2019年12月に発売された、大型多人数乗車ミニバン、グランエース。トヨタが明らかにした初期受注台数は2020年1月末までの約1カ月間で950台。年間の販売計画台数(600台)を上回るペースとなっている。
登録台数は2019年12月が40台、2020年1月が101台と、一見売れていないように見えるが、年間計画販売台数の600台からすると、順調のように見える。
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さて、そんなグランエースだが、はたしてどんなクルマなのか? 今回は2列目、3列目が超VIPシートの6人乗り仕様、そして4列8人乗り仕様をモータージャーナリストの渡辺陽一郎氏が徹底チェック!
文/渡辺陽一郎
写真/平野学 TOYOTA
初出/ベストカー2020年3月10日号
【画像ギャラリー】アルファードオーナーはグランエースを選ぶか? グランエースvsアルファード・サイズ比較
全長5300mm、全幅1970mmという威風堂々としたサイズ
ボディサイズはグランエースが全長5300×全幅1970×全高1990mm、ホイールベースが3210mm。一方、アルファードは全長4945×全幅1850×全高1950mm、ホイールベースが3000mm。左のアルファードが小さく見える
まさに威風堂々としたグランエースのフォルム。全幅が1970mmだけに全幅が異様に大きく感じる
3列6人乗り仕様の後席に乗ると「来るしゅうない」と言いたくなるほど超VIPカーに乗っている感覚
グランエースに設定されるシート配置は2-2-2の6人乗りと2-2-2-2の4列シート8人乗りの2タイプ。6人乗りの2列目、3列目シートはまったく同じ仕様のプレミアムシートで、左右独立でオットマンつき。背もたれは最大72°リクライニング可能。価格は650万円
8人乗り仕様の2列目は6人乗り仕様と同じシートを採用。3列目はオットマンやアームレスト、電動リクライニングが省略されるが座面や背もたれは大きく座り心地は2列目と大差ない。最後方の4列目はアル/ヴェルの2列目ベンチシート(8人乗りモデル)とほぼ同様のサイズだという。価格は620万円
アルファードの7人乗りは全体の86%を占めるという
グランエースは全長が5300mm、全幅が1970mmだから、横に並べたアルファードがノアのように小さく見える。ベース車は後輪駆動の海外版ハイエースで、駆動系をカバーできる位置まで床を高めた。
床面地上高は645mmに達して、アル/ヴェルよりも210mm高い。車内に入ると周囲を見降ろす感覚だ。
グレードは3列シートで6人乗りのプレミアムと、4列で8人乗りのG。主力は販売総数の70%を占めるプレミアムで、2/3列目にアル/ヴェルと同様のエグゼクティブパワーシートを装着。
両側に固定されたアームレストを備え、ふくらはぎを支える電動オットマンも付く。座り心地は適度に柔軟でとても快適だ。
特に6人乗り仕様だと「運転手」的な雰囲気になりがちだがグランエースはドライバーにも優しい。フロント2席は座面のクッションも厚く座り心地に優れ、長距離ドライブも快適そうだ。縦置きパワートレーンのFRのため、センター部には張り出しがあるが、全幅の大きなクルマだから特に気になることはない。運転をすると、ボディサイズの大きさや約2.7トンという車重を感じさせない素直な操縦性に感心させられる。パーキングブレーキは電動ではなくレバー式
足元空間も広く、身長170cmの6名が乗車して、2/3列目に座る乗員の膝先には握りコブシが5つ収まる。センチュリーの後席でも3つ半だから相当に広い。
4列シートの8人乗りは、1人分の足元空間が狭く、膝先の余裕は握りコブシひとつぶんだ。8名乗車は可能だが、各シートのスライド位置を細かく調節する手間を要する。
1/2列目の間隔も狭いから、スライドドアを使った乗降性もよくない。特に4列目の乗員は、中央の狭い通路を縫うように通って車内を移動するから、事故の時などは降車に時間を要すると思えた。
リアゲートを車内から開ける非常用の工夫がほしい。2列目はプレミアムと同じエグゼクティブパワーシートだが、3列目はヴォクシー系3姉妹車の2列目と同じキャプテンシートでオットマンは付かない。
4列目はシンプルなベンチシートだが、アル/ヴェルの最後列よりは快適。左右跳ね上げ式ではなく、座面を持ち上げて前方へスライドさせる方式だから、床と座面の間隔が充分に確保されて柔軟性もある。荷室面積を広げる時は不利だが、シートとしては快適だ。
2列目、3列目は豪華だが、最後方の4列目はアル/ヴェルの2列目ベンチシート(8人乗り)とほぼ同様のサイズだという。4列目シートは「広くはない」といった印象
海外版ハイエースの車両総重量は4トン近いから、モノコック構造のボディは剛性を入念に高めた。
ボディ底面に前後方向に配置された基本骨格は直線的な形状だ。剛性確保が難しいドアの開口部には構造用接着剤も使う。前後のウィンドウも接着剤の工夫で剛性の向上に活用する。
デカすぎて運転がしづらくないか?
車重が2740kg~2770kgのため、鈍重のような印象だが運転が難しい印象は受けなかったという
車両重量は2700kgを超えるが、2.8Lクリーンディーゼルターボはパワー不足を感じない。
1500回転以下でもディーゼルターボに多い駆動力の落ち込みはなく、3900回転まで滑らかに回る。車内はとても静かで、ディーゼルを意識させない。
ボディが重く高重心だから、一般的には操舵感を鈍く設定して安定を図るが、グランエースは自然に回り込む。
リアサスのスプリングを海外版ハイエースのリーフからコイルに変えた効果もあり、挙動の変化は穏やか。前輪の最大切れ角は45度に達して、最小回転半径を5.6mに抑えた。
専用開発の高剛性リアサスペンション。開発を担当したトヨタ車体の開発陣が徹底的にこだわったのが上質な乗り心地と乗用車に近い操縦性だという。8人乗ると3210kgにもなる重たい車体に対応するため、アンダーボディはサイドメンバーをストレートに通す構造とするとともに、アッパーボディは各ピラーをアンダーボディと結合する環状骨格構造を採用。リアサスはトレーリングアーム式として強靱な車軸式ながら上質な乗り心地を実現
大柄でも運転が難しい印象はない。そして乗り心地は柔軟だ。指定空気圧が前輪300kPa、後輪350kPaと高く、低速域では微振動を生じるが速度が高まると快適になる。
アル/ヴェルは豪華なミニバンだが、3列目は荷室に使う格納機能を重視したから、1/2列目に比べて座り心地が大幅に下がる。
6名の快適な移動には2台の車両が必要だ。その点でグランエースプレミアムは、2/3列目はVIP待遇で1列目の座り心地もいい。6名の移動は超絶的に快適大満足だ。
顔付きに関しては、オラオラ度はアルファードに軍配は上がるが、威風堂々とした佇まい、それでいて上品さも併せ持つ面構えに圧倒される。新しい需要を開拓するだろう。
搭載されるエンジンは直4、2.8Lディーゼルターボ。最高出力は152ps、46.1kgmの最大トルクを1600rpmで発揮。重量級ボディをしっかりと走らせる実力だ
価格はアルファードハイブリッドGよりも約100万円ちょっと高いがこれをどう見るか?
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