中古車市場では驚くほどの高値で取引されるホンダ「CBX400F」(1981年登場)は、今だに、と言うべきか、今だから、と言うべきか、時を超えて非常に人気の高いモデルです。
時代背景としては、1980年代にバイクブームが沸騰しました。「ライバルや友人よりも速いバイクが欲しい」という市場の強い欲求に応えるべく、とくに排気量400ccクラスや250ccクラスの普通自動二輪(当時は中型自動二輪=中免と呼ばれていた)は新型車ラッシュとなりました。目新しいメカや先進技術が次々と採用され、高性能なモデルに注目が集まっていました。
「おお400“CB400フォア”」 当時の16歳へ、ホンダからのプレゼント
400ccクラスは並列4気筒DOHCエンジンを搭載したカワサキの「Z400FX」が1979年に発売され、続いてヤマハの「XJ400」は1980年に、スズキの「GSX400F」は1981年と、次々に新型が登場します。
そんなホットな400ccクラスに、ホンダが満を持して投入した並列4気筒DOHCエンジン搭載モデルが「CBX400F」(1981年11月発売)です。レーサーレプリカブームへ突入する一歩手前の、400ccクラス空冷4気筒戦争のピークとも言えるタイミング。アンダー400ccがキラキラ輝いていた時代。少年達がアルバイトを頑張ればなんとか買える憧れのバイク……という存在でもありました。
搭載される新設計のDOHC16バルブエンジンは、48psを11000rpmで発揮しました。当時エンジン出力の指針として、排気量に対しての馬力比率を1000ccに換算して表していましたが、それを「リッターあたり120馬力」という数値でライバルをリードします。
また、フロントブレーキには表面が錆びやすいが安定した制動力に優れる特殊鋳鉄ディスクプレートを採用し、錆びを目立たないようにインボードタイプとして、ホイールの回転を利用して空気を取り込み冷却するベンチレーションシステムを採用しています。そのブレーキとの組み合わせで、制動時にフロントフォークの沈み込みを抑える「TRAC(TORQUE REACTIVE ANTI-DIVE CONTROL)」も装備します。
リアにはプロリンクサスペンションに加え、量産車では世界初の軽量中空アルミキャスト製スイングアームを採用していました。
さらに、燃料タンクからサイドカバーへと流れる様なラインで構成されるデザインや、ブーメラン型コムスターホイール、そしてクロスして「X」の文字を形成する4 into 2エキゾーストパイプなど、400ccながら新時代のスーパースポーツと呼ぶに相応しい装備が満載でした。
ホンダは1972年、中型では初の並列4気筒エンジン搭載車となる「ドリームCB350FOUR」を発売。1974年には集合マフラーでお馴染みの「ドリームCB400FOUR」を発売し、ミドルマルチの先駆けを作りました。その後、400ccクラスには2気筒の「ホーク」シリーズを投入します。
1981年に「CBX400F」が発売され、400ccクラスでは4気筒が主流になっていきます。翌年には日本で初めてカウリングを標準装備した「CBX400Fインテグラ」と兄弟車「CBX550Fインテグラ」をラインナップに加えます。さらに1983年には「CBX」の名を冠したクルーザータイプの「CBX400カスタム」を発売。同年に新型エンジンを搭載した「CBR400F」が発売され、400ccの4気筒は受け継がれて行きました。
しかし「CBX400F」のストーリーはここで終わらず、1984年にはマイナーチェンジで再登場します。
さらにその後、2002年モデルの「CB400 SUPER FOUR」や、2003年モデルの「モンキー・スペシャル」(限定)などに「CBX400F」のカラーリングがイメージカラーとして採用されています。
ホンダ「CBX400F」(1981年)の当時の販売価格は47万円、ツートンカラーは48万5000円でした。
■ホンダ「CBX400F」(1981年)主要諸元エンジン形式:空冷4ストローク並列4気筒DOHC4バルブ総排気量:399cc最高出力:48ps/11000rpm最大トルク:3.4kg-m/9000rpm全長×全幅×全高:2060×720×1080mmシート高:775mm車両重量:189kg燃料タンク容量:17リットルフレーム形式:ダブルクレドールタイヤサイズ(前):3.60 H18-4PR(チューブレス)タイヤサイズ(後):4.10 H18-4PR(チューブレス)
【取材協力】ホンダコレクションホール(栃木県/モビリティリゾートもてぎ内)
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