電動のロードバイク世界最高峰クラスとして、2019年からおこなわれている「MotoE World Cup」が、2023年シーズンから「MotoE 世界選手権」へと格上げされ、ヨーロッパにて全8戦(16レース)がおこなわれます。
電動マシンで競われるワンメイクレースは初開催された2019年は全4戦6レース、2020年は全5戦7レース、2021年は6戦7レースがおこなわれ、昨季は全7戦14レースが開催されました。年々、盛り上がりを見せ、2023年は史上最多となる全8戦16レースが欧州各地で開催されます。
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MotoEマシンは昨シーズンまでのイタリア・エネルジカ製にかわって、2026年シーズンまで4年間、ドゥカティが供給することになりました。
約260kgあった車体重量を225kgまで軽量化した『V21L』は、最高出力110kW(150ps)、最大トルク140Nmで、275km/hもの最高速度を誇ります。
重量110kg、容量18kWhのバッテリーパックは、カーボンファイバー製のケースを持ち、『パニガーレV4』と同様にシャーシの構造部材としても機能。フロント部には重量3.7kgのアルミニウム製モノコック・フロントフレームを備えています。
3月上旬のヘレス・サーキットでのテストにて各チームに初供給され、全9チーム18名のレギュラーライダーたちは、4月上旬のバルセロナカタルーニャ・サーキットと合わせ、2度のテストを開幕前におこないます。
2021年シーズンからMotoEクラスに参戦し続けている日本人唯一のライダーが、大久保光選手(Tech3Racing)です。
全日本ロードレース選手権J-GP3クラスやアジア・ドリームカップでチャンピオンに輝くなど実績充分なトップライダーで、MotoE参戦2年目の昨季は表彰台にも上がり、ランキング6位につけました。
MotoEフル参戦に加え、鈴鹿8時間耐久レースやドイツやイタリアでも選手権を走る、言うならば電動とガソリンエンジン、両方のロードレーサーを乗りこなす二刀流。世界で活躍する侍ライダーに、お話を聞くことができました。
青木:電動マシンの違い、難しさはどのへんにあるのでしょうか?
大久保光選手:アクセルの開けはじめのところでピークパワーを一気に迎えるので、そこのコントロールが難しいのではないかと思います。
青木:開けはじめの駆動力は大排気量マシンにも負けないとも?
光選手:ボクのフィーリングですと、JSB1000のマシンにも開けはじめのところだけでしたらパワーがあるのではないかと思いますね。
トランスミッションがないのも特徴で、トップスピードは劣りますが、それでも最高速は270kmkm/h以上が出ますので、遅いわけではありません。
青木:驚異的な駆動力というのに、トラクションコントロールは備わっていません。乗り方はまったく異なってきそうですね。
光選手:ビッグパワーを持つ大きいバイクの乗り方をしなければならない場面もありますし、小排気量車のようにスピードを落とさないよう心がけて走ることもあり、新しいライディングスタイルが求められているのだと思います。
青木:新しい走り方とは興味深いですね! たとえば、どんなところがポイントになりますか?
光選手:たとえば、そうですねぇ。コーナーの立ち上がり、開けはじめでミスをしてしまいますと、そのツケがストレートエンドまで影響しやすいというのがありますね。
青木:なるほど、シフトダウンできませんし、パワーで取り返せない、リカバリーが難しいのですね。そういう点ではMoto3にも似ていると。
光選手:トップスピードは別として、はい、そうですね。空転などの影響がビッグバイクより受けやすいと言えます。
バイクが重いというのももちろんあります。また、通常(レシプロエンジン)のマシンですと、ガソリン(燃料)が減るにつれて車体が軽くなりますが、電動マシンではバッテリーの消費電量が減ったからといって重量が変わるわけではありません。そのあたりのフィーリングも異なりますね。
青木:熱の問題が大きいと聞きます。8周のレースでライダーが感じることは?
光選手:バッテリーが100%充電されているときをピークに、1~2周してしまうと熱がこもりますし、バッテリー残量も少なくなってパワーが出にくくなります。それはもう仕方がないことだと思っています。
青木:ラップタイプは1~2周目がベスト?
光選手:そうなります。最終ラップに向けてタイヤも減りますし、パワーもなくなっていきますので、そこのあたりが難しいところです。
青木:MotoEクラスで使われている再生タイヤのグリップ力は、通常のタイヤと比較して落ちる?
光選手:正直なところ、通常のタイヤより落ちますが、それでも僕たちは普通にレースをしていますので、そういう意味ではすごい技術ですし、今後へカーボンニュートラルという点ではつながっていくのではないかと考えています。
※ミシュランが供給するMotoE公式タイヤは、荷重のかかり方などがMotoGPとは異なる電動マシンに合わせて開発した専用タイヤ。ラバーコンパウンド材や構造材にバイオ素材や再生素材を採用するという取り組みを2020年シーズンからおこなっています。
青木:ゼロエミッションな電動バイクで競われ、タイヤも環境に配慮した持続可能材料が用いられるMotoEクラス。大久保選手ご自身もサステナブルな暮らしや取り組みへの関心が強かったのでしょうか?
光選手:環境についてはMotoEへの参戦を通して興味を持つようになりましたが、もともとは(電動のロードレース世界選手権という)誰もやっていないことに挑戦したいという探究心、チャレンジしたいという気持ちからMotoEへのフル参戦が始まりました。
青木:マシンがドゥカティへ変わりますが、3月のテストまで一切見れないのですか?
光選手:はい、そうです。
青木:シーズン中でも、テストや練習はできないのですか?
光選手:ドルナが用意するテストでしか走れないというのがMotoEのルールになっていまして、限られた機会の中でライダーがどうアジャストしていくかがすごく重要になってきます。
青木:高い適応力が求められますね。
光選手:特に今シーズンはマシンが変わりますし、大切なことかと思います。楽しみにしています。
※ ※ ※
■2023年MotoE開催(全8戦16レース開催)フランスGP(ルマン/ブガッティ・サーキット) 5月12日~13日イタリアGP(ムジェロ・サーキット) 6月9日~10日ドイツGP(ザクセンリンク) 6月16日~17日オランダGP(TT・サーキット・アッセン) 6月23日~24日イギリスGP(シルバーストン) 8月4日~5日オーストリアGP(レッドブルリンク) 8月18日~9日カタルーニャGP(バルセロナ-カタルーニャ・サーキット) 9月1日~2日サンマリノGP(ミサノ・ワールド・サーキット) 9月8日~9日
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