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「一生モノ」の真面目なサルーン ボルボ144 E 走れる状態では英国唯一 人気小説家の愛車(2)

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「一生モノ」の真面目なサルーン ボルボ144 E 走れる状態では英国唯一 人気小説家の愛車(2)

少し高めの価格を正当化した標準装備

1970年代初頭の英国には、トライアンフ 2.5 PIやローバー3500Sなど、新しいサルーンが存在した。イタリアからは、アルファ・ロメオのベルリーナも輸入されていた。

【画像】「一生モノ」の真面目なサルーン ボルボ144 アマゾンと240、164 現行S90とS60も 全149枚

これらの方が運転は楽しく、スタイリングは洗練されていた。それでも、堅牢だという定評がボルボ140シリーズの販売を伸ばした。

メタリック塗装やヘッドレストが標準装備で、少し高めの価格を正当化。リアのシートベルトや、子どもによるいたずら防止のロック機能も、オプションで選べた。当時のボルボは、英国では6番目に売れた輸入車メーカーへランクインしていた。

今回ご登場願った144 Eは、1974年式。英国では著名な作家、レスリー・チャータリス氏へ5月に届けられている。俳優のロジャー・ムーア氏が主演だったTVドラマシリーズの脚本を手掛け、ボルボ1800を登場させ、ブランドの知名度向上へ貢献した人物だ。

その1800と同様に、彼の144 Eもボディ色はホワイト。成功を掴んでいた彼は、欲しいクルマを買える余裕があったはずだが、ボルボから提供された真面目な4ドアサルーンを長く愛用したようだ。

シンガポール生まれだったチャータリスは、1930年に冒険小説の「ザ・セイント」を執筆。エキゾチックなラゴンダM45ラピードを物語に登場させるなど、特別なクルマを好んだ。ハリウッド映画「ザ・セイント」の脚本を仕上げた後、英国へ戻っている。

英国では唯一の走れる状態にある144 E

140シリーズは1974年まで生産され、合計130万台を販売。キャビン部分の設計が受け継がれた、240シリーズへ交代する。エンジンはオーバーヘッドカム化され、ステアリングはラック&ピニオン式へ。サスペンションも、ストラットへ一新された。

チャータリスが所有した144 Eは最終年の製造に当たり、エアコンやフォグランプが装備された珍しい仕様だ。走行距離は、僅か5万4700km。これ以上のコンディションの140シリーズを見つけることは、世界的にも難しいだろう。

現在のオーナーは、英国ボルボ。往年と変わらない姿でレストアし、公道走行可能な状態にある。同社によれば、グレートブリテン島に存在する、走れる状態としては唯一の144 Eなのだとか。

チャータリスは1993年に亡くなるが、生前に彼の運転手へこの144 Eをプレゼントしていた。しかし、彼を尊敬する気持ちが勝り、運転することなく保管していたそうだ。

2021年に、クラシックカー・オークションへ出品され、英国ボルボが落札。前後のフェンダーパネルとバンパー、サイドシル、ドアなどを新しいものへ置き換え、レストアされた。走行距離は短くても、1970年代のボルボは現実的には錆びていた。

高度な製造品質を示すように、見た目はキリリとしている。半世紀前のスウェーデンの自動車技術を、まじまじと実感することもできる。

細めのトルク、ショートなギアにアンダーステア

ドアは大きく開き、乗り降りしやすい。ドアを閉めれば、ピタリと収まる。運転席からの視界は、360度良好。フロントシートの掛け心地は快適で、腰を支えるランバーサポートは調整できる。北欧のクルマだから、ヒーターも良く効く。

四角いボディは、四隅の感覚を掴みやすい。小回りも利くようだ。

動的な魅力は、大きくないかもしれない。ボルボ・ファンは、4気筒エンジンを味わい深いユニットだと評価すると思うが、充分なパワーを引き出すと、ノイズは大きく回転が荒っぽい。トルクは太くなく、正直なところ低速域では扱いにくい。

現代の交通へ合わせて走らせようとすると、積極的にギアを選び続ける必要がある。シフトレバーの感触は、かなりリモート的。手応えは重いものの、ギアの回転数を調整するシンクロメッシュは有能で、キビキビと変速できる。

それでも、レシオはショート。高速道路では、オーバードライブが欲しくなる。クラッチペダルを踏むには力がいるが、ブレーキは強力。もう少し低い回転域を保てれば、安定して長距離を走れる、クルーザーにはなるだろう。

連続するカーブでは、フロントノーズがゆったり向きを変える。ステアリングホイールは重く、曲がりたがるタイプのクルマではない。高めの速度域ではタイヤが簡単に鳴き、アンダーステアへ徐々に転じる。

一生モノのクルマ 過去へ目を向けてみる

もっとも、半世紀前のクルマとして、これらの特徴は当然といえる。144 Eはドライバーズカーとしてではなく、忠実にオーナーへ仕えるクルマとして、堅実さが重視されていた。スポーツサルーンのように扱おうとする側が、間違っている。

以前から欧州では、特にスウェーデンでは安全性や耐久性、信頼性が優先されてきた。半世紀が過ぎた今、この善良なボルボの魅力は再び強まっているようだ。電子装備や高級感は最小限でも、一生モノのクルマだ。

バッテリーEVやSUVも悪くないが、140シリーズのようなクルマはいかがだろう。クラシックカーの弱点は、最新技術でアップデートできる。一度の充電で走れる距離を気にする必要はないし、製造時に排出されるCO2も削減できる。

修理は簡単で、安全性は低くない。耐久性は折り紙付き。運転する喜びを失ことを憂うなら、過去へ目を向けてみるのも悪くない。

協力:ボルボ・カーズUK

ボルボ144 E(1972~1974年/英国仕様)のスペック

英国価格:2490ポンド(新車時)/1万ポンド(約192万円/現在)以下
生産数:52万3808台(144合計)
全長:4775mm
全幅:1715mm
全高:1461mm
最高速度:160km/h
0-97km/h加速:12.5秒
燃費:7.8-9.6km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1234kg
パワートレイン:直列4気筒1986cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:116ps/6000rpm
最大トルク:16.0kg-m/3500rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)

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みんなのコメント

3件
  • t17********
    創業半世紀の近所の修理工場がボルボ代理店を長らく続けてて、この144や次の200シリーズなどを未だ見掛ける。
    円やかなエクステリアと勇ましいエンジン音とが少々ミスマッチだが、年式相応にくたびれた樹脂部品と相俟って独特の風情を醸し出してる。
    現代の技術で適宜レストアしてやればもう半世紀は生き延びそう。
  • PYON_MOON
    ジープ やランクルにジムニー
    四角いRV(SUV)の人気は高い
    セダンも四角い物があっても一周回って売れる時代だと思うんだけど今のセダンはクネクネしてて気持ち悪い
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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