この記事をまとめると
■市場人気はイマイチでも玄人ウケするモデルを「いぶし銀カー」と名付けた
たった1台の日本車が世界を変えることもある! 「ニッポンの宝」に認定したい国産車4台
■所有満足度の高い「いぶし銀カー」を4台チョイスしてみた
■「いぶし銀カー」というのは自動車ファンが自由に選んで楽しむものだ
玄人ウケしそうないぶし銀な魅力を持つクルマがある
「勝ち馬に乗る」ということわざがあるが、日本の自動車市場においても「勝ち馬=売れているクルマ」というのは、ますます人気を高める傾向が強い。それは同調圧力に弱いといわれる日本人のマインドからすると、多数派に流れるほうが気が楽で正しい選択に思えるのかもしれないし、また経済合理性でいうと、新車で売れているクルマというのは中古になってもニーズがあるのでリセールバリューが高い傾向にあるというのも、売れているクルマを買うという判断につながっているのだろう。
とはいえ、売れているクルマがいい出来映えで、売れていないモデルは失敗作なのかといえば、当然ながらそんなことはない。販売ランキングの下位に沈んでいるモデルラインアップを眺めていても、一芸に秀でたクルマがあれば、唯一無二のスタイリングを持っていると評価されるクルマもある。さらにいえば、ハイパーカーやショーファーカーのような超高価なモデルであれば台数がでないのは当たり前だ。
ここでは大衆向けモデルとして企画されていながら、販売実績としてはイマイチかつ、しかしながら玄人ウケしそうな特徴を持つクルマを「いぶし銀カー」と名付け、独断と偏見で4台のモデルを選んでみた。
MAZDA3 ファストバック e-SKYACTIV X 2.0(6MT)
マツダが開発した次世代ガソリンエンジン「SKYACTIV-X(スカイアクティブ・エックス)」は、独自の燃焼方式「SPCCI(Spark Controlled Compression Ignition:火花点火制御圧縮着火)」を実現することで、ガソリンエンジンのフィーリングと、ディーゼルエンジンの優れた燃費・トルク・レスポンスといった特長を融合したイノベーティブな内燃機関として、その誕生時には大いに話題となった。
多くの自動車評論家やモータージャーナリストも「革新的なエンジン」として高く評価、電動化トレンドのアンチテーゼとしてエンジン推しの自動車ファンにとって希望の星となった……。
しかしながら、SKYACTIV-Xはビジネス的には大成功とはいえない状況で、マツダも搭載モデルを徐々に減らしている。また、同エンジンにおいては、革新的なメカニズムながらMTとの組み合わせも可能であり、SPCCI燃焼をダイレクトに感じられるコンビネーションとして、まさにいぶし銀な魅力を持つパワートレインとして評価されている。
そして、現在のマツダラインアップにおいてSKYACTIV-Xと6速MTの組み合わせを味わえるのは、MAZDA3ファストバックとなっている。ご存じのようにマツダはSUVモデルを中心にMTを廃止する方向で新車ラインアップを再構築しているので、マツダ車でMTを選べるのは数少なくなっているが、なかでもSKYACTIV-Xと6速MTのコンビネーションというのは貴重かつ希少。まさしく、いま買える「いぶし銀カー」の代表といえるのではないだろうか。
そうはいっても、MAZDA3とe-SKYACTIV−X、そして6速MTのコンビネーションが設定されているのは4WDのみで、メーカー希望小売価格も386万6500円~と気軽に手が出せる価格帯でないのも事実。
そこで、もっと手の出しやすい価格帯の「いぶし銀カー」として注目したいのがホンダの軽ハイトワゴン「N-WGN」である。
N-WGN カスタム ターボ
ホンダの軽自動車といえば圧倒的にN-BOXが売れているなかで、そのほかのラインアップは苦戦している。N-WGNについても軽自動車の販売ランキングでトップ10に入ることも珍しいという状況だ。しかしながら、乗ってみると「なぜ売れていないのだろう」と心底思うくらいよくできた軽ハイトワゴンと感じる。
エンジンやプラットフォームなどに由来する基本的な走りの良さはN-BOX譲りで、むしろ全高が低く、サスペンションをしなやかにセッティングしているN-WGNのほうが上質感が味わえる。
とくにカスタムに設定されているターボエンジン搭載グレードでは、パワートレインの余裕もあるため、高速道路を走っていると「あれ、軽自動車じゃなくてコンパクトカーじゃね?」と思ってしまうこともあるほど。先進運転支援システム「ホンダセンシング」も標準装備されているので、高速道路でのロングツーリングも楽々こなすのも魅力だ。
使い勝手の点でも、ラゲッジスペースは広く、テールゲートを開けたときの開口部も広い。カスタムターボで178万4200円(FF)というメーカー希望小売価格を割高に感じるユーザーが一定数存在するのであろうし、数値化しづらい走りのフィーリングにお金を払うという感覚になれないのも理解できるが、もっと評価されて然るべき「いぶし銀軽カー」の代表格といえるのがN-WGNなのだ。
「いぶし銀カー」的な視点を持てばクルマに対する視野も広げる
ところで、新車を購入する際に迷うのがグレード選び。かつては中間グレードが機能性と価格のバランスからコスパがいいと言われることもあったが、最近では「せっかく新車を買うのだったら最上級グレードを選ぶべし」という主張も増えている。そもそも新車価格が上昇するなかで、少しの支払いをケチるよりも、満足度を優先すべきというマインドになることも理解できるところだ。
そんな最上級グレードを選ぶべしという主張を否定するわけではないが、スバルのスポーツフラッグシップであるWRX S4を選ぼうというのであれば、エントリーグレードの「GT-H」にも注目してほしいと思う。
スバルWRX S4 GT-H
そもそもセダン・2.4リッターターボエンジン・AWD(四輪駆動)そしてCVTのスポーツセダンを愛車候補にあげるという時点でいぶし銀なクルマ選びをしているとはいえるが、さらに上級グレードの「STI SPORT R」ではなく、あえて「GT-H」を積極的に選ぶというのには、相応の意味がある。
最大のポイントはサスペンションの違いだ。STI SPORT Rは可変タイプのZFダンパーが与えられ、Comfort/Normal/Sport/Sport+といったドライブモードを選ぶことで足まわりの味付けが一変するメカニズムを採用している。一方、GT-Hグレードはコンベンショナルなタイプの固定ダンパーとなっている。
シチュエーションに合わせて、サスペンションやパワートレインの”キャラ変”ができるSTI SPORT Rのほうが楽しみは広がりそうな気もするが、スバルが考えるオールマイティなセッティングを存分に味わうことができるのはGT-Hという見方もできよう。
スバリストと呼ばれるようなスバル車にこだわるユーザーであれば、あえてWRX S4のGT-Hグレードを選ぶというのは渋い、まさに「いぶし銀カーのなかのいぶし銀カー」といえる存在ではないだろうか。
と、ここまではハードウェアとしての「いぶし銀」度をメインにセレクトしてきたが、最後に紹介するのは「オーナーがいぶし銀」に見えるクルマ。それはダイハツのアトレーデッキバンである。
ダイハツ・アトレーデッキバン
軽商用1BOXの最上級グレードであるアトレーのバリエーションとして用意されているデッキバンは、ボディ後端がオープンデッキ状の荷台になっているのが特徴。軽トラでも軽バンでもない独特のスタイルが印象的だ。
そもそもは冷蔵庫などを運ぶ電気屋さんのニーズから生まれたというデッキバンだが、アウトドアを楽しむ人が増えていくなかで、「濡れたものや汚れ物とキャビンをわけておけるパッケージ」としてレジャーユースでのニーズも高まっている。
そもそもアトレーというのはハイゼットカーゴの乗用タイプとして生まれた最上級軽バンという位置づけだが、そのバリエーションにデッキバンが含まれているのは、レジャーユースを前提としている証だ。
とはいえ、デッキバンとすることでリヤシートを倒してひと休みするというシートアレンジはできなくなっているし、全長3.4mに制限される軽自動車ゆえに荷台の大きさもけっして大きいものではない。
つまり、デッキバンは、軽バンと軽トラのいいとこ取りをしたモデルではない。むしろ、デッキバンを有効に活用できるアイディアを持つオーナーでなければ使いこなすことができない、難易度の高いレジャービークルといえる。だからこそ、アトレーデッキバンをホビーユースで活用できているオーナーは「いぶし銀」といえるのだ。
ちなみに、スタンダードなアトレーは上級グレードでも167万2000円だが、デッキバンの価格は191万4000円。半端な気持ちでは手の出せない価格帯となっているのも、そのチョイスをいぶし銀と呼びたくなる理由のひとつだ。
というわけで、4台の「いぶし銀カー」を紹介してみたが、いかがだったろうか。
「俺の選ぶいぶし銀カーが入っていないからやり直し!」と思うかもしれないが、「いぶし銀カー」というのは自動車ファンが自由に選んで楽しむものだろうと思う。そして、愛車選びの際に、「いぶし銀カー」的な視点を持つことでクルマに対する視野を広げるキッカケになれば幸いだ。
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みんなのコメント
基本アクティバンの乗用ワゴン版ではあるがまずミッドシップエンジンレイアウト。
エンジンの重さを駆動輪たる後輪に載せる、RRのスバルサンバーとも通じるコンセプトだが乗用だと前に人、後にエンジンの重さが載ることになりバランスがよく特に荷物を満載にすることが稀な乗用ワゴンでは理想的な配分になる。
そしてエクステリアは当時のステップワゴンにも通じるアクティとは違うデザインが施され車高もローダウン、バネ係数やダンパーもワゴン向けの味付け。
スーパーの買出し、IKEAやニトリで家具衝動買いしてもお持ち帰りできるのはもちろん、一人でゆるーくドライブするだけでも楽しいクルマだ。