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ランドローバー・ディスカバリーで行く JLRスロバキア新工場への旅(前編)

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ランドローバー・ディスカバリーで行く JLRスロバキア新工場への旅(前編)

もくじ

前編
―JLR スロバキアの地に新工場
―なぜ、スロバキアを選んだか?
―今回の旅のプラン その相棒
―ディスカバリー 高価な理由
―高速道路で試すディスカバリー

ジャガーのチーフデザイナー、イアン・カラムに聞く E-PACE誕生の「舞台裏」

後編
―ディスカバリー オフロードの実力(8月6日公開予定)
―いよいよJLRスロバキア工場へ(8月6日公開予定)
―2000kmを走破しても愛おしい(8月6日公開予定)
―ヘリコプターを使った自動車工場の造り方(8月6日公開予定)

JLR スロバキアの地に新工場

648のテーブルリフト(チェリー・ピッカー、アクセス・プラットフォーム、好きな様に呼んだらよい)が、スロバキアのニトラに建設中の、ジャガー・ランドローバーの工場となる場所に集められた。

650でもなく、600でもない、決して647でもない。正確に648あり、それには理由があるのだ。

この光景には圧倒された。自動車工場建設の関係者ならともかく、少なくともわたしにはそう感じた。

この記事を書いている時点で、スロバキアの夏に4000人の作業員が、去年の今頃は更地だったこの場所に自動車工場を建設している。

圧倒的である。それはここが自動車工場であるからだ。訪れるのは今回が始めてではないが、これほど感銘を受けたことはない。

しかし、一旦完成してしまったら、同じことが繰り返されるだけで、たいしたことではない。鉄やプラスティックを搬入して、魔法の工程を経て、然るべきクルマができあがる。結末がいつも同じマンガの様に、同じ事が繰り返される。想像するに難しいことではない。

けれど、建設中の自動車工場となると話が変わってくる。

ジャガー・ランドローバーは、なぜこの地を選んだのだろう?


なぜ、スロバキアを選んだか?

スロバキア政府は、メキシコではなく、この地に新しい工場を建てるのなら、£125百万(182億円)を贈呈しようと言っている。£10億(1452億円)の工場建設の残りの費用を考えると魅力的だ。

フォルクスワーゲン、PSAグループ、キアは、既にスロバキアで生産を開始している事を考えると、理屈に合わない決断ではないのである。

工場見学に先立つこと3日間、2000kmを越える距離を、スロバキアで唯一生産される予定の、ランドローバー・ディスカバリーのハンドルを握ることになった。

ディスカバリーと共に旅をするのには、3つの理由がある。ランドローバーの最新モデルであり、われわれも以前テストをしているが、それは主にオフロードで行われ、この星に存在する最も走破性に長けたクルマの一台であると結論付けたが、長距離のオンロードを走ったことはなかったのだ。

ロンドンからニトラまで、高速道路で飛ばして、街中で肩の狭い思いをして、もちろん、オフロードでも酷使してみたかった。

プランを企ててみた。


今回の旅のプラン その相棒

フランスは好きな国だが、ベルギーに素早く移って、ドイツへ駒を進めて、心置きなくアクセルを踏んで、街中の使い勝手も確かめながら、オフロードの走破性を試すことができる良い場所を探そうと思った。

そして、フォトグラファーのルークと、多忙な月曜日にロンドンの事務所で打ち合わせに臨んだ。彼もまたプランを持っていた。フランスで数日過ごし、フランスの街並みを撮影して、それが満足できた後、スロバキアへ出発というものである。

わたしは反論はせずにそれに従った。古株のアート・エディターが昔言っていたことを思い出したからである。ライターは文章を書くが、写真は撮れない。フォトグラファーに従うほうが、美しいコンテンツになるのである。

テスト車は、わたしが過去に試乗した仕様ではない。ランドローバーのひとびとは、240psの馬力と51kg-mのトルクを1500rpmから発生する、2.0ℓ4気筒ディーゼルエンジンがあれば、2230kmの道を、ディスカバリーは快適に走るという。重いものを牽引するのでなければ、3.0ℓV6は考えなくていいと。

テスト車の仕様は、HSEラグジュアリーである。この4気筒のSUVは、£62,695(913万円)で販売されるが、牽引フック(13万円)、メタリックペイント(12万円)等のオプションを装備すれば、£74,355(1083万円)のクルマに仕上がる。

ちょっと高いけれど、その理由はなぜだろう?


ディスカバリー 高価な理由

高騰の理由は、このディスカバリーをレンジローバーらしくみせようとしているからだろう。少なくともフロントからはそう見える。リアは、クラシカルなデザインのディスカバリー3/4を思わせるデザインである。

インテリアの素材は良質であるし、インフォテインメントは、BMWのiDriveの域には達していないが、相当改善している。

この距離ならば本来なら2週間かけて行くところを、このクルマは、ナンシーへの旅を買い物をするかのようにこなす。エンジン音は室内にほとんど届かず、風切音やロードノイズも遮断されている。

ナンシーは、素敵であると同時に、込み入った場所でもある。この街で、このクルマが、狭い場所へ進入したり、どこでも駐車ができるかも試してみたかった。

大きなウインドウ、低いサッシ、大きなミラー。これらは全長4.97m、全幅2.22mのクルマの大きな助けになる。バックモニターは、どこを見ているか困惑することもしばしばであるし、ディスカバリー4の降下式のリアウインドウは、それほど役には立たないと思うが、ほかの大きなSUVと比べて、軽快に駆け抜けることができる。

バーデン・バーデンもよいところで、素敵だ。B500号線は、ワインディングが多くて楽しい道である。ここでは、ディスカバリーの高速巡航性を試してみたかった。それは、ドイツ車はこの点に関してすこぶる優秀であるからである。

193km/hに達するまで踏み込んでみた。


高速道路で試すディスカバリー

高速でコーナーを曲がると、オンロード寄りに躾けられたアウディQ7やBMW X5と比べて、安定性に劣るものの、2.0ディスカバリーは驚くほどに俊足である。

支払いにそれ程の差がないなら、わたしなら迷わずV6を選ぶが、そうでなくてもこの加速には納得するであろう。

グロースグロックナー・アルプス山岳道路の入り口に付いた頃には時計は、夜の8時30分を指していた。「テストをしにきたのか?」ブースの係員が尋ねる。ここに来るクルマのことはお見通しといった感じだが、それを見抜く事が彼の楽しみのようだ。

特定の英国のナンバープレートを付けた新型ディスカバリーが何者であるかを、彼はよく知っていた。グロースグロックナーは、新型や偽装をしたテストカーがところ狭しとテストをしていたからである。

われわれがそこに着いた時には、多くのテストカーは、その日の仕事を終えたようだった。つまり、道は空いている。しかし、雷雨が横切り、日が落ち、すっかり空は暗くなってしまった。

われわれは夜が明けると同時に出発した。

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