ひと口にワイパーと言ってもいろんな種類があった
当初、編集部・Yさんとの打ち合わせでは、ちょっと前のクルマにあった、たとえばフェンダーミラーのワイパーとか、ちょっと変わった装備を集めてみよう……という話だった。ところが編集会議にかけられた結果、編集長のご意向は「だったらワイパーだけでやってみて」とのこと。2000字+αをワイパーの話だけでまとめきれるかどうか自信はなかったが、ともかく資料集めに取りかかってみた。すると、案外といろいろあるものだ。
ワンアームからサイドミラー用まで「雨には勝てたけど、時代に負けてしまった変わり種ワイパー」
フェンダーミラーやヘッドライト用のミラーがあった
まず当初の方針どおりの“変わった装備”としては、初代レパード/同・TR-Xの「ワイパー付き電動リモコンフェンダーミラー」があった。読んで字の如しで、ミニチュア版のちっちゃいワイパーがチマチマと作動する様は、すごいというより健気な印象だったことを覚えている。
で、日本車もドアミラーの時代になると、レパードと同じ日産から次に登場したのが初代シーマ(1988年)のドアミラーワイパー。ドアミラーの窓側に軸があり、折り曲げられたアーム形状のこれまたちっちゃいワイパーがスッスッと上限に動く様は、これもまたオツな感じだったといったところ。
そしてトヨタから登場したのが、クレスタ(1988年)などに設定された「ウォッシャー連動サイドウインドウワイパー」。カタログ写真でおわかりいただけるかどうか、通常はサイドウインドウの下端に収まっていて、作動させるとサッサッと水滴を払う仕組み。「超音波雨滴除去装置付きドアミラー」とのコンビネーションで最強と思わせられたが、窓を開けて自分で拭いたほうが100倍早いんじゃない? という気がしないでもなかった。
チマチマ……いや、ちっちゃなワイパーではほかに、ヘッドライトワイパーというのがあった。恐らくボルボ、サーブあたりが始まりで、ほかに咄嗟に空で思い出せないが、丸型ヘッドランプ、それも昔のシールドビームの湾曲したレンズ形状にブレードの形状を合わせたワイパーが健気に動いて車種もあったはずだ。
一方で日本車では三菱・ギャラン・シグマ/エテルナ・シグマで採用例があった。
一時期の日本車がこぞって採用していた1本ワイパー
さて次は、“ワイパー話”では王道の1本ワイパー。プレリュード、シルビア、ピアッツァなど、一時期の日本車がこぞって採用していたが、思えば、割とあっさりとなくなったことが不思議ではある。
ダブルではなくシングルであることのメリットとして考えられたのは、シンプルでスポーティなクルマとスタイリング上の親和性が高かったこと。そしてブレードのサイズが大きくでき、払拭面積を大きくできたこと、ブレード交換が1本で済んだこと、など。
反対にデメリットは、目の前でひとつの扇状に拭き取られるから、隅(右ハンドルなら右上)の拭き残しが気になる。車種によって格納位置が右のまま(=輸出仕様から“反転”させていない。プレリュードなど)のクルマがあり、作動時、最初に自分の目の前からワイパーが立ち上がることに少なからず驚かされることがあった、など。
それとダブルに較べ1本で仕事をしなければならないため、おのずと高速になる。なのでその勢いでワイパーブレードに付着した雨水を遠心力であたりにまき散らす結果に。筆者も自分のいすゞ・ピアッツァネロに乗っていた時代に、東京・飯田橋あたりの路地でワイパーが水滴を飛ばしてしまったらしく、たまたま通りがかった歩行者(=女性)に睨まれた経験があった。
一本ワイパーではホンダ・トゥデイのようなダブルリンク式もあった。バスのワイパーのようにワイパーの軌跡を非放射状にすることで、払拭範囲を広げる工夫だ。1本ワイパーではメルセデス・ベンツ(W124)では凝った動きをさせて払拭面積を広げる独特なスタイルもあった。
日本車初のリヤワイパー採用車は初代ホンダ・シビック
本数の話の流れでは、天地に小さいフロントガラスに合わせて3本ワイパーを採用したFJクルーザー、あるいはクラウン・エステートのバックドアに、2本のリヤワイパーを採用した例もある。
ちなみに日本車で初めてリヤワイパーを採用したのは初代ホンダ・シビックだった。
またリヤワイパーの格納(停止)位置を“縦”にしていた例もあり、VW初代&2代目ゴルフ(2代目はいささか中途半端に斜めになっていたが)などがそう。いすゞ・ピアッツァで、リヤスポイラーの形状違いで格納位置に縦と横の2パターンあった例もあった。
まだまだある変わり種ワイパー
また向かい合わせに、平たくいうとハの字状に展開する例は、アルファロメオ・ジュリアなどの旧車の時代に多かったが、もう少し時代が近いところでは、初代エスティマなどもそうだ。反対に、ルノー・アルピーヌのように、なぜか左右2本のワイパーの付け根がフロントガラスの中央に寄せられ、左右から立ち上がったワイパーが中央で手の甲を合わせるような形になるタイプもあった。
2本が重なって格納されていて、立ち上がると左右で速度差を作りながら作動させるものもあった(プジョー604など)。クラウン、マークIIあたりで、非作動時にワイパーの格納位置が低くされ、視界を邪魔せずスッキリと見せる方式も。
一方で最近では空力ボディが多く、フロントガラスが寝ているクルマが多く、2本ワイパーだが左右のブレードの長さを違えて、効果的にワイパーを使う設計のものも多い。
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