元号が平成から令和に変わり、31年続いた平成の時代が幕を閉じたが、この2019年5月10日に、“平成最後の1ヵ月”となる2019年4月の新車販売台数が発表された。
そこで、本稿では平成の時代に最も売れた上位10車を独自に集計。そのベスト10をもとに、人気車の移り変わりを振り返る。
【ついにEV普及元年到来か】 新登場車全情報! 新時代EVが日本を席捲する!?!?
「令和の人気車」は、この10台から果たしてどのように変わっていくのだろうか。すでに変化の兆候は販売データにも表われてきている。
文:永田恵一
写真:編集部、TOYOTA
平成の販売ランキングトップ10は?
1987年に発売された通算6代目のカローラ。1990年に年間30万8台を販売。この記録は平成におけるカローラの最多販売台数となった
平成の時代を通じた販売台数のベスト10車は、以下のような結果となった。
■平成の車種別販売台数 ベスト10
1位:トヨタ カローラ/518万9872台
2位:ホンダ フィット/273万7664台
3位:トヨタ クラウン/263万8941台
4位:トヨタ プリウス/259万7910台
5位:トヨタ ヴィッツ/219万5053台
6位:日産 マーチ/212万3664台
7位:トヨタ マークII/194万3993台
8位:トヨタ エスティマ/180万870台
9位:ホンダ ステップワゴン/158万8608台
10位:マツダ デミオ/150万3624台
(※日本自動車販売協会連合会公表値をもとに独自に作成。集計期間は1989年1月-2019年4月。軽自動車は除外)
ベスト10の順位自体は、既報のとおり2019年末までと変わらない。
ただし、ベスト10以下の販売台数まで含めると、2019年末時点で12位だった日産 セレナが同11位の日産 サニーを抜き、ベスト10目前の11位に浮上するという順位変動もあった。
“貯金”大きいカローラ&クラウン、安定感でフィットが台頭
フィットは、初代発売の翌年2002年と2代目(写真右)発売翌年の2008年に年間販売台数No.1に。21世紀に誕生した車ながら、3代目の現行型(写真左)まで堅調に売れ続けている
さて、平成の車種別販売台数ランキングには、どのような傾向が見られたのか? ベスト10入りした各車の動向を見ると、この約30年間の人気車の移り変わりも見えてくる。
■1位:カローラ
平成初期には年間30万台近く売れたうえに、平成元年から年間販売台数1位に18回も輝いた貯金に加え、現在も堅調に売れていることで圧倒的な平成の人気車となった。
■2位:フィット(※2001年/平成13年発売)
リーズナブルでキャビンとラゲッジスペースが広いコンパクトカーということで好調な販売を続け、年間販売台数1位は2回と意外に少ないものの、トータルでは2位にランクイン。
■3位:クラウン
平成初期は年間販売台数ベスト3に入るほど売れていたことや平成9年まで月平均1万台近く売れていた貯金で3位表彰台を確保。
しかし、時代の変化もあり令和のベスト10に入る可能性は低いと思われる(※2018年度の車種別販売台数順位は16位)。
■4位:プリウス(※1997年/平成9年発売)
ガソリン価格が高騰した平成20年(2008年)からベスト10入り。
翌平成21年の3代目モデルへの移行の際の大幅値下げが功を奏し、それ以来年間販売台数1位に6回輝いた追い上げで4位入賞を果たした。
※平成30年間においてカローラ、フィット、プリウス以外で年間販売台数1位を獲得したモデルは、アクアの3回とノートの1回のみ。
■5位:ヴィッツ(※1999年/平成11年発売)
平成11年に登場し、年間販売台数ベスト3に顔を出すことも多かったものの、順位変動が大きかったのもありトータルでは5位に留まった。
■6位:マーチ
堅実なコンパクトカーだった2代目モデルとファニーな3代目モデルが常に堅調に売れたものの、タイ製となった4代目モデル(現行型)で失速し、トータルでは6位に。
■7位:マークII(※2004年/平成16年生産終了)
平成初期においては現在のプリウスのような国民車的な1台で、年間販売台数ベスト3に入ることも多かったが、オデッセイなどのミニバンが台頭し始めてから徐々に販売が減少。
それでも堅調な販売を続けるものの、心機一転し平成16年()にマークXへ移行。しかし、そのマークXも2019年いっぱいでの生産終了が発表され、マークII&マークXは平成に売れたクルマを象徴する存在となった。
■8位:エスティマ(※1990年/平成2年発売)
年間販売台数ベスト10入りが始まったのは、初代モデルに5ナンバーサイズのルシーダ&エミーナが加わってから。
それ以来15年ほど年間販売台数ベスト10の常連となったものの、現行型となる3代目モデルは発売から14年目となっている。
平成の販売台数ベスト10入りは過去の貯金でランクインした感が否めない。
■9位:ステップワゴン(※1996年/平成8年発売)
現在、日本のファミリカーの大きな柱となっているスライドドアを持つ乗用車ベースのミドルハイトミニバンのパイオニアとして特に初代モデルがヒット。
2代目以降も堅調に売れトータルでは9位にランクイン。元号が令和に変わり、トヨタのヴォクシー三兄弟、日産 セレナとの三強対決はどうなるかにも注目だ。
■10位:デミオ(※1996年/平成8年発売)
特に売れたのは、低価格かつコンパクトカーながら広いスペースを持つ初代モデル。2代目モデル以降もキャラクターを変えながらも堅調に売れ、順当にランクインを果たした(※マツダ車としては唯一の10傑入り)。
平成と様変わり!? 令和の人気車はどうなる?
「令和の人気車」を占ううえで鍵となる兄弟車。アルファード/ヴェルファイアは、2018年度に6万3351台/4万1429台を販売。合計では日産のセレナを上回り、同期間で4位の販売台数となる
令和の始まりを、「31年振りに人気車の動向をリセットするタイミング」と捉えると、直近の月間販売台数ランキングを見てもわかる通り、今後5年間は販売の主力が、ハイブリッド・コンパクトカー・ミニバンであることに変わりはないだろう。
また、今回のランキング対象には含まれていないが、軽自動車のハイトワゴン、スーパーハイトワゴンも販売の主力だ。
変化が始まると思われるのは5年後からで、2025年あたりにはトヨタをはじめホンダなども電気自動車に参入し、月間販売台数ベスト10にも電気自動車が入ってくるのではないだろうか。
そして、10年以上先となる2030年代に入ると、登場から15年以上の時間が経った燃料電池車も珍しいクルマではなくなるかもしれない。
ここ5年の大きな変化として予想されるのは、カローラとトヨタのディーラー再編だ。
カローラに関しては、2019年秋に3ナンバーサイズながら日本での使用に配慮した専用ボディのセダンとステーションワゴンが加わる。
現在のカローラスポーツを含めた3ナンバーカローラの仕上がり次第ではプリウスに影響を与える可能性もある。
さらに、しばらく5ナンバーサイズとなる現行のカローラアクシオ&フィールダーも継続販売される見込みとのことで、プリウスへの影響も含めカローラファミリーが販売台数ランキングの順位を上げることは充分考えられる。
また、トヨタのディーラー再編で、今後5年以内にトヨタ全チャネルでトヨタ全車が買えるようになる。
前述のカローラがさらに売れるようになるかもしれないことに加え、ディーラー再編に伴いヴォクシー三兄弟、アルファード&ヴェルファイア、タンク&ルーミーといった兄弟車は、1台に統合されることになるだろう。
例に挙げた兄弟車は合計すると月に1万台規模の販売台数を誇るだけに、統合されると月間販売台数ベスト10のトヨタ車率はさらに増えることが確実だ。
客観的に見ると“令和の人気車”は、トヨタと軽自動車が牽引することになると思うが、日本の自動車業界が華やかになるよう他社にも頑張ってほしいところだ。
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