アイサイト、本当にぶつからない!?
text:Kenji Momota(桃田健史)
【画像】変わっていないようで大きく進化【レヴォーグ新旧比較】 全195枚
「ぶつからないクルマ」というキャッチコピーでお馴染み。スバルのアイサイトについて、驚きの数値が公表された。
「0.06%」。つまり、1万分の6である。
これは、スバルが2014年から2018年に国内販売したスバル車の人身事故件数を調べた結果、アイサイトVer.3搭載車の追突事故発生率が0.06%となった。
具体的には、販売総数は45万6944台で、事故総件数は2013台だった。
事故総件数の内訳は、対歩行者が209件、対車両・その他が1804件だ。
さらに、対車両・その他のうち、追突事故件数は259件だった。
よって、259÷456944=0.00056となり、概数では0.06%とした。
さらに遡ると、アイサイトVer.2(2010年~2014年)の場合、販売総数が24万6139台で
追突事故件数は223件なので事故率は0.09%。
同時期のアイサイトVer2の非搭載車は、4万8085台で追突事故件数は269台となり、事故率は0.5%だ。アイサイトVer.2装着車と比べて、約5倍の差があることがわかる。
こうしたデータを客観的に見ると、実際の衝突事故が発生する可能性が究めた高い状況では、アイサイトの検知機能・ブレーキ作動機能が確実に効果を現わしている。
いわゆる自動ブレーキと呼ばれることが多い、衝撃被害軽減ブレーキ。その性能を過信することはいけないが、もしもの時の支えになっていることは間違いなさそうだ。
そんなアイサイトも導入当時は……。
まさか、こんなに増えるとは……!?
いまや世間ですっかりお馴染みの、アイサイト。
だが、その名称が世に出たのは、いま(2020年)から12年前と意外と歴史が浅い。
むろん、いきなり登場したわけではなく、前身であるアクティブ・ドライビング・アシスト(ADA)は1999年に当時の「レガシィ・ランカスター」で採用され、その後に改良が進んだ。
とはいえ、ADAはユーザーの間では”知る人ぞ知る”というマイナーな存在。2000年代に関連する開発チームと意見交換した際は「われわれは縁の下の存在」という表現で、富士重工業(当時)開発本部内では控えめな印象を受けた。
そうした流れが2000年代後半に一気に変わった。
タイミングとしては、会社全体としてアメリカシフトを打ち出した時期であり、日本国内向けには新たなるスバルブランド戦略が必要だった。
シンメトリカルAWDや水平対向エンジンといったスバル特有の技術基盤の上に、安心安全をアピールするアイテムとして、アイサイトの積極的なアピールを始めた。
それが、ジャニーズの人気タレントなどがスバルの技術者と同乗して、アイサイトの実車体験の様子を紹介した「ぶつからないクルマ」というテレビCMだ。
この思い切った広報戦略は、販売店が驚くほどの効果を発揮。
当初は一部「レガシィ」への搭載だったが、各モデルへの標準装備化が進んだ。
アイサイト、新車アセスメントにも影響
アイサイト効果は他の日系メーカーに強い影響を及ぼした。
実際、各ブランドの販売現場からは「ウチもアイサイトのような装備が必要だ」という声が強まったと聞いている。
また、技術関連のカンファレンスなどで日系メーカーの高度運転支援システム(アドバンスド・ドライバー・アシスタンス・システム:ADAS(略称エーダス)の歴史が紹介されると、「本格導入のきっかけを作ったのはアイサイト」という表現が使われることが多い。
一方、海外では、イスラエルのベンチャー企業モービルアイが2000年代に単眼カメラによる画像認識技術の開発に成功し、GMやボルボなどが先行してADAS機能として装着を進めた。
ドイツでは、ダイムラー/BMW/VWに強い影響を及ぼす、ボッシュとコンチネンタルがADAS開発を加速させた。
そうした中で、メーカーとユーザーに対して第三者機関が安全技術評価を公表する、新車アセスメントプログラム(NCAP)で、事故後の衝突安全に加え、事故前の予防安全での試験が導入された。
アセスメントは、CO2規制やEV販売台数規制などの国や地域の行政機関が設定する規制ではないが、自動車メーカー各社はアセスメントの新規試験項目への対応が必須となっている。
では、実際に事故が発生した場合、自動車メーカーはどのような対応をしているのか?
独自の事故調査を行う欧州メーカー
今回のスバルが公表した、「アイサイト搭載車の事故件数調査結果」は、公益財団法人 交通事故総合分析センター(ITARDA)のデータを基にしている。
先日、新型「レヴォーグ」プロトタイプの報道陣向け試乗会で、新型アイサイト開発チーム関係者らに「アイサイト搭載車での実際の事故の検証はおこなっているのか?」と聞いたところ「基本的にはおこなわない」との回答だった。
これは、他の日系自動車メーカーでも同様で、日本ではメーカーが事故車を検証することは極めて稀だ。
一方で、海外では交通事故の現場に出向いて調査する体制を敷くメーカーがある。
詳細を公表していないメーカーもいるが、そのなかでメルセデス・ベンツは、1969年から「メルセデス・ベンツ・アクシデント・リサーチ」という専門部署がある。
本社研究開発拠点がある独シンデルフィンゲンの半径約200kmでメルセデス・ベンツとスマートが起因する重大な交通事故が発生した場合、現場に急行して調査をしてきた。
メルセデス・ベンツによると、そうした調査が衝突安全技術、予防安全技術、またインテリアデザインでの基礎資料となっているという。
今後は、車載カメラ映像や車載器データなど、通信によるコネクティビティを使った事故検証が日本国内も含めて進むのではないだろうか。
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みんなのコメント
アイサイトで事故&巻き込まれた人▶💔
そんな傍らで先日報道されてたエクストレイルに当て逃げした酔っ払いのオッサンが乗ってたクルマはドラレコの映像からサンバーだなこりゃと気づきました。
アイサイトなんて勿論ついてないし、もっとセンターラインから飛び出て正面から衝突してたらキャブオーバーの車体は一発死亡事案になってた事でしょう。
もう作られる事のない希少になりつつある車体を潰しやがってと怒りを覚えたと同時に、メーカーさんが必死にぶつからない、死なないクルマを作る努力をしても結局のところ、乗る人のモラルが一番重要なんだと思いました(^^;;