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かつてはビートにMR2……スーパーカーじゃないお手頃ミッドシップカーはなぜ消えた?

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かつてはビートにMR2……スーパーカーじゃないお手頃ミッドシップカーはなぜ消えた?

 この記事をまとめると

■ミッドシップ・レイアウトは運動性に優れている

計画どおり30台の限定発売だったら歴史が変わっていた!? 大成功した「ランボルギーニ・ミウラ」と「フェラーリ365GT4 BB」という2台のミッドシップスーパーカー

■ミッドシップ・レイアウトは居住空間の面で厳しい

■ユーザーのニーズがお手軽ミッドシップカーを困窮させてしまった

 ミッドシップ・レイアウトのメリット&デメリットを再確認

たとえばふたり、あるいは4~5人が乗るクルマのパッケージングを考えるとしましょう。ある大きさの床スペースを設定し、前方にペダルを配置してその上にメーターパネル(真横にダッシュボード)を置いてステアリングを取り付け、それらに対面した場所にシートをふたつ並べればコクピットが完成。その後ろに椅子をふたつか3つ並べれば後席も含めた「居住空間」ができあがります。

 あとは(いや、実際には先に考えるんですけどね)前後のタイヤをどこに置き、エンジンやトランスミッションなどをどのようにレイアウトするかで、そのクルマのキャラクター(=特異性)が決定します。

 世の中の大半のクルマのように前輪の間だと居住空間の前方に置いて前輪を駆動させればFF車ですし、後輪を駆動させればFR車になります。一方、ポルシェ911のように居住空間の後方に置いて後輪を駆動させることもできます。いずれにせよ、快適な居住空間を確保したパッケージングと言えるでしょう。

 ところが、エンジンやトランスミッションを前後輪の間に搭載するミッドシップ・レイアウトというのもあります。エンジン&トランスミッションという重くてデカいパーツを車体中央に積むため、ミッドシップカーは高いヨーゲインを有することができます。すなわち、クルマがエンジン&トランスミッションを中心に、コマのようにくるくる向きを変えることができるので、コーナーリング性能がアップするのです。

 これがミッドシップカーの最大のメリットであり、だからこそレーシングマシンやラリーカーに用いられるレイアウトなのです。

 しかし、ミッドシップカーにはデメリットもあります。重くてデカい物を車体中央に置くわけですから、居住空間が犠牲になるのは当然。ですから、ほとんどのミッドシップカーは前席のみの2シーターです(いや、4~5席の後ろにエンジンを積んでもいいんですけど、その分だけホイールベースが長くなり、ダックスフントのような胴長なクルマになってしまいますよ)。

 コーナーリング性能を高めるためにはホイールベースが短いほうが良いので、エンジンに前方へと追いやられたコクピットのふたりは非常に窮屈になってしまいます。

 かように「運動性」と「快適性」のせめぎ合いが、ミッドシップカーの辛いところなのです。然るにミッドシップカーという娯楽性の高いクルマを買う世の中の富裕層たちは、「いやいやいや、ミッドシップという特別なスポーツカーなんだから大排気量を積んだハイパフォーマンスは当然。そいつを快適かつラグジュアリーに運転したいもんね! そうそう、ゴルフにも行きたいから、よろしくね!!」と要望。

 かくして昨今のミッドシップスポーツカーは、デカくて重くて、しかも超ハイプライスになってしまったのです。

 ミッドシップカーの顧客のニーズが本質を変えた!?

「高いヨーゲインを有することによる優れたコーナーリング性能」というミッドシップスポーツカーならではのスポーツドライビングを純粋に楽しみたいなら、なにもデカいエンジンを積まなくてもいいし、ましてや広くて豪華なインテリアもゴルフバッグが入るトランクスペースも必要ないのです。

 コンパクトなボディ中央に必要十分なパワーを発揮する効率的なエンジンを搭載。ボディ四隅ギリギリにタイヤを配置し、フロント&リヤオーバーハングを切り詰めて、クルマの慣性モーメントをできるだけ軽減。そうすれば、ドライバーとパッセンジャーは適度にタイトなコクピットに座って、小気味の良いスポーツドライビングを気軽に楽しむことができるのです。

 そうしたミッドシップスポーツカーの本質を、日本のクルマメーカーは1980~90年代に具現化していたのです。例えばトヨタMR2、あるいはホンダ・ビートです。

 トヨタMR2(初代)は、トヨタ自動車が1984年から1999年まで製造販売していたミッドシップスポーツカーです。3950×1665×1250mmというコンパクトなボディ(ホイールベースは2320mm、車両重量は最大1120kg)に、130馬力を発揮する1.6リッターの直列4気筒エンジンを搭載(83馬力の1.5リッターもあり)。

 デビュー2年後のマイナーチェンジではスーパーチャージャーを搭載してパワーアップを図りますが、ボディサイズはそのままに、車名の『Midship Runabout 2seater(ミッドシップ・ランナバウト・2シーター)』の略どおりに、当時の若者に向けて「キビキビと軽快な走り」を与えたのでした。価格は139万5000円~と、かな~りお手軽でしたっけ。

 その後、1989年にフルモデルチェンジして2代目が登場しますが、ボディサイズもエンジンも価格もひとまわりグレードアップしただけで、まだまだお手頃感のあるミッドシップスポーツカーでした。

 で、1999年に後継モデルとなる小型ミッドシップオープン2シーター、MR-Sが登場。ミッドシップの運動特性を活かそうと、ボディサイズを初代MR2と同等に縮小しつつフロントとリヤのオーバーハングをギリギリまで切り詰めたフォルムは、かなり個性的なオーラを放っておりました。

 一方、ホンダ・ビートは本田技研工業が1991年から1996年にかけて製造・販売した、軽自動車規格のオープン型ミッドシップスポーツカーです。「軽」ですから、ボディサイズは3295×1395×1175mmと非常にコンパクト(ホイールベースは2280mm、車両重量は760kg)。

 価格は138万8000円~と軽自動車にしては割高でしたが、気軽にピュアスポーツドライビングを楽しむには十分に手が届くプライス感でしたっけ。

 ……という具合に、日本が世界に……時代を超えて誇れるミッドシップスポーツカーを紹介しましたが、この2台には決定的な弱点があるのです。それは……、ミッドシップスポーツカーとしてはあまり格好良くないこと! いや、「カッコいい」「カッコ悪い」なんてのはあくまでも主観の問題ですから、クルマの評価の基準にならないのは重々承知しております。でも、ヨーロッパのスポーツカーブランドがミッドシップスポーツカーを作るにあたって、長年採用してきたデザインの手法とは、MR2もビートもまったく異なっているのは確かです。

 ヨーロッパのカーデザイナー(とくにピニンファリーナ!?)は、ミッドシップスポーツカーの屋根をできる限り低く設定し、それを支えるピラーをできる限り倒して、そのクルマをなるべく低く平べったく見せたのです。そして、フロントとリヤのオーバーハングを前後に伸ばしつつ突んがらせ、先端からルーフを通ってリヤへ続くラインを流麗にまとめたのです。そうしてできあがったミッドシップスポーツカーは美しく、それでいてダイナミックなフォルムで見る人を魅了しました。

 ところが、MR2もビートも屋根はスポーツカーにしてはそこそこ高く、ピラーもそこそこ立っています。そして、前後のオーバーハングはバッサリと切り詰められているので、ボディの寸詰まり感が強調されちゃうって感じ。フェラーリやランボルギーニといった超ラグジュアリー・スポーツカーのフォルムとは、まるっきり違うのは明らか!

 どうしてこんなカタチになったかというと、トヨタとホンダのカーデザイナーが運動性を高めようと真面目に考え、同時にスポーツカーなのに居住性をちょっとでも良くしようと真面目に取り組んでしまったから。

 慣性モーメントを軽減しようとオーバーハングを切り詰めようとせず、ピニンファリーナみたいに鼻もお尻もぐい~んと伸ばせば流麗なシルエットになったんです。居住性を良くしようと中途半端にルーフを高くピラーを立てずに、ピニンファリーナを見習って屋根を低くピラーを寝かせれば、平べったくてカッコいいスポーツカーに見えたんです。なんたってスポーツカーにおけるクルマ作りの項目で妥協していいのは、「居住性」なんですから。

 また、スポーツカーはカッコよく見えなければいけないというのも真理なので、前と後ろが長く鋭いほうがいいんです。

 つまるところ、ここ最近リーズナブルでお気軽なミッドシップカーが出てこないのは、どうにもこうにもユーザーのニーズが原因だとしか思えません。ミッドシップスポーツカーが欲しがる富裕層は、もっと豪華でより高価な超弩級スーパーカーを評価しますし……。そもそも庶民のニーズはミッドシップカーよりもお手頃なミニバンかSUVに傾いているでしょうし……。いや、航続距離の長いBEVかな。

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みんなのコメント

31件
  • tma********
    以前はMR-Sに乗っていました。
    ただ選択基準はスポーツ走行でなく、休日家族と出かけるときは妻の車で十分で、
    会社に行くのは私一人だから2シーター、そしてオープンなら気分転換もできる。
    結局MRに拘る必要もなっかたので、今はコペンXPLAYに乗っています。
  • nan********
    BEATがピニンファリーナのデザインってのは周知の事実なのに、、、知らないで書いてる恥ずかしさ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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