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「クルマは金属製」は時代遅れ!? 進化するクルマの意外な非金属部品とは

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「クルマは金属製」は時代遅れ!? 進化するクルマの意外な非金属部品とは

■外装内装だけじゃない! エンジンにも金属以外の部品を採用

 自動車の専門的な知識がなくても「クルマは金属でできている」という点は多くの人がイメージしやすいと思います。しかし、近年では技術が進歩することで、金属で作らなければならない部品は減りつつあり、ほかの材料が用いられるパーツも増えてきています。

【写真】衝撃! 2万kmオイル交換せず破損したエンジン内部

 最新のクルマの中身には、どのような素材が使われているのでしょうか。

 現在、金属以外の材料で多いものとしては、プラスチック樹脂やFRP(繊維強化プラスチック)と呼ばれるものがあります。

「繊維」という名前が入っていますが、普段目にする服の糸のような繊維ではなく、溶けたガラスや炭素でつくられた糸状のものをプラスチック樹脂で固めたもので、さまざまな形に対応できる材料とされています。

 これらは、クルマを横から見たときにタイヤを囲んでいるフェンダーと呼ばれる部分や、ボンネットなどの外装部品に使用されています。

 例えば、三菱「デリカD:5」ではフェンダーの部分が樹脂となっており、強い力で押されても元の形に戻るようになっています。金属は凹むと形が変わってしまいますから、これは金属以外の材料を使用するメリットといえるでしょう。

 自動車部品を手掛ける三菱ケミカル株式会社によれば、2015年時点でクルマに使用されているプラスチックの重量割合は8%から10%とのことです。

 これは、当時の2015年1月に販売が開始されたトヨタ「アルファード」で考えた場合、もっとも軽いグレードで車重は1920kgですから、プラスチックはおよそ150kgから200kgほども使用されていることになります。

 また、近年ではエンジンにも金属以外の部品が多く使われています。

 例えば、ガソリンを燃やすために必要な空気をエンジンに送り込む「エアインテーク」と呼ばれる部品や、エンジンの冷却水を強制的に循環させる「ウォーターポンプ」と呼ばれる部品です。どれも、エンジンを構成する上で欠かせない重要な部品です。

 インテークはエンジンに必要な空気の入り口で、損傷した場合はエンジンの不調に直結してしまうため、基本的には金属製でした。

 また、ウォーターポンプはエンジンを冷却する水を循環する装置ですが、水はエンジンに触れるため非常に高い温度になります。

 一般的なプラスチックでは変形や破損の恐れもあるため、従来は壊れにくい金属製が使われていました。

 しかし、樹脂の高性能化によって、裂けたり壊れたりしにくい製品が開発されるようになります。

 樹脂製部品の採用によって実現するクルマの「軽量化」は、近年の自動車には欠かせない「エコ」という要素を押さえるために重要な役割を果たすため、その採用が広まったとされています。

 また、樹脂製部品が採用されるそのほかの理由について、トヨタの販売店スタッフは以下のように話します。

「衝突安全基準をクリアするため、という理由もあります。歩行者と衝突した際に、金属部品だと怪我の程度を大きくしてしまう恐れがありますが、樹脂なら凹んだりたわんだりすることで衝撃を逃がすことができます」

※ ※ ※

 外装の雰囲気を左右するパーツの場合、金属製ならではの質感や重量感という要素もあるため、樹脂製化の波が来ることは悩ましいですが、時代の変化には抗えないようです。

■良いことづくめに思える非金属部品の意外な弱点とは

 プラスチックなどの材料は、金属に比べて軽いという特徴を持っています。このような金属をFRPやプラスチックなどに置き換える軽量化は、かつてはレーシングカーやスーパーカーといった車種でおこなわれていました。

 クルマを軽くすれば加速、減速、コーナリングのスピードが上がるため、重たい部品を軽い部品に交換するメリットがあったのです。

 例えば、1990年に発売されたホンダの初代「NSX」は、モノコックとよばれる車体の骨格部分を軽量なアルミニウムでつくり、大幅な軽量化を達成しました。

 ほかにも、2014年に発売されたBMW「i3」は、モノコックがアルミニウムよりも軽く強靭なCFRP(炭素繊維強化プラスチック)でつくられ、さらに大幅な軽量化を果たしています。

 なお、CFRPはレーシングカーにも使われている材料で、F1マシンでは車体のほとんどがCFRPといわれています。

 しかし、樹脂製部品にはリサイクルの面でデメリットがあります。CFRPはとくに難しいといわれており、事故などで壊れた場合も、通常の修理方法では修理できず、高額になるデメリットもあるようです。

 スバルの販売店スタッフは以下のように話します。

「スバルでは、ルーフにカーボン(CFRP)を使用した限定車があり、飛び石や事故などで破損した場合、金属に比べて修復が難しい特徴があります。

 当店ではまだ破損した車両はありませんが、ルーフが破損したらルーフ部分を全部交換することになるのではないでしょうか」

 金属であれば板金で修理できていた部分が、カーボンでは修正が困難なために部品そのものを取り替える必要もあるようです。

 また、金属は高温で溶かすことによって新しい製品にリサイクルできますが、FRPやCFRPはリサイクルが難しいという性質もあります。

 クルマの部品として使っている間は燃費が良くなるといったメリットがあるものの、廃車になったり解体されるときは金属よりも扱いづらく、環境負荷も高い材料といえるでしょう。

※ ※ ※

 排出ガス規制などクルマを取り巻く環境は年々厳しくなっています。そんななか、2019年10月に開催された東京モーターショー2019で環境省のブースに出展された「ナノセルロースヴィークル」が注目を集めました。

 これはCNF(セルロースナノファイバー)という植物由来の素材で作られたクルマです。CNFは鋼鉄の5分の1の軽さでありながら、鋼鉄の5倍の強度を持つといいます。

 いまのところ鋼鉄より強靭な木を想像するのは難しいですが、将来的には木材が使われたクルマが身近になる日がくるのでしょうか。

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