参戦している。次世代バイオディーゼル燃料を使用した車両でレースに参戦することで実証実験を行っているのだが……

 そこで、さまざまなルートから取材してみた。藤原副社長と最近話をした人によれば、「健康上の問題はないと思います」。さらに、複数のマツダ関係者に退任理由を当たると皆さん、「わからないんです。本人から退任を申し出たようです」。

 むしろ藤原副社長最大のプロジェクトであるCX-60から始まるFRラージ商品群がデビューするタイミングのため、退任する理由などないと口を揃える。

 ただ、少し前からマツダの空気が変化していた。一番驚いたのは高級車路線を邁進していた藤原体制ながら、CX-60の価格が驚くほど戦略的だったこと。先行試作車を試乗した後、価格を知って「これはお買い得ですね!」と思ったほど。

 CX-5と比べたってリーズナブルなのだ。今までの「いいクルマなら高くても売れる」という強気一辺倒のマツダなら考えられなかった価格戦略だと思う。

 さらに、モータースポーツを忌避してきた藤原副社長だったが、今年3月に開催されたスーパー耐久レースの記者会見で突如、丸本社長が「技術陣からスバルさんのBRZ、トヨタさんのGR86の手強さを目の当たりにし、2.2Lディーゼルの300psのエンジンを開発したいという強い要望を受けました。ぜひ後半戦ではガチンコで戦わせていただければと思います」。目ん玉が出るほど驚く!

スーパー耐久の記者会見時、突如として300psの2.2Lクリーンディーゼルエンジンの投入を宣言した丸本明社長兼CEO

■マツダが今後、早急に打つべき対策は3つある!

マツダ6ワゴン。マツダの開発現場ではこのワゴンをベースに車高を上げたクロスオーバーモデルを新たに出したいという意見が出ていたようだ

 丸本社長、今までマツダのクルマ作りについて自分の意見を述べたことは一度もなかった! このコメントを聞いて「藤原さんがOKを出したのだろうか?」と思った次第。CX-60の価格設定と合わせ、今にして考えると、3月時点で社内におけるプレゼンスが弱体化していたのかもしれません。いずれにしろ新しいマツダが始まる可能性が出てきたことは間違いないと思う。

 さて、今後どうなるか? 早急に手を打たなければならない対策は3つ。

 まず、「顧客ニーズのあるクルマを作る」ことだ。「マツダ6をベースにレガシィアウトバックのようなクロスオーバーを作りたい」とか「CX-5のガソリンターボをスポーティな外観にしたい」という社内の意見をこれまですべて藤原副社長が潰してきた。優れた4WDシステムや自動ブレーキ性能の積極的な宣伝も禁じている。

 ふたつ目はパワーユニット。SKYACTIVのパワーユニットを担当していた人見光夫さん(シニアフェローイノベーション)は電動化車両を極端に嫌っており、それを藤原副社長が強く支持したため完全に出遅れてしまった。

 結果、トヨタからクルマを融通してもらわないと欧州の燃費規制をクリアできない状況になってしまう。今日にでも電動化時代に対応できるパワーユニット戦略を起動させないと間に合わない。

 3つ目がトヨタとのアライアンス強化。藤原副社長はトヨタを嫌っており(本人から何度か聞きました)、日本での業務提携なし。トヨタがスバルやスズキと立ち上げた電動化推進チームにも参加していない。

 今からマツダが単独で電動化を勧めるのは時間的に難しい。再度トヨタとのアライシンスを再構築し、お互いの得意分野をクルマ作りに活かしておくべきだろう。

 ここでキーマンとなるのが、毛籠勝弘取締役専務と廣瀬一郎専務執行役員となる。毛籠さんはアメリカを担当しており、トヨタと上手に協業。藤原副社長の方向性と違い、顧客のニーズを重視したCX-50を開発して大ヒット。

毛籠勝弘取締役専務。北米でCX-50を手がけてヒットしたのは氏の手腕によるところが大きい

 現在、マツダの収益は大半がアメリカで毛籠さんの仕組んだビジネスによる成果。廣瀬さんは藤原副社長の右腕だった。毛籠さんと違い、「いいクルマを作れば高くても売れる」という考え方。

 どちらがマツダを引っ張っていくかで大きく今後も変わってくる。大きな影響を与えそうなのは今まで現場に口を出してこなかった丸本さんだ。毛籠さんを支持するのか、藤原色を強く持つ廣瀬さんを支持するのか大いに注目したい。

廣瀬一郎専務執行役員。藤原副社長の右腕的存在だったという

 藤原体制になって以後、ずっとマツダに厳しいと言われてきた私としては、毛籠さんを活かしてくれたら明日のマツダは素晴らしいと考えます。

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みんなのコメント

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  • やはりマツダの経営陣って、最悪だったよな。

    ハイブリッドなんか要らない、内燃機関の伸び代がとか言って今のCAFE規制をクリアできないどころか、クリアする道筋すら見せられず、卒業制作に直6FRとか、今後に難ありな開発に予算と人員を投入した挙句、その販売結果は見ずにさっさと退任して責任を負う事はない。

    残された社員が気の毒だ。
  • マツダはデザインが自己満おしゃれ感だしすぎw
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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