2005年秋、プレミアムSUVに衝撃的なモデルが登場している。スーパーSUVと言われたポルシェ カイエン ターボを凌ぐ、510psのV8エンジンを搭載するメルセデス・ベンツ ML 63 AMGがデビューしたのだ。AMG社が新世代エンジンとして開発した6.2Lユニットが真っ先にSUVに搭載されたことも話題となった。ここでその超弩級スーパーSUVの登場の詳細を振り返ってみよう。(以下の記事は、Motor Magazine 2005年10月号より)
プレミアムSUVのパワー戦争がさらに激化すること必至
AMG社の開発による新しいV8エンジンがいよいよ量産車に搭載されることになった。
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ボア×ストローク=102.2mm×94.6mm、排気量6208ccのビッグ8は、これまでのAMGの手法とは違って、スーパーチャージャーにもターボチャージャーにも頼らないナチュラルアスピレーションで、最高出力510ps/6800rpm、最大トルク630Nm/5200rpmを絞り出す。
この高出力は可変カムシャフトによるバルブタイミングコントロールやピストンの抵抗を減らすためのスリーブへの鉄炭複合素材によるアークコーティングなどハイテク手法によって可能になったもの。4バルブヘッドを持つ新世代エンジンがついにV8まで及んだことになり、次期V12計画も含め、いよいよメルセデス・ベンツが新時代に突入しつつあることを思い知らされる。
この新エンジンを最初に搭載する市販モデルが今回発表されたML 63 AMGである。本来ならばフラッグシップたるSクラスにまず搭載されるのが自然だが、なぜあえてメルセデス・ベンツはMクラスを選んだのだろうか。
それはずばり、北米市場を闊歩するポルシェ カイエンやBMW X5などを駆逐するためだろう。そして、こうした大排気量エンジンを歓迎するのは北米市場でもあるのだ。
こうして登場したML 63 AMGに組み合わされるトランスミッションは7Gトロニックでダイレクトセレクトと呼ばれるシステムも採用される。もちろんS(スポーツ)、C(コンフォート)、そしてM(マニュアル)のモード変換もコンソール上のスイッチで可能だ。獰猛なパワーは、4WDシステムを介して、通常、フロント40%、リア60%に配分される。
エクステリアは当然ながら「AMGスタイリング」となる。フロントで目を引くのはラバープロテクター付きのオーバーライダーとその両脇にはめ込まれたドライビングライト、そして横長のエアインテークが設けられたバンパースポイラーである。リアエンドには左右2本ずつ合計4本のマフラーが突き出し、パッシングした相手へのお別れサービスも忘れていない。
さらにサイドに回ると、前後に295/45Rサイズの19インチタイヤが新たに用意されたオーバーフェンダーからはみ出さんばかりに押し込まれている。これでも十分でないと感じるオーナーに対して、AMGは295/40R20サイズも用意している。
ML 63 AMGには格段に向上した性能に対処するために、先進のエアサスペンションシステムである「AIRMATIC」をベースとしたAMGスポーツサスペンションが採用されている。ここにはAMGチューンのADS(アダプティブ ダンピング システム)も組み込まれている。ブレーキシステムは前後とも新開発のベンチレーテッドディスクが採用されている。
レザーとアルカンタラから成るインテリアはAMGエクスクルーシブのもので、エレガンスとスポーティネスの組み合わせを強調している。
安全装備はメルセデス・ベンツ製品として現時点で考えうるトップレベルのもので、事故を予想して未然に備える「PRESAFE」、そしてアクティブヘッドレト「NECKPRO」が標準装備されている。
メルセデス・ベンツの発表によれば、ML 63 AMGは0→100km/hをカイエンターボよりも0.6秒速い5秒フラットで加速する。最高速度は250km/hに自主規制されるが、その絶対性能からカイエンターボの270km/hを上回ることは間違いない。
しかもAMGの顧客のかなりがオプションでリミッターを外しているといわれることから、今後アウトバーンでカイエンを追い越すML 63 AMGが多く見られるに違いない。ダッシュボードの正面にある320km/hまで刻まれたスピードメーターはそれを怪しく暗示しているように思える。
ML 63 AMGは2005年10月開催されるフランクフルトモーターショーで世界初公開となる。そしてその後、2006年春にはドイツを中心とするヨーロッパ、そして北米で発売が開始される。東京モーターショーにも出品される予定で、日本発表は2006年秋と予想される。(文:木村好宏/Motor Magazine 2005年10月号より)
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