長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。今回は日本GPの週末を振り返る。
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【全ドライバー独自採点/F1第16戦】超一流の走りで週末を支配したサインツ、バトルの能力を失ったペレス
ドライバーのパフォーマンスを評価するのに鈴鹿ほど適したサーキットはない。今年の日本GPでは、多くのドライバーがシーズンここまでで最高のパフォーマンスを披露した。
■評価 10/10:いつもの優位を取り戻したフェルスタッペン
マックス・フェルスタッペン(レッドブル):予選1番手/決勝1位
ランド・ノリス(マクラーレン):予選3番手/決勝2位
シャルル・ルクレール(フェラーリ):予選4番手/決勝4位
シンガポールで大敗した後、それまで示してきた優位を再確認する決意で日本に到着したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)は、FP1の開始直後から他の19人のドライバーに全くチャンスを与えなかった。
使命感に燃えたフェルスタッペンは、予選でライバルたちを粉砕、彼のQ3最後のラップは、週末ベストのラップと言っていいだろう。週末のなかで犯した唯一の小さなミスは、決勝スタート時、マクラーレンの2台にポジションを奪われそうになったことだった。しかしフェルスタッペンはランド・ノリスに対して強固なディフェンスをしてリードを守り、それ以降は余裕を持って周回を重ね、勝利を手にした。
ランド・ノリス(マクラーレン)は、2戦連続で2位を獲得した。シンガポールではメルセデス勢を苦労しながら抑え込まなければならなかったが、今回、懸念すべきライバルはチームメイトのオスカー・ピアストリのみだった。予選で僅差でピアストリに敗れたノリスは、スタートで一瞬首位に立ち、チームメイトを抜くと、タイヤを良い状態に保ちながら、常にルーキーのピアストリより速いペースで走行した。ノリスが初優勝を挙げるのは時間の問題と思えるようなレースだった。
サマーブレイク以降、シャルル・ルクレール(フェラーリ)はSF-23に苦労していたが、ドライバーズサーキットの鈴鹿で、彼は見事な走りを見せた。彼の予選Q3ラップは、マシンを考えると、フェルスタッペンに匹敵するほどの出来で、チームすら予想していなかったほど大きなパフォーマンスをマシンから引き出した。レースでは、ミスを一切犯さず、4番手を走行。1ストップのジョージ・ラッセルに対するルクレールのオーバーテイクは、レースのハイライトのひとつといっていいだろう。
■評価 9/10:新人らしからぬパフォーマンスで初表彰台のピアストリ
オスカー・ピアストリ(マクラーレン):予選2番手/決勝3位
オスカー・ピアストリ(マクラーレン)がルーキーだということを、時々忘れてしまいそうになる。彼のパフォーマンスはそれほど傑出しているのだ。鈴鹿を走るのが初めてだったピアストリは、新コースへのいつものアプローチとして、序盤は慎重に始め、徐々にペースを積み重ねていき、予選でノリスに勝ってみせた。
決勝では、好スタートでフェルスタッペンに並びかけたが、2速でホイールスピンした後、ターン1でのインシデントのリスクを避けて、3番手に下がることを選択した。若いのに非常に成熟した走りをする。その後、タイヤマネジメントの面でノリスに及ばなかったものの、表彰台を失う危険がないだけの十分なペースを発揮した。
■評価 8/10:堅実な仕事でフェラーリに貢献したサインツ
カルロス・サインツ(フェラーリ):予選6番手/決勝6位
ルイス・ハミルトン(メルセデス):予選7番手/決勝5位
カルロス・サインツ(フェラーリ)は、鈴鹿ではルクレールのスピードに及ばなかったものの、それでも非常に堅実なパフォーマンスを発揮し、チームメイトをサポートし、レースではメルセデスの1台を破った。新しいセットアップ・ソリューションを選んだ賭けは報われず、ルクレールのセットアップに戻ることを余儀なくされたが、冷静さを保ち、チームのために良い仕事をした。
厳しい週末が続いたが、今回、ルイス・ハミルトン(メルセデス)は、チームメイトより速さで勝っていた。とはいえ、W14は予選で4番目の速さしか持たなかったため、7番手は彼に可能な最大限の結果だった。
レース中、らしくないミスを犯したが、スタート直後にセルジオ・ペレスとの接触でダメージを受けたマシンで力強いパフォーマンスを発揮した。ジョージ・ラッセルから攻撃された直後に抜き返した動きは、ハミルトンの競争心が年齢の影響を一切受けていないことを示している。ランキング3位のハミルトンは、かなり困難かもしれないが、ペレスを抜いて2位に上がることを目標に、最後まで攻めていくことだろう。
■評価 7/10:予選で活躍も、入賞のチャンスを失った角田裕毅
角田裕毅(アルファタウリ):予選9番手/決勝12位
リアム・ローソン(アルファタウリ):予選11番手/決勝11位
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン):予選10番手/決勝8位
ピエール・ガスリー(アルピーヌ):予選12番手/決勝10位
角田裕毅(アルファタウリ)はホームグランプリで少なくとも1ポイントを獲得するに値するパフォーマンスを見せていたものの、今回も運は彼に味方することはなかった。
予選で9番手という素晴らしい結果を出したが、決勝スタートでアロンソに抜かれ、前方で起きたペレスとハミルトンのインシデントを避けなければならなかったことで、ローソンの後ろに下がった。その後、ファーストスティントとラストスティントでローソンのすぐ後ろを走らなければならず、角田は苛立ちを募らせた。今回の角田は、1周目のポジションダウンにより、9位入賞に挑戦する機会を失ったといえよう。
来年リザーブドライバーに再び降格されることが決まったリアム・ローソン(アルファタウリ)は、自分の価値を証明したいという強い気持ちを持ってこのグランプリを戦った。決勝日には、チームより自分を優先して戦っていたようにも見える。それでもアルピーヌ勢と戦うだけの速さがなく、ポイントには届かなかった。ただし、ローソンは週末を通して、角田とほぼ互角のパフォーマンスを披露し、ひとつもミスすることなく、堅実な結果を出したということは、認めるべきだ。
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は再び、ランキング3位争いのライバルであるハミルトンに敗れたが、競争力が低下したマシンで最善を尽くした。シンガポールと同様に、AMR23を予選Q3にまで持っていった。決勝オープニングラップで素晴らしい動きを見せて順位を上げた後、チームはアルファタウリ勢にアンダーカットされることを恐れて早めのピットストップを実行。その後、アロンソは厳しい戦いに直面したが、ピエール・ガスリーを抑えて8位を獲得した。
ピエール・ガスリー(アルピーヌ)は、週末を通してチームメイトよりも速かった。レースの最後に9番手をエステバン・オコンに返すようチームから指示を受けて激怒したものの、最終的にチームの命令に従った。その強い自制心は称賛に値するだろう。
■評価 6/10:ペース不足を補うために最善を尽くしたラッセル
ジョージ・ラッセル(メルセデス):予選8番手/決勝7位
エステバン・オコン(アルピーヌ):予選14番手/決勝9位
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ):予選13番手/決勝リタイア
ケビン・マグヌッセン(ハース):予選15番手/決勝15位
予選でチームメイトにかなわなかったジョージ・ラッセル(メルセデス)は、戦略上の優れた判断とホイール・トゥ・ホイールのスキルによって、ペース不足を補うために最善を尽くした。ターン1までの間にペレスとハミルトンの接触により大きな恩恵を受けたラッセルは、シケインでハミルトンにアタック。しかし次のコーナーで抜き返された。1ストップで走るという戦略は、途中までは良い結果を生むようにもみえた。しかし、新しいタイヤで追いついてくるサインツを警戒したメルセデスが、2台揃って抜かれることを警戒し、ハミルトンを前に出すことを決めた。その後、ラッセルはポジションを守るすべなく、7位に落ちた。
エステバン・オコン(アルピーヌ)は決勝1周目にミスをし、接触を引き起こした。右側が空いているにもかかわらず、バルテリ・ボッタスをアレクサンダー・アルボンの方へと押しやったのだ。オコンは1周目の終わりに修理のためにピットストップをし、その後、1回のみのピットストップで走り切り、すばらしいタイヤマネジメントにより、2ポイントをつかんだ。
アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は、決勝1周目のインシデントによって、入賞の望みが絶たれた。空中に飛び上がるほどのクラッシュでマシンは大きなダメージを負ったのだ。アルボンは予選で13番手を獲得するという素晴らしい仕事をした後、1点か2点を狙っていたに違いなかった。
ケビン・マグヌッセン(ハース)にとって週末のハイライトは、予選15番手を獲得したことだった。しかしタイヤのデグラデーションが通常より高い鈴鹿で、ハースVF-23がポイント争いをするのは難しいことは、最初から分かっていた。12周目にはペレスにヒットされてスピン、最終的に最下位完走という結果に終わったが、マグヌッセンにはもっと上位の結果がふさわしかった。
■評価 5/10:不運に見舞われ続けたアルファロメオ勢
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ):予選16番手/決勝リタイア
ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース):予選18番手/決勝14位
周冠宇(アルファロメオ):予選19番手/決勝13位
バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)は、予選では赤旗のためにアタックを断念せざるを得ず、その前のラップではセクター1が良くなかった(断念したラップより0.2秒遅かった)ため、Q1敗退という結果に終わった。入賞を狙うのが厳しいグリッドからスタート。ソフトタイヤですぐさま2つ順位を上げたボッタスだが、オコンからアルボンの方へとプッシュされ、マシンがダメージを負ったため、修理のためにすぐにピットに入らなければならなかった。そこから順位を上げていこうとしていたボッタスは、ヘアピンでローガン・サージェントにヒットされて、結局、リタイアせざるを得なかった。
ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)は予選でチームメイトに大差をつけられたものの、決勝1周目にポジションを稼いだ。ライバルたちをアンダーカットするため、8周目にピットインし、その目的は果たしたが、その後はタイヤの劣化で順位を落とすことになり、事故に遭ったマグヌッセンのひとつ前でレースを終えた。
周冠宇(アルファロメオ)にとってQ1の赤旗は不運だったが、そもそも週末を通して、彼はチームメイトほどの速さはなかった。決勝1周目のターン1までの間にデブリを踏み、マシンの修理のために早々にピットインしなければならなかった。その後、彼はポイント争いに一切加わることができないまま、レースを終えた。
■評価 3/10:またもや予選Q1で敗退したストロール
ランス・ストロール(アストンマーティン):予選17番手/決勝リタイア
ランス・ストロール(アストンマーティン)は今回も予選Q1で敗退。アストンマーティンは1台のマシンでポイントを狙うしかない状況が続いている。決勝1周目にはトラブルを避けて12番手に浮上したものの、それ以上ポジションを上げられずにいるうちに、チームがリヤウイングの破損に気付き、ストロールをリタイヤさせた。
■評価 1/10:屈辱的な週末を過ごしたペレス
セルジオ・ペレス(レッドブル):予選5番手/決勝リタイア
ローガン・サージェント(ウイリアムズ):予選20番手/決勝リタイア
セルジオ・ペレス(レッドブル)は鈴鹿でも、再び、忘れてしまいたい週末を過ごした。チームメイトが圧倒的な強さを見せるなか、ペレスは予選で0.8秒も遅い5番手にとどまった。
スタートの蹴り出しが悪かったことで、ターン1の手前でサインツとハミルトンの間にはさまれてしまった時、ペレスは、いったん引くのではなく、メルセデスを芝生の方へと押し出す行動に出た。修理のためにピットイン、しかしセーフティカー出動中の違反で不必要なペナルティを受け、さらにマグヌッセンに対して、100パーセント接触は避けられないようなやり方でアタックし、実際に接触してマシンを壊し、後にガレージへとマシンを戻した。ところがそれから数10分たった後、ふたつめのペナルティを消化するためだけに1周コースに出るという、屈辱的な形で、週末を終えた。
ローガン・サージェント(ウイリアムズ)の日本GPの週末について詳しく語るのは、あまり楽しいことではない。自分のF1キャリアを継続させるために戦っているドライバーが、予選Q1でタイムを出す前にクラッシュしてしまったり、決勝序盤に追い越された際に他車にヒットするなどということは、絶対にやるべきではない。チーム代表ジェームズ・ボウルズは、サージェントが2024年に残れるよう力を尽くしているが、サージェント自身がそれを難しくさせている。
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