かつてはそれぞれが独立した存在だった自動車メーカー。現在では多くのメーカーが提携を行い、場合によっては買収されて別のメーカー傘下となったというケースもある。エンジンやプラットフォームの共通化によるコストダウン、流通の効率化など、メリットの多いグループ化だが、あるメーカーがどのグループに属しているのがわからないこともあり、さらに意外なグループの傘下となっていて驚かされるブランドもある。
このシリーズでは、そうした「自動車メーカーグループ」に注目し、紹介していくことにしたい。今回は、2021年に誕生したばかりの巨大グループ「ステランティス」にスポットを当てよう。
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文/長谷川 敦、写真/Groupe PSA Japan、Newspress
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FCAとPSA、大西洋をまたいだ巨大連合が誕生!
2021年1月16日、フィアット・クライスラー・オートモビルズN.V.(以下FCA)とプジョーS.A.(以下グループPSA)が統合され、Stellantis N.V.(ステランティスN.V.)が誕生した。
FCAはイタリアのフィアットグループとアメリカのクライスラーによる連合で、誕生は2014年。そしてグループPSAは、1976年に生まれたフランスのプジョーを中心とするグループ。すでにそれぞれが大きなグループであったが、今回の統合により、実に14もの自動車メーカーを有する連合が誕生したことになる。
統合されたグループは、ラテン語の「Stello」が由来で「星たちとともに輝く」という意味の「ステランティス」の名称が掲げられることになった。
新たなグループロゴの下でポーズを決めるステランティスグループCEOのカルロス・タバレス氏(左)と、チェアマン(会長)のジョン・エルカン氏(右)
新名称の「ステランティス」が意味するもの
このベストカーWebの読者で、プジョーやクライスラー、そしてフィアットという響きには馴染みがあっても「ステランティス」という名称を聞いたことがない人も多いだろう。実際、今回の新グループ誕生に際して既存のメーカー名を使用しなかったのは、メーカー名を並べることによって並び順による優劣の印象を与えることがなく、加えてまったく新しいグループの誕生を顧客にイメージさせるという狙いがある。
新グループ名がラテン語にちなんでいるのは、フランスのプジョー、そしてイタリアのフィアットなど、ラテン系メーカーが多いことも理由のひとつだと思われる。しかし、ステランティスの登録国はオランダであり、本社はアムステルダムに置かれている。実際、ステランティスグループを構成するメーカーは5カ国からなる多国籍連合である。
ステランティスを構成する14の自動車メーカー
では、ステランティスがどんなメーカーによって構成されているのかを見ていくことにしよう。FCAに属していたのが「フィアット」「アバルト」「アルファロメオ」「マセラティ」「ランチア」「クライスラー」「ジープ」「ダッジ」「ラムトラックス」の9社で、グループPSAは「プジョー」「シトロエン」「DS」「オペル」「ボクスホール」の5社。これらすべてがステランティスグループの下で統合される。
ステランティスグループのCEOにはグループPSAのカルロス・タバレス氏が就任し、会長職はFCAのジョン・エルカン氏が担う。このことからもステランティスグループの誕生がどちらかによる吸収・合併ではなく、より高いレベルでの統合であることが理解できる。
FCAグループの中核をなすフィアット(画像はフィアット500)は、イタリアの主流自動車メーカーのほとんどを統括し、近年にはクライスラーも併合している
フェラーリ史上最も若い34歳で会長に就任したという経歴を持つエルカン氏(右)。フィアット創業家のアニエリ家とも縁戚関係にある人物でもある
輝く星の光はどちらの世界を指し示す?
ステランティスグループは、世界第1位のフォルクスワーゲングループ、第2位のトヨタ自動車、そして第3位のルノー・日産・三菱連合に次ぐ第4位の生産台数を誇る(2019年の統計)。
だが、ステランティスの目標は、世界最大の生産台数を達成することでなはく、業務効率と生産性の向上によるサスティナビリティ(持続可能性)の確立だという。統合によってグループ全体の経営状態が強化され、各メーカーの交流による技術力の向上も期待されている。
「優れていることは大きいことより重要」のフレーズのもと、これらからのステランティスグループは、国際的なネットワークを活かして製品とサービスのクオリティアップに努めていくとのこと。実際に今回の統合により50億ユーロ(約6500億円)に相当するシナジー効果が得られるという。全従業員は40万人に達し、その国籍は150カ国に及ぶ。これほどの規模を持ったグループが、どれだけのことを成し遂げられるのか、興味は尽きない。
ステランティスグループに属するオペルは2021年に日本市場にカムバック。写真は欧州で人気の高い「コルサ」で、フル電動モデルも導入される予定だ
グループPSAが発表した共通プラットフォームのCMP。プジョーやシトロエンなどで共用できるプラットフォームの完成で、巨大グループはさらに強くなる?
電動化時代のリーダーを狙うステランティスの戦略
2021年7月に、ステランティスグループは同社の中期的な電動化戦略に関する発表を行った。その内容は、2025年までに電動化とそれに関連したソフトウェア開発に300億ユーロ(約3兆9000億円)を投資し、投資回収効率も業界平均を3割上回ることを目指す。
そして2030年までの低排出車(LEV)の販売構成比率目標をヨーロッパ/7割、アメリカ/4割以上とする。さらに効率に優れたバッテリーの開発などが掲げられているが、なかでも注目したいのが、ステランティスグループの全14ブラントでベスト・イン・クラスの電気自動車をラインナップするというもの。ブランドごとにそれぞれの個性を生かした電動自動車を開発・販売し、ワンサイズですべてをカバーするという戦略をとらないという点に注目したい。
グループとしては誕生したばかりともいえるステランティスだが、もともと基盤のしっかりしたメーカーの連合だけあって、新技術の開発をはじめ、販売戦略においても確実なステップを踏んでくることが予想される。イタリア・アメリカ連合のFCAに、フランス中心のグループPSAという、国民気質が大きく異なるメーカーによる“大連合”が、これからの自動車業界にどんなムーブメントを起こしてくれるのだろうか?
グループPSAの筆頭メーカーだったプジョーが2021年にリリースした最新SUVがこの「3008」。プラグインハイブリッドモデルもラインナップされている
現在の日本ではクライスラー製モデルの販売はなく、ジープブランドのサービスにリソースを集中している。ハイブリッドモデル「レネゲイド4xe」の評価も高い
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みんなのコメント
今はドイツ嫌いなイギリス人に対して
上手いこと言ってドイツ発祥であるオペルを
買わせるためのブランドがヴォクスホールであるが、
かつてGMグループ時代の頃はいすゞだろうと
スズキだろうとヴォクスホールブランドにして
イギリスで売っていた。