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【長く好きでいられるパートナー】スズキ・ジムニー・シエラ(最終回) 長期テスト

掲載 更新 17
【長く好きでいられるパートナー】スズキ・ジムニー・シエラ(最終回) 長期テスト

積算1万9907km このまま自分のクルマにしたい

text:Rachel Burgess(レイチェル・バージェス)

【画像】スズキ・ジムニー・シエラをじっくり 全94枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


スズキ・ジムニー・シエラの長期テストは最終回。なんと爽快で素晴らしく、欠点があっても憎めないコンパクトカーだったのだろう。

何台ものクルマに長期テストで乗ってきたが、最もレポートが簡単だった。圧倒的に個性的で、風変わり。今までで一番、自分のクルマにしたいと感じたモデルだ。その傍らには、ベントレー・コンチネンタルGTも一緒に並べたいけれど。

ジムニー・シエラの担当に決まった当初は、少し不安でもあった。先代の最終モデルには乗ったことがなく、英国編集部のスタッフからは色々な反応を受けた。カッコいい、という声もあれば、大変そう、という意見もあった。

職場までの短い通勤では、ジムニー・シエラに強く惹かれることはなかった。ステアリングの感触も、進路変更時の反応も、正直悪い。

MTは変速時に他のレシオを選びたがるし、アップライト気味の運転姿勢と広いグラスエリアは、安全面で不安な気持ちにさせた。1.5Lの自然吸気ガソリンエンジンは、上質さに欠けている。

通常、多くの自動車ユーザーは、程よくバランスの取れたモデルを欲する。自動車メーカーはそれに応えるため、最善を尽くす。しかし、ジムニー・シエラはバランスの良いオールラウンダーではない。

今日のコンパクトSUVとは直接比較できない個性がある。現代の一般的なクルマとは、異なる指針で生み出されたからだろう。魅力を理解するには、時間も必要だと思う。

ほかのSUVとは異なる成り立ち

例えばインテリア。今どきのSUVは、上質で高級感のある車内が目指されている。ジムニーは、堅牢でソリッドな作りではあっても、プレミアム感はない。祖先に忠実なデザインともいえる。

居心地が良いわけではなくても、運転する時間が長いほど、扱いやすいことが見えてくる。シートは快適だし、ヒーターも付いている。インフォテインメント・システムはシンプルだが、アップル・カープレイに対応し利便性は高い。

車内は一応、4人乗り。一度、大人4人で近所のパブへランチに出かけたが、英国人の体型では15分を超える移動は厳しい。

AUTOCARの別のスタッフは、一家で長距離ドライブに挑戦した。1時間後には、12歳の子供はクルマに酔ってしまったらしい。姿勢制御が緩いから、仕方ない。

でも、スズキ・ジムニー・シエラは普通のファミリーカーではない。英国の多くのジムニー・ユーザーは、前席だけを使った2シーターとして乗っている。後席は畳まれ、荷室になっている。

筆者の周りには先代のジムニー・オーナーも少なくない。話を聞いてみると、リアシートの狭さは周知の事実で、取るに足らないことのようだ。

リアシートを使える状態にすると、背もたれの後ろには85Lの荷室空間しか残らない。買い物袋程度は置けるものの、家に着いたら注意してドアを開かないと、荷物が落ちてきてしまう。

ジムニーが最もジムニーらしく感じられる場所は、市街地と郊外と、オフロード。意外と広い。感触の良くないステアリングとMTの癖に、慣れる必要はあるけれど。

市街地も郊外も、オフロードも楽しい

コツさえ掴めば、ロンドンの混んだ市街地も郊外のように気持ちよく走れる。小さな箱型ボディは、筆者の知る限り最高の視認性を備え、狭い場所でも駐車しやすく、入り組んだ道でも運転しやすい。

開けた郊外では、疑問すら感じる姿勢制御と、不得意なコーナリングに向き合わなければならない。しかし、ホームセンターなど毎日の買い物の手段としては、完璧な相棒に思えてくる。実際、英国のジムニー・オーナーの多くは、郊外に住んでいる。

昨年は暖冬で四輪駆動の実力は試せなかった。だが、例年通りなら筆者を安心させてくれたに違いない。

その四輪駆動の実力は、ジムニーの真骨頂。採石場での比較試乗はとても興奮するものだった。ジムニー・シエラ並みにオフロード走行が楽しめたことは、今までなかった。

スタックさせようと色々試したが、ジムニーを止めることはできなかった。どんな急斜面でも、走り抜けた。素晴らしい能力だ。

反面、採石場からの帰り道は、褒められた体験ではなかった。寒く暗く、雨の降る高速道路。ジムニー・シエラの運転は、辛い以外の何ものでもない。

96km/hを超える速度が不得意分野なことは、以前から知っていた。それ以来、ジムニー・シエラで高速道路は走っていない。

英国のジムニーは、走行距離が短めで、所有期間が長いという特徴もある。大概はセカンドカーだ。ジムニーの個性と楽しさが、少額で手に入れられるのも良い。

一度好きになったら、長く好きでいられる

ジムニー・シエラがニッチモデルであることは間違いない。それだけに熱狂的なファンもいる。スズキは、排気ガスのCO2排出規制値の目標を達成するために、ジムニーの販売台数を英国では制限している。供給に対する需要は大きい。

パワーで押し切るSUVではなく、別の楽しみを求めるなら、スズキ・ジムニー・シエラは格好の選択肢だ。一度好きになったら長い間、良いパートナーになってくれるだろう。

セカンドオピニオン

ジムニー・シエラを運転すれば、減点ポイントはいくらでも見つかる。操縦性は良くないし、高速道路での走りはひどいものだ。

しかし、オーナーと情報を共有する中で、その奥深い魅力にも気付かされた。園芸家からスタイリスト、林業従事者までユーザーは幅広い。楽しんでいるのは、オフロード・ファンだけではないのだ。 Kris Culmer(クリス・カルマー)

テストデータ

気に入っているトコロ

インフォテインメント・システム:標準のシステム自体も良いが、アップル・カープレイを用いれば、はるかに高級なモデルと同じ環境を提供してくれる。
オフロードの楽しさ:オフロードの走破性こそ、ジムニー・シエラらしさ。採石場で同じくらい楽しめるクルマがあるのなら、教えてほしい。
実用的なボディ形状:コンパクトでボクシーなフォルムは、とても満足できるデザイン。視界に優れ、運転も駐車もしやすい。
独自の存在感:筆者はクルマで目立ちたいとは思はない。だがジムニー・シエラはこれみよがしに誇示する雰囲気がなく、乗っていて楽しい。

気に入らないトコロ

高速道路の運転:ジムニー・シエラで高速道路を走ると、うんざりする。高速道路を走りたくないクルマは、良いとはいえないだろう。

走行距離

テスト開始時積算距離:1万578km
テスト終了時積算距離:1万9907km

価格

モデル名:スズキ・ジムニー(シエラ)1.5 SZ5 オールグリップ(英国仕様)
新車価格:1万8499ポンド(244万円)
現行価格:1万9249ポンド(254万円)
テスト車の価格:1万9149ポンド(252万円)
ディーラー評価額:1万5975ポンド(210万円)
個人評価額:1万4850ポンド(196万円)
市場流通価格:1万3959ポンド(184万円)

オプション装備

デュアルトーン・ペイント:650ポンド(8万5000円)

燃費&航続距離

カタログ燃費:14.9km/L
タンク容量:40L
平均燃費:13.4km/L
最高燃費:14.6km/L
最低燃費:11.9km/L
航続可能距離:535km

主要諸元

0-100km/h加速:11.9秒
最高速度:144km/h
エンジン:直列4気筒1462cc自然吸気
最高出力:101ps/6000rpm
最大トルク:13.1kg-m/4000rpm
トランスミッション:5速マニュアル
トランク容量:85L
ホイールサイズ:15インチ
タイヤ:205/70 R15
乾燥重量:1135kg

メンテナンス&ランニングコスト

リース価格:264ポンド(3万5000円/1カ月)
CO2 排出量:178g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:なし
燃料コスト:861ポンド(11万3000円)
燃料含めたランニングコスト:861ポンド(11万3000円)
1マイル当りコスト:15ペンス(20円)
減価償却費:3274ポンド(43万2000円)
減価償却含めた1マイル当りコスト:0.72ポンド(95円)
不具合:なし

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みんなのコメント

17件
  • 100km/hで巡航するとほぼ限界近くで走っていると感じますね。
    それがジムニーなんです。

    良いじゃないですか法定速度の限界なんだから。
  • シエラだけでも5ドアを出していただきたい。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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