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ミライのF1マシンはどんな形? グランプリ率いるドメニカリCEOに直撃インタビュー

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ミライのF1マシンはどんな形? グランプリ率いるドメニカリCEOに直撃インタビュー

 2024年シーズンからF1のステファノ・ドメニカリCEOが学んだことがあるとすれば、それは物事の成り行きを確実に予測することは不可能だということだ。

 3月の開幕戦バーレーンGPでは、レッドブルのマックス・フェルスタッペンが圧倒的な強さを見せて全戦全勝する可能性があると多くの人が話していたが、実際はそうならなかった。

■ルノー、次期F1用PUの開発断念……2026年からのF1の魅力低下の証なのか? アウディ完全否定「メーカーにとってF1は魅力的……最高のテストベンチだ」

 実際、シーズン前半戦で7人の異なるウィナーが誕生するというのは2012年以来のこと。サマーブレイク明けにはレース勝利や、少なくともコンストラクターズタイトルをめぐり激しい戦いが繰り広げられるだろう。

 ドメニカリCEOは今年のはじめの時点から、予算制限と空力テスト制限の組み合わせによって、最終的にチーム間の実力差が収束していくと考えていた。

 今日正しいと考えられていることが明日正しいとは限らない。それを認識しているドメニカリCEOは常にオープンマインドだ。フェルスタッペンとレッドブルの優位が最初から決まっていた訳ではないのと同様に、F1の長期的な未来も常に進化し続けるモノとして見る必要がある。

 motorsport.comのインタビューでF1での現状について語ったドメニカリCEOは、リバティメディアのF1買収後に沸き起こった人気の波に、グランプリレースが乗り続ける絶好のチャンスがあると説明した。

「私が政略的な理由でそう言っているのだとみんなが信じていた時に、年初に話していたことがまさに今起こっていると言えて、とても嬉しいよ」

 ドメニカリCEOはそう語り、今後もひとりのドライバーによる独走にならないとの考えを示した。

「これは2025年末まで確実に続くだろう。スポーツアクション、スポーツドラマの要素は間違いなく存在する」

 2025年への言及は興味深い。コース上でのバトルにワクワクする一方で、新レギュレーションが導入される2026年に向けた不確実性がそこにはあるのだ。

 F1パドック内では、チーム間の実力差を縮める最善策はレギュレーションを変更しないことだと繰り返し指摘されてきた。一方で勢力図をひっくり返す1番の方法はレギュレーションを変更することだ。

 伝説的なF1マシンデザイナーのエイドリアン・ニューウェイは今年初め、こう語っていた。

「全てが収束し始め、ファンが望むモノを手に入れ始めた矢先に、大きな変化を受ける。パワーユニット(PU)とシャシーが同時に刷新されるなんて、記憶にある限り初めてのことだからね」

「グリッドがバラバラになる可能性はかなり大きいはずだ」

 ドメニカリCEOは、2026年シーズンには現在のF1にある激しさがなくなってしまうのではないかという懸念の高まりを正面から受け止めた。しかし同時に、なぜレギュレーション変更に踏み切る必要があったのかを認識することが重要だと語った。

「我々が変わろうとしているのには、常に理由がある」とドメニカリCEOは言う。

「まず、我々がやっていることを先取りする必要がある。この(2026年)テクニカルレギュレーションは、決定が下されたあの時、メーカーがF1に参加する必要性と、使用される必要がある異なる種類の技術に関連していた。これは本当に基本的かつ重要なことだと思う」

「さらに、この技術プロジェクトの中心に持続可能燃料があることで、この新技術がモビリティの世界でより早く利用できるようになるプロセスが加速するだろう。世界中の市場にとって有益かつ低価格の燃料が開発されるだろう。私はそう確信している」

「ご存知のように、現在(持続可能燃料の)価格はかなり高いが、F1は常にプロセスを加速させ、技術が正しい方向に進む手助けする上で非常に優れている」

「我々はそれに期待しているし、みんながこの方向に向かってくれると確信している」

アウディIN ルノーOUT

 新レギュレーション導入により、特にアウディという新たなメーカーの関心を集めるというポジティブな結果に繋がった。しかしここ最近、その莫大なコストに見合う変更ではなかったのではないかという指摘もなされている。

 内燃エンジンと電気モーターのパワー比率が50対50という新PUの開発に数十億ドルを費やし、そのPUを搭載するためにシャシー側が妥協を強いられることを考えると、F1が新メーカー獲得で得られる利益はゼロになる可能性が高い。

 実際、ルノーはPU開発と製造を停止する方向に向けて動き出しており、同社のワークスチームであるアルピーヌは、他メーカーのカスタマーPUを使用する可能性がある。

 しかしドメニカリCEOは、新レギュレーション導入によってF1が一歩進んで一歩下がったという見方には同意しなかった。

「レギュレーションが決まった時点で、メーカーが選手権に参加することに対して本当に興味を持っているかどうかを確認する必要があったと思う。エンジンがなければ走ることができないから、この方程式の重要な要素だ。だからこそ、耳を傾ける必要があった」

「我々は恥ずかしがったり、木の陰に隠れたりする必要はないし、メーカーは全て、それぞれに利害が異なるから妥協案であったことは事実だ」

「しかしFIAは、誰もが納得できるモノにするため最善を尽くそうとした。それは事実だ」

レギュレーション変更の頻度

 5年毎に繰り返されるレギュレーション変更によって勢力図が入れ替えられるというサイクルを変えるべきかどうかが注目される中、ドメニカリCEOはレギュレーション変更のスピードを遅らせることを検討する良い機会だと語った。

「2030年にもう一歩踏み込んだ変更を行なう上で、今何かすることが正しいのだろうか? ということに帰結する。新しいテクノロジーがどのように導入され、どのように発展していくかを見守る必要があるから、今はそれに答える上で正しい立ち位置にいない」

「そのため、それについて議論する必要がある時が来るだろう。そしてレギュレーション変更の必要性があった時と同じように、メーカーやチームの必要性、エンジニアリングの必要性が確実に存在するかどうかを理解する必要がある」

「変更の必要性は通常、ふたつの理由から議論される。ひとつは我々がモータースポーツの最高峰であり、トップレベルの技術を採用しているということだ」

「過去におけるふたつ目の理由は、圧倒的なマシンを止めることだった。それはかなり明確だった。私が違う色の服に身を包んでいた(フェラーリのチーム代表を務めていた)時、それもゲームのひとつだったということを覚えている」

「でも今はレギュレーション、予算制限、空力制限といった新しい要素が加わったことで、この点はもう議論に挙げられることはないと思う」

「本当のところは、将来に向けた技術的な課題なのだ。その変化が5年という短いサイクルで起こるかどうか? それが今後の論点になるだろう」

F1マシンを変えていくなら?

 ドメニカリCEOは、何か変更すべき点があるとすればマシン重量だと考えている。

「フォーミュラカーのアプローチがどこから始まったのかを忘れてはいけない。今後も常に議題に挙がるのは、マシン重量と寸法だろう」

「今はマシンが大きく、重いという状況だ。もしかしたら今後、この新しい展開の中で、本当に軽量マシンに戻すことを決断できるかもしれない」

「しかし、それについて議論するのは時期尚早だ。まずは2026年のテクニカルレギュレーション、そしてスポーティングレギュレーションにどう対応できるかを検討し、適切な時期にそれについて話し合うことにしよう」

 マシン軽量化の追求は、2026年のレギュレーション変更でも目標のひとつになっていた。ただ大幅な軽量化は、当初期待されたほどには進まなかった。

 ヘイローを含めより安全なマシンは、重量増という結果を伴う。しかし現在のマシン重量に関する要因のひとつはPU。特に搭載しているバッテリーだ。

 F1が長期的にマシン重量を減らしたいのであれば、重いハイブリッドマシンからの脱却は、水素へのシフトであれ、旧来のV8エンジンへの回帰であれ、検討する価値がある選択肢だろう。

 ドメニカリCEOは、この件に関して興味深い考えを持っている。

「技術、コスト、安全性など多くの理由から、水素そのものがF1の中期的な解決先になるとは思わない」とドメニカリCEOは言う。

「しかし私は(軽量化を)進めるために、この種のコンセプトを維持することが正しいと信じている。仮に持続可能燃料がゼロ・エミッションという正しい働きをして、持続可能という点を正しい方法で捉えているのであれば、エンジン開発に関してそれほど複雑かつ高価なモノはもう必要ないのかもしれない」

「だから、もっと軽くて音の良いエンジンに戻そうと考えるかもしれない」

「このような議論は、導入3年以内に必ず出てくると思う。新しい旅路の途中で、我々は自分たちが今どこにいるのか、状況はどう変化しているのかを考え、見極める必要がある」

「しかし、重要なことがひとつある。振り返ってみて、いかに物事が急速に変化しているかを認識することだ」

「2~3年前までは、誰もが『電気自動車(普及の流れ)が永遠に続く』と言っていたのを覚えている。今ハンドブレーキを引くのは、先に進むよりも影響が大きい。だから我々は慎重になる必要がある」

「我々は正しいアプローチを取らなくてはならない。スポーツビジネスを営んでいる訳だし、我々のニーズとスポーツのために正しい決断を下す必要があると思う」

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  • コンバット越前
    人間の肉体には限界があるが機械ならどんなハードなセッティングもok
    AI走行する機械F1に脆い人間が挑戦するレース
  • エガちゃんねらー
    おお!ヤシマ家の
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