11月7日(日)、マクラーレンのスーパーカーが日本全国から富士スピードウェイに集結した。その数、なんと107台! 「マクラーレン トラック デイ ジャパン2019」と題されたマクラーレン・オウナー向けイベントが今年も開催されたからだ。
2013年から始まっていて、昨年は84台だったそう。今回7回目にして3ケタに到達、クライマックスのパレードランでは、日本史上最多の104台が伝説のF1サーキットを駆け抜けた。パレードの先頭には最新アルティメット・ハイパーカー「セナ」が8台も並んだ。
当日は107台のマクラーレンが参加。フィナーレのパレードランには、うち104台が参加した。パレードランの先導車は、マクラーレン「セナGTR」。レーシング・スーツ着用で走るフリー・スポーツ走行や、ヘルメットとグローブだけ着用の先導車付きエンジョイ走行、スキッドパッドでのドリフト・コントロール機能体験、ドライビング・レッスンなど、マクラーレン・オウナーならずとも参加したくなるコンテンツが盛りだくさん。
幸いなるかな、筆者は「570GT」を借りて、エンジョイ走行に参加させてもらった。先導車付き、追い抜き禁止の、いわゆるカルガモ走行だけれど、最高出力570psを7500rpmで、最大トルク600Nmを5000~6500rpmで生み出す570GTの3.8リッターV型8気筒ツインターボの音色を存分に聴くことができた。いや、そのV8ユニットの野太くもレーシーなサウンドのシビれること。男らしいったらない。
筆者がサーキット走行を楽しんだ「570GT」。それでいて、ハンドリングはコントローラブル。カーボン・モノコックをF1に持ち込んだマクラーレンがロード・カーでもキー・テクノロジーとして採用したのは、性能面はもちろん、アイコンという意味でも合理的に思われる。車重は車検証で1500kgに過ぎない。自動車にとって軽いってことは絶対的正義である。570GTときたら、重量が存在しないかのように加速し、曲がり、減速するのだ。
乗り心地は快適で、ステアリングが重いということもない。嵐の夜に雷鳴を聴きながら、沈着冷静にスピードのスリルと興奮が味わえる。ものすごいパフォーマンスをさわやかに発揮するアスリートにして、ジェントルマンズ・スーパーカーなのだ。
ドアはディヘドラルタイプ。静止状態から100km/hまでの加速に要する時間は3.4秒。正直に申しあげると、570GTは570psの最新スーパーカーである。舞台は富士スピードウェイ。先導付きといっても、あの長いストレートでは250km/h以上に達する。ホントは200km/h以上は出さないように、と制限されていたのだけれど、すぐ前の720Sにグランドスタンド前で引き離されるがままではカッコ悪いではないか。
というわけで、エンジョイ走行といってもマクラーレンのGTスーパーカーによるそれは、横Gを感じつつの高速コーナリングも含めて、まことにスリリング。走行時間20分のあいだ、200km/hからのフル・ブレーキングをおそらく5回以上繰り返した。ところが、570GTのブレーキはなんの変化も見せない。F1サーキットでの連続走行に耐えられるタフな制動力を持っている。これは欲しくなるよ。そして、もしも手に入れたら参加したくなる、トラック・デイに。参加しないほうがモッタイナイ。
最新のインフォテインメントシステムなどを備えたインテリアは快適。搭載するトランスミッションはデュアルクラッチタイプの7AT。ギアセレクターはスウィッチタイプ。リアウインドウは開閉式。小物の出し入れに便利。ブルーノ・セナが考えるマクラーレンマクラーレンのアンバサダーをつとめているブルーノ・セナ選手と、レーシング・ドライバーの澤圭太選手とのトーク・ショーは2回開かれた。1回目はエンジョイ走行のため、聞き逃した。2回目は、その場で握ってくれる寿司や、その場で茹でてくれるイタリアンのパスタを楽しみながらの昼食どきに開かれて、そちらは聞くことができた。
オウナー向けの専用ラウンジでは、食事などが振る舞われたほか、トーク・イベントなどもおこなわれた。TABATA_HIROMICHI参加オウナーに謝意を述べるマクラーレン・オートモーティブアジア日本支社代表の正本嘉宏氏。TABATA_HIROMICHI澤選手は「720S GT3」でブランパンGTワールド・チャレンジ・アジアというスーパーカーのレースに参戦するかたわら、アマチュア・ドライバー向けにドライビング・スクールを主催している。ふたりとも、マクラーレンを語るのに、うってつけだ。
ブルーノ選手はアイルトン・セナの甥で、元F1ドライバー、マクラーレンの開発ドライバーもつとめている。これまで650LT、720S、720GT3、そしてセナのGTRとロード・カーをこれまで担当している。開発ドライバーはレーシング・ドライバーとおなじぐらいハードな仕事という。
故アイルトン・セナの甥であるブルーノ・セナ選手(1983年生まれ)。マクラーレンの開発ドライバーを務めている。TABATA_HIROMICHI「自分のことだけを考えていたレーシング・ドライバーの自分が、サーキットを走ったことのないひとにも楽しく、速く、安全に、エンゲイジメントがあるようにドライブできるクルマにしなければならない。非常に重要な仕事だ。とてもチャレンジングで、完成したときにはみんなの笑顔が見られて達成感がある」と、述べた。
ドライビング・スクールを主催している澤選手は、「ひとを開発している」と、自負している。マクラーレンは速いクルマだから、1年に数回サーキットを走るだけではなかなかうまくならない。1年に数回ゴルフをやるだけでは上達しないのとおなじだ。
1976年生まれの澤圭太選手はこれまで、全日本GT選手権やSUPER GTなどに参戦。アマチュア向けのドライビング・レッスンも主催する。APOLLO_STUDIOブルーノ選手も、マクラーレンを速く走らせるベストな方法は、澤さんのようなプロフェッショナル・ドライバーに正しいドライビングをサーキットで教わることだ、と賛同する。サーキットで教わったドライビングは必ず、一般道でも使える、と。
トーク・ショー後、ブルーノ選手に質問する機会があった。そこで、マクラーレンのもっともいいところはどこか? というシンプルな質問をした。
「1番のフィーリングは、エンゲージメントです。人を引き込む、没入する。650LT以来、マクラーレンは、人がドライビングを楽しむフォーミュラ(公式)を見出した。ワクワクするようなスリルが生まれる、そのレシピをほかのモデルにも使っているのです」
APOLLO_STUDIO−そのフォーミュラは秘密ですか?
「モデルごとに違う性格なんですけれど、たとえば、LTシリーズは、サーキットにフォーカスしていて、剛性を高めて俊敏になっている。S シリーズはアジャイルになっている。Sは公道用を大切にしている。でも、共通するスピリットがある。それはドライバーがステアリングとかからフィードバックを感じる点。フレンドリーでイージー・ドライブだけれど、プッシュして速く走ろうとしたときにはものすごくエンゲージして、運転の歓びが得られるのです」
−フォーミュラとは、パワーとウェイトのバランスみたいなことでしょうか?
「重量はマクラーレンにとってつねに重要です。マクラーレンはスーパーカーのセグメントで、最軽量です。もちろんパワーと運動性能も重要ですけれど、それ以上にカーボンタブは剛性がものすごく高くて、ハンドリングがよりコントローラブルになる。アクティブ・サスペンションも同様で、マクラーレンは技術的にものすごく進んでいる。そういう先進技術があるからこそ、ドライバーはクルマのキャラクターを感じとれるのです」
−開発ドライバーとしてなにを求められますか?
「……たくさん(笑)。もちろん、一番のプライオリティは、クルマの中心であるドライバーのフィーリングです。それから、安全性。私のようなプロフェッショナル・ドライバーにとっても、サーキットを走ったことのないドライバーにとっても、運転がしやすくなければならない。反応が予測できるクルマをつくらなければならない。反応が予測できる、というのは鈍くてつまらないクルマになるか、それとエンゲイジングで反応するクルマになるか、動きやすく、あえてクルマが横滑りするようにするとか、いろいろな組み合わせがあります」
−あなたにとってベンチマークになるクルマはなんですか?
「いまのところ、675LTです。ちょっと古いクルマ(2015年発表。ロングテイルのサーキット走行にフォーカスした、最高出力675psの軽量モデル)だけれど、ゴーカートみたいで、ファン(楽しい)です。(570S、720Sなどの)Sシリーズはおなじスピリットを持っているけれど、もうちょっと丸くて、リファインされている。現行の600LTはスライドするようにグリップを落として動きやすくしている。セナになると、サイドウェイも問題ない。ドライビングの正確さはレーザー・シャープです。それぞれのクルマはそれぞれのキャラクターが異なるように、ちょっとずつ強調しているのです」
2015年登場の675LT。McLaren Automotive−では最後の質問。エンゲージメントにとって一番大事なことはなんですか?
「反応がいいこと。オン・ザ・レールといっても、動かしたいとおもったら、ちゃんと動いてくれる。一方で、非常に正確でなければならない。そこがむずかしいところで、というのも、それぞれのドライバーがそれぞれのドライビング・スタイルを持っているから。幅広いドライバーにクルマが応えてくれるには、クリアなフィードバックと、エンゲージメントのために、ステアリング・フィールとシートはとても重要です」
エンゲージメント(engagement)。英和辞書には、「婚約」とか「契約」「債務」などのほか、「(歯車などの)かみ合い」という意味が出ている。
「マクラーレンはいま、電気ではなくて、油圧のパワー・ステアリングを持つ、ゆいいつのメジャーなスポーツカー・メーカーです。油圧式は電気式よりフィールがある。これは大きなアドバンティッジです」
最後に、GQ取材班は澤圭太選手が720Sで運転手をつとめ、富士スピードウェイを1周するレーシング・タクシーにも乗せてもらった。ピットからスタートしていきなりドカンと全開! コーナーの手前でフル・ブレーキング! そのとき、わずかにリアを滑らせて姿勢を変え、ノーズが出口を向いたところでドカンと全開。早めにステアリングを切って素早く姿勢を変えれば、あとがラク。フツウのひとは、切り始めるのが遅くて、速くステアリングを動かしてしまうんです、と澤選手は720psの720Sを自在に操りながら、冷静に語った。
720Sは4.0リッターV型8気筒ツインターボ・エンジンを搭載する。ほかのマクラーレンとおなじく最新のインフォテインメントシステムを搭載。快適性は高い。最高出力は車名のとおり720PS/7250rpm、最大トルクは600Nm/5000~6500rpm。「マクラーレンの魅力は、ロード・カーをつくっている会社がレーシング・カーをつくっているのではなくて、レーシング・カーをつくって、F1までやっているコンストラクターがロード・カーをつくっている点だと思う。だから、マクラーレンはレーシング・カーなのにロードも走れる、といったほうが近い」と澤選手はトーク・ショーで表現していた。
マクラーレンのオウナーがサーキットを走ってみたくなるのもごく当然なのだ。だってレーシング・カーなのだから。でもって、せっかくサラブレッドを手に入れたのだ。より速く走れるようになりたい、とトラック・デイに参加したくなるのもごく自然な成り行きだろう。
スーパーカーのイベントなのに、見せびらかしの文化(筆者はそれも大事だと思うけれど)というより、アマチュア・アスリートたちがスポーツを楽しんでいる雰囲気が漂っていることこそ、マクラーレンならではであるに違いない。というわけで、筆者はスカッとさわやかな気分で富士スピードウェイをあとにしたのだった。
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