ホンダの旗艦「シビック」が、じつに通算11代目へとフルモデルチェンジ。本日9月3日発売となった。
今やグローバルでホンダの稼ぎ頭に成長したシビック。いっぽうでかつて100万円台から選べ、200万円台が中心だった価格は、新型モデルで300万円を超えてきた。実はこの300万円台という価格帯、国産の売れ筋モデルが集中するゾーンでもある。
なぜホンダは新型シビックに300万円を超える値付けをしたのか。同価格帯のライバルと比較しながら、背景にある事情を解説する。
文/渡辺陽一郎、写真/HONDA
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新型シビックの価格帯は国産人気車がひしめく激戦区
2021年8月にフルモデルチェンジした新型シビック(全長4550×全幅1800×全高1415mm)
2021年8月にフルモデルチェンジを受けた新型シビックは、直列4気筒1.5Lターボエンジンを搭載する5ドアハッチバックだ。全長は4550mm、全幅は1800mmで、国産のハッチバックでは大きな部類に入る。
グレード構成は、「LX」(価格は319万円)と上級の「EX」(353万9800円)を用意した。駆動方式は2WDのみだが、トランスミッションにはCVT(無段変速AT)と6速MTがある。価格はCVT、6速MTともに同額だ。エンジンや足まわりの設定は、18インチタイヤの装着まで含めて、両車ともに共通化されている。従ってグレードによって異なるのは装備のみだ。
装備は全般的に充実しており、「LX」も安全装備と運転支援機能のホンダセンシングを標準装着している。カーナビの機能を備えたホンダコネクト、18インチアルミホイールなども同様だ。
「EX」は、「LX」に比べると約35万円の上乗せで、アダプティブドライビングビーム(ハイビームの状態を保ちながら対向車などの眩惑を防ぐ機能)、BOSEプレミアムサウンドシステム、運転席と助手席の電動調節機能などを加えた。
そして「LX」の319万円、「EX」の353万9800円の価格設定は、売れ筋になる国産車の実質的な上限価格帯だ。従って同程度の予算で、SUV、ミニバン、ワゴンなど、さまざまなカテゴリーの上級車種を購入できる。また、輸入車については、フォルクスワーゲン ゴルフのような同サイズのハッチバックが、シビックと同じ価格帯で用意される。
同価格帯筆頭はハリアーやCX-5など人気SUV
トヨタハリアー(2WD)の価格帯は299万円~482万円。シビックよりも後席と荷室が広いが、走行性能では物足りなさを感じる
最も注目されるのは、人気のカテゴリーとされるSUVだ。ハリアーは価格が最も安い2WD・「S」が299万円、中級の2WD・「G」は341万円になる。合成皮革を使った内装は上質で、「G」になるとアダプティブハイビーム、運転席の電動調節機能など、装備も同じ価格帯のシビック「EX」と同様に充実する。そしてハリアーの後席と荷室は、シビックよりも広い。
逆にシビックがハリアーを上まわるのは走行性能だ。ハリアーのノーマルエンジンは直列4気筒2Lで、車両重量は2WD・「G」が1570kgに達する。ハリアーの動力性能は、実用的な不満は生じなくても、上級SUVとしては物足りない。その点でシビックの走りは満足度が高い。
SUVではマツダ CX-5の人気も根強い。2WD・「XDプロアクティブ」は、価格がシビック「LX」と同等の322万8500円で、直列4気筒2.2Lクリーンディーゼルターボを搭載する。
最高出力は200馬力、最大トルクは45.9kgmと力強い。シビックの182馬力・24.5kgmを大幅に上まわる。「XDプロアクティブ」は実用装備も充実しており、アダプティブLEDヘッドランプ、リアゲートの電動開閉機能、運転席の電動調節機能などを標準装着した。
また、同じCX-5の2WD・「25S・Lパッケージ」は、価格が320万1000円で、2.5Lノーマルガソリンエンジンと充実した装備を採用する。センターディスプレイが10.25インチに大型化され、シート生地は本革になり、後席にもシートヒーターが備わる。
シビックでは低重心による優れた走行安定性がメリットだが、CX-5はSUVの中でも価格が特に割安だ。CX-5・2WD・「XDプロアクティブ」の価格は、前述の通りシビック「LX」と同程度だが、装備は先に挙げたアダプティブLEDヘッドランプの装着などによって少し充実している。
さらにエンジンは2.2Lクリーンディーゼルターボで、後席や荷室も広いから、機能や装備と価格のバランスではCX-5が上まわる。
人気ミニバンやレヴォーグも売れ筋価格帯が一致
ミニバンでは、セレナの売れ筋価格帯がシビックとほぼ一致する。ノーマルエンジン(マイルドハイブリッド)の「ハイウェイスターV」は307万100円だから、シビック「LX」よりも12万円ほど安い。「e-POWERハイウェイスターV」は358万2700円だから、シビック「EX」よりも約4万円高い。
セレナのこの2グレードには、両側スライドドアの電動機能や運転支援機能のプロパイロットなどが標準装着される。加える必要があるのは、ディーラーオプションのカーナビ程度だ。
基本的な装備内容は、シビック、セレナともに同程度で、シビックは走行性能が優れ、セレナは広い室内と豊富なシートアレンジなど、ミニバンの機能と装備を充実させた。
スバルレヴォーグ「GT・EX」の価格は348万7000円。走破力、装備面において、同価格帯のシビック「EX」に比べて優れており、割安感も感じられる
ワゴンではレヴォーグがシビックのライバルになる。レヴォーグの推奨グレードは「GT・EX」で、価格は348万7000円だ。シビック「EX」に近い設定となる。
レヴォーグのエンジンは水平対向4気筒1.8Lターボで、最高出力は177馬力、最大トルクは30.6kgmだ。最高出力はシビックが上まわるが、最大トルクは排気量に余裕のあるレヴォーグが勝る。そしてレヴォーグは全車が4WDを採用するから、走破力もシビックに比べて優れている。
装備については、レヴォーグ「GT・EX」には、渋滞時のハンズオフアシスト(ステアリングホイールから手を放しても運転支援が続く機能)を含んだアイサイトXテクノロジー、リアゲートの電動開閉機能、11.6インチのセンターディスプレイと通信機能、歩行者保護エアバッグなどが備わる。
シビック「EX」は、BOSEプレミアムサウンドシステムの採用に特徴を持たせたが、4WDを含めて機能や装備を比べると、レヴォーグが充実して割安と受け取られる。
そしてシビックと同様、ミドルサイズの5ドアハッチバックには、マツダ3も設定される。シビックに価格の近いグレードは、スカイアクティブX搭載車だ。基本的な装備を充実させた「Xプロアクティブ」は319万8148円になる。本革シート、運転席の電動調節機能などを装着した最上級の「X・Lパッケージ」は338万463円だ。
ただし、マツダ3のスカイアクティブX搭載車は、2Lのノーマルエンジン車に比べて価格が約68万円高い。そのために装備と価格のバランスでは、シビックが少し割安になる。
新型シビックに300万円を超える値付けをしたホンダの事情
以上のようにシビックは、同じ価格帯で注目されるハリアー、CX-5、セレナ、レヴォーグに比べると割高感が伴う。その理由は、ホンダの価格に対する考え方に特徴があるからだ。
ハリアー、CX-5、セレナ、レヴォーグは、いずれも国内市場に重点を置く。CX-5は海外でも好調に売られるが、マツダの国内販売を支える車種でもあり、ライバルの動向も踏まえて価格を割安に抑えた。そのためにセレナやレヴォーグを含めて、前述のライバル車は買い得に感じられ、売れ行きも伸びている。
ところがシビックでは、ホンダの価格に対する考え方が異なる。従来の好調とはいえない売れ行きをベースに、日本国内だけで収支を合わせることを前提に価格を決めているからだ。
つまり「海外でたくさん売られるから、日本ではあまり儲からなくても仕方がない」とは考えない。日本の販売台数が少なくても、生産や販売関連のコストを含めて、日本だけで儲けをしっかりと出せる価格にしている。そのために1台当たりの価格が高まった。
海外販売中心のCR-V、アコード、シビックなどの価格は割高になりやすい。割高な価格帯は、走行性能を筆頭に高い商品力を持つシビックの国内の売れ行きの障壁になりかねないだろう
従ってホンダ車の場合、国内販売台数の多い軽自動車やコンパクトな車種は割安で、海外販売が中心のCR-V、アコード、シビックなどは割高になりやすい。「日本のユーザーがどのように思うか」ではなく「メーカーにとって都合の良い方法は何か」を優先させるためだ。
一番可衰想なのは、シビックとそのユーザーだろう。シビックはメーカーの都合によって一度廃止されたが、寄居工場で海外仕様の生産を再開することになり、国内販売を復活させた。しかし販売促進に力を入れず、セダンは再び廃止されている。新型はハッチバックのみだ。
シビックは走行性能を筆頭に高い商品力を備えるが、価格は割高で、国内で売れ行きを伸ばす時の障壁になっている。日本のユーザーと、さまざまなカテゴリーのライバルが共存する国内市場を見据えた価格にすれば、シビックの商品力はさらに高く評価されるだろう。
シビック「LX」の価格は、高くても、先代型のハッチバックと同じ294万8000円が上限になる。最も安価な「LX」が300万円を超えると、シビックの印象が大きく変わってしまうからだ。
ライバル車の動向を考慮すると、「LX」の価格は280万円が妥当で、現状では40万円近く高い。今後は特別仕様車の追加などで、適正な価格に抑えた仕様を投入して欲しい。そうすればシビックは、共感を呼ぶクルマになる。
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みんなのコメント
それを言うとクルマ全体の価格が~とか日本人の所得が~とか訳の分からないこと言い出す人が出てくるけど、結果としてホンダが日本で苦戦しているというのが市場の結論よね。本当に売れるクルマしか安く出来ないならいずれ軽自動車メーカーになってしまうよ。
あの頃のHONDAは何処に行ったんだろう。昔は本田党だったけど、あの頃が懐かしい。