1トンを切る車重と低いギヤリングで、排気量1.4Lとは思えない元気な走り!
全長と全幅は現行スイフトスポーツよりもコンパクト
「50年前に登場した国産初の9人乗りキャブオーバー型ワゴン」乗用デリカのルーツは、この1台にある!【ManiaxCars】
ちょっと調べてみたところ、日本のキャブオーバー型バン/ワゴンてのは、どうやら1960年代後半にひとつのカテゴリーとして成立したようだ。
その先陣を切ったのがマツダボンゴで66年に登場。すると、翌67年にはトヨタがミニエースを、68年にミツビシがデリカを、69年に日産がサニー/チェリーキャブを発売…と、各メーカーがマツダに追従することになった。
デリカの登場は68年だけど、T120Cコーチ(ワゴン)発売は69年。ライバルたちの排気量が軒並み800cc~1Lだったのに対して1.1L、さらに同じ3列シートながら唯一、乗車定員9名(ミニエースは7名、ボンゴとサニー/チェリーキャブは8名)という2点がデリカコーチの大きな売りだった。
コーチはグレードを問わず2トーンのシートを装備。黒1色のライトバンやルートバンと差別化される。2列目は奥2人がけ+手前1人がけで、ベンチシートの3列目にアクセスするため手前のシートは前倒しできるようになっている。
2-3列目にスライドやリクライニング機構はなく固定式。スライドドアの開口部有効幅は940mm、室内高は1185mm。
2列目シートの下に設置されたヒーターユニット。ラゲッジスペースは思いのほか奥行きがあって容量的には十分だし、シートの下も活用できることを考えると実用性は相当に高いと思う。左右に見える年代モノのパイオニア製スピーカーはオーナーが取り付けたもの。
そんなデリカコーチは71年にマイナーチェンジ。車名がデリカ75となり、フロント&リヤ周りを中心に外装デザインが見直されたけど、それより1.4Lエンジンが搭載されたことに注目だ。
“ネプチューン86”と呼ばれる直4OHVの4G41型は、直後にスポーツモデルのギャランFTOにも載せられたもの。シリンダーヘッドの素材には、放熱性や冷却性に優れるアルミ鋳造用合金シルミンを採用。また、キャブレターには2バレルシングルが組み合わされ、インマニを排気加熱式半独立タイプとすることで燃焼効率の向上も図られている。
当時はよほど高性能だったのか、フロントエンブレムにも確認できる“86”は最高出力を示す。
取材車両はその4G41型エンジンを載せたマイチェン後のデリカ75コーチ、しかも上級グレードのデラックスで、2オーナー目となるSさんがもう40年も所有。まぁ見かけないクルマだと思ったら、これ以外に国内で現存が確認されてるのは1台だけ(書類付きだけど不動車)で、当の三菱自動車や自動車博物館にもないという。
つまり、ナンバー付きで走れるデリカコーチは国内で…いや、世界でもSさんの1台だけなのだ。こりゃスゴイ!!
本来2トーンとされるボディカラーはSさんの好みで黒にオールペン。バンパーやホイールは白に塗装される。というか、実車を前にすると全長3860mm、全幅1540mmというサイズで、よく3列シートの9人乗りを実現したなぁという感想しか出てこない。
ちなみに、現行スイフトスポーツに比べて全長が30mm短く、全幅は200mmも狭い…というと、その大きさ(小ささ)が感覚的にわかってもらえるはずだ。
でもって、多少は狭いかもしれないけどムリクリな9人乗りでなく、「これならオトナでもちゃんと乗れるよね」と思えるスペースがちゃんと確保されてる。
ステアリングを抱え込むようなポジションの運転席に収まってみる。デラックスとはいえ装備は必要最小限で、メーターやスイッチ類も非常に簡素。
上級グレードのデラックスはダッシュパネルが木目張りとされ、助手席側グローブボックスのフタ付きになる。ステアリングホイールはナルディ製ウッドに交換。ダッシュボード上には年代物のデジタル式時計が装着される。当然エアコンレスのため、助手席の足もとには扇風機が。
メーターは独立2眼タイプで、右に140km/hフルスケールのスピードメーター、左に燃料計と水温計が並ぶ。警告灯はエンジンオイルとオルタネーターの2つだけとシンプルだ。
センターコンソールには三菱電機製のAMラジオチューナーを始め、シガーライターやヒーターが備わる。いずれもスタンダードにはない、デラックスならではの装備だ。
ひさしぶりのコラムMT車だ。手前上が1速、その下が2速…とシフトパターンを頭の中で復唱してから走り出す。さすがに排気量1.4Lじゃツライだろ? という予想に反して力強く加速。
もっとも1速は4.019と超ローギヤード(で、ファイナル比も5.286)だから、一瞬グッと前に出たらすぐ2速に入れる感じ。停止状態からの動き出しが軽いと思ったら車重はたったの990kgで、Sさんによれば、「普段は2速発進でも大丈夫」とのことだ。
タコメーターがないから正確にはわからんけど、感覚的に3500~4000rpmくらいでシフトアップしてくと50km/h前後で4速に。ギヤリングの低さもあって60~70km/hならトルク感はあるし、そこからアクセルペダルを踏み込んでも気持ちよく前に出る。
のどかな風景の中をトコトコ走るデリカ75コーチ。ステアリングを握りながら仕事を忘れ、昭和な気分に浸ったのは言うまでもない。
■SPECIFICATIONS
車両型式:T120C
全長×全幅×全高:3860×1540×1795mm
ホイールベース:2120mm
トレッド(F/R):1250/1230mm
車両重量:990kg
エンジン型式:4G41
エンジン形式:直4OHV
ボア×ストローク:φ76.5×75.0mm
排気量:1378cc 圧縮比:9.0:1
最高出力:86ps/6000rpm
最大トルク:11.7kgm/4000rpm
トランスミッション:4速MT
サスペンション形式(F/R):ダブルウィッシュボーン/リーフリジッド
ブレーキ:FRドラム
タイヤサイズ:FR5.50-13-6PRLT
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みんなのコメント
こういう昭和の車を運転すると
まったり走ろうって気持ちになって
すごく良いんだよ。
サイズはわりと近い?