現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > 【F1チーム代表の現場事情:フェラーリ】試練に直面したバスールが見せた、従来のマラネロとは異なるアプローチ

ここから本文です

【F1チーム代表の現場事情:フェラーリ】試練に直面したバスールが見せた、従来のマラネロとは異なるアプローチ

掲載
【F1チーム代表の現場事情:フェラーリ】試練に直面したバスールが見せた、従来のマラネロとは異なるアプローチ

 大きな責任を担うF1チーム首脳陣は、さまざまな問題に対処しながら毎レースウイークエンドを過ごしている。チームボスひとりひとりのコメントや行動から、直面している問題や彼のキャラクターを知ることができる。今回は、フェラーリのチーム代表フレデリック・バスールに注目した。

─────────────────────────────────

【F1チーム代表の現場事情:アストンマーティン】オーナーとアロンソの高い要求に応え、表彰台を実現させたクラック

 スポーツ界において、フェラーリのチーム代表が課される仕事ほど難しいものはないだろう。歴史的に見ると、伝説の人物となり、崇めたてられるか、失敗し、徹底的に叩かれるかのどちらかなのだ。

 一番最近の例がマッティア・ビノットだ。彼はエンジニアとして非常に高い評価を受け、マラネロで出世していった。何年かかけてフェラーリに間違いなく向上をもたらしたにもかかわらず、昨年、タイトル争いにおいて失速しただけで、職を失ってしまった。

 後任を引き受けたフレデリック・バスールは、ビノットとはかなりタイプが違う。広く尊敬を集める人物ではあるが、外部からフェラーリに入ってきた存在であるため、イタリアメディアからの監視の目が厳しくなった。

 バスールのスタイルは、少なくとも外から見る限りは、これまでのフェラーリとは明らかに異なっている。だが彼の内には激しい競争心と意欲が秘められており、必要とあらば権威を利用して強い態度に出ることをいとわない。その機会が、シーズン序盤から訪れることになった。

 プレシーズン中、バスールは、フェラーリの主な目標のひとつは信頼性の向上であると語っていた。2022年にはパワーユニットが壊れやすかったため、フェラーリはエンジンの出力を落とさざるを得ず、その結果、パフォーマンスが低下してしまった。そのため、パワーユニットのポテンシャルを最大限に発揮できるようになるだけで、大きな前進を成し遂げられると、バスールは確信していた。

 しかし開幕戦バーレーンGPでフェラーリは、予防的措置でシャルル・ルクレール車のパワーユニットに新しいコンポーネントを入れなければならず、さらに、その後のレース中に彼はパワーユニットのトラブルによりリタイア。その結果、第2戦サウジアラビアでルクレールは新しいコントロールエレクトロニクスを入れられ、グリッド降格が確定してしまった。まさに最悪のシーズンスタートだ。

 さらに、開幕戦の翌週、イタリアのメディアは、マラネロから複数のチーム幹部が去る見通しであり、チームの先行きが懸念されると報じた。そうしてフェラーリは、シーズン開始早々、大きなプレッシャーがかかる状況に陥ったのだ。

 バスール代表は、これに対して早急に手を打った。一部のメディアを集めて、リモート記者会見を行い、何が問題だったのか、そしてこの問題を解決するためにチームが何をしているのかをはっきりと説明したのだ。

 第2戦にしてパワーユニットのエレメント交換によるペナルティを受けるというのはよくない状況だが、バスールは、このペナルティの理由を説明することで、少なくとも外部に与える衝撃を和らげることができた。この行動は、フェラーリの今までのやり方とはかけ離れたものだ。これまでのフェラーリは、極力、最後の瞬間まで情報を外に出さないようにする傾向にあった。彼らは、自分たちの状況を明かすことで、ライバルたちにつけこまれるという強迫観念にとらわれてしまっていたのだ。

 サウジアラビア土曜の夜には、バスールは、よりポジティブな見方を示していた。マックス・フェルスタッペンがトラブルによりQ2で消えたとはいえ、ルクレールはポールポジションからわずか0.15秒差のタイムを出し、しかもフェラーリは自分たちはまだペースを隠していると考えていたからだ。ルクレール自身はレッドブルとの差を心配していたが、バスールは、ドライバーが予選2番手に満足しないことをポジティブにとらえていた。

 カルロス・サインツも予選で5番手に入り、バスールは、決勝では優勝争いをすることを目指さなければならないと述べていた。ところが、実際レースでのフェラーリがどうだったかというと、レッドブルやアストンマーティン、さらにはメルセデスすら打ち負かすペースがなく、6位と7位に甘んじなければならなかった。

 レース後、バスールは、「チームのエンジニアに何を言いたいか」という質問に対して、自分たちは自分自身の欠点から目をそらせてはならないと答えた。極めて正直な発言だ。

「自分たち自身をごまかすな、ということだ」とバスール。

「このような状況で最も重要なことは、自分たちがうまくいっているところと間違っているところを知ることだ。自分自身をごまかしてはならない。我々は変わらなければならない。自分たちがどこを間違っているのかを理解し、プッシュしなければならない。口先だけでは、速くなることはできない」

「私にとって、状況は非常に明確だ。マシンのポテンシャルは高いが、レッドブルと比べると十分ではない。なぜなら、毎回マシンから最大限の力を引き出すということができないからだ」

 バスールがフェラーリのボスとして酷評されるのではなく、伝説の存在になるためには、今のオープンさを持ち続けることが重要になってくるだろう。

こんな記事も読まれています

フォードはいったいどこへ向かう!? 「ローンを滞納すると自動でディーラーに帰るクルマ」「ピザの自動配達」に続き「麻薬の運び屋防止装置」を開発していた
フォードはいったいどこへ向かう!? 「ローンを滞納すると自動でディーラーに帰るクルマ」「ピザの自動配達」に続き「麻薬の運び屋防止装置」を開発していた
WEB CARTOP
サンキューメルセデス! マクラーレン、コンストラクター争いのライバルフェラーリ抑えるラスベガスワンツーに感謝
サンキューメルセデス! マクラーレン、コンストラクター争いのライバルフェラーリ抑えるラスベガスワンツーに感謝
motorsport.com 日本版
トヨタ「“5人寝られる”ハイエース!?」公開! オシャな“レザー”&“ウッド”内装が超カッコイイ! 標準ボディ+2段ベッドの“車中泊”モデル「オーゼット グランドバケーション380」お台場で実車展示
トヨタ「“5人寝られる”ハイエース!?」公開! オシャな“レザー”&“ウッド”内装が超カッコイイ! 標準ボディ+2段ベッドの“車中泊”モデル「オーゼット グランドバケーション380」お台場で実車展示
くるまのニュース
普通のバイクのスタイリングが安心感を生む! カワサキの原付二種電動バイク『Ninja e-1』に試乗します~小野木里奈の○○○○○日和~
普通のバイクのスタイリングが安心感を生む! カワサキの原付二種電動バイク『Ninja e-1』に試乗します~小野木里奈の○○○○○日和~
バイクのニュース
ヒョンデのSUV『ツーソン』改良新型、ハイブリッドも設定…インドネシアで発表
ヒョンデのSUV『ツーソン』改良新型、ハイブリッドも設定…インドネシアで発表
レスポンス
ハミルトンが“すべての予測データを超える速さ”で10番手から2位「楽しかったけど、予選の失敗が悔やまれる」
ハミルトンが“すべての予測データを超える速さ”で10番手から2位「楽しかったけど、予選の失敗が悔やまれる」
AUTOSPORT web
メルセデス・ベンツは中国市場の「高級EV」で苦戦! EクラスやSクラスの顧客がファーウェイに奪われている
メルセデス・ベンツは中国市場の「高級EV」で苦戦! EクラスやSクラスの顧客がファーウェイに奪われている
THE EV TIMES
首都高の「激レア風景」12月消滅へ!? 箱崎JCTの「珍しい信号機」ついに撤去決定!「通行方法に変更があります」
首都高の「激レア風景」12月消滅へ!? 箱崎JCTの「珍しい信号機」ついに撤去決定!「通行方法に変更があります」
くるまのニュース
2024スーパーGT最終戦となる第5戦鈴鹿のエントリーリストが発表。一部車両を除きウエイトなし
2024スーパーGT最終戦となる第5戦鈴鹿のエントリーリストが発表。一部車両を除きウエイトなし
AUTOSPORT web
デザインスケッチを大量公開! アバルトの最新EV『600e』に息づく「伝統と革新」
デザインスケッチを大量公開! アバルトの最新EV『600e』に息づく「伝統と革新」
レスポンス
ボディタイプやパワートレイン、インフォテイメントなど、その時代を映す鏡となってきたラグジュアリーカーの今昔物語
ボディタイプやパワートレイン、インフォテイメントなど、その時代を映す鏡となってきたラグジュアリーカーの今昔物語
LE VOLANT CARSMEET WEB
スズキ「新型カクカクSUV」に反響多数! 全長4m以下のスクエアボディの5ドア仕様!? 正規販売待ち遠しい「ジムニー」に寄せられる声とは
スズキ「新型カクカクSUV」に反響多数! 全長4m以下のスクエアボディの5ドア仕様!? 正規販売待ち遠しい「ジムニー」に寄せられる声とは
くるまのニュース
ハセガワモビリティがYADEA最新モデル「K2」を表参道ショールームに展示! EICMA2024で公開された高性能電動バイクを日本で披露
ハセガワモビリティがYADEA最新モデル「K2」を表参道ショールームに展示! EICMA2024で公開された高性能電動バイクを日本で披露
バイクのニュース
カーナビ 自動車用板ガラス カーエアコン…… まだあるぞ 日本製が世界でトップシェアを誇っている分野8選【10年前の再録記事プレイバック】
カーナビ 自動車用板ガラス カーエアコン…… まだあるぞ 日本製が世界でトップシェアを誇っている分野8選【10年前の再録記事プレイバック】
ベストカーWeb
【MotoGP】ヤマハ、バルセロナテストで投入フロントウイングには大きな変化。2025年に向け良い叩き台に?
【MotoGP】ヤマハ、バルセロナテストで投入フロントウイングには大きな変化。2025年に向け良い叩き台に?
motorsport.com 日本版
元国王陛下のブガッティ! 「インターナショナル・ヒストリック・モータリング・アワード」で「カー・オブ・ザ・イヤー」受賞
元国王陛下のブガッティ! 「インターナショナル・ヒストリック・モータリング・アワード」で「カー・オブ・ザ・イヤー」受賞
LE VOLANT CARSMEET WEB
「マンタイ レーシング」より「ポルシェ911GT3 RS(992)」用ハイパフォーマンスキットが登場!280km/hで1tのダウンフォースを発生
「マンタイ レーシング」より「ポルシェ911GT3 RS(992)」用ハイパフォーマンスキットが登場!280km/hで1tのダウンフォースを発生
Webモーターマガジン
市川團十郎がF1日本GP公式アンバサダーに就任。決勝前セレモニーで歌舞伎舞踊を披露へ
市川團十郎がF1日本GP公式アンバサダーに就任。決勝前セレモニーで歌舞伎舞踊を披露へ
AUTOSPORT web

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村