シリーズ最長の1日……になるハズだった2024年NASCARカップシリーズ第14戦、伝統の『コカ・コーラ600』は、稲妻によるディレイが激しい暴風雨へと変化し、レーススチュワードは400周中249周が終了した時点での赤旗終了を宣言。誰もがレース再開を望むなか、終始トップグループで勝負を続けたクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)がウイナーに輝く結果に。
インディカーとの“ダブル”に挑んだ注目のカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)は、スーパーサブを務めたジャスティン・オルゲイアーから5号車を引き継げず。ヘンドリックやアロウ・マクラーレンとの長い準備期間を経たチャレンジは天候に翻弄される結末となった。
カイル・ラーソンの『ザ・ダブル』は雨で完遂ならず。インディ500では予選5番手、ラップリードで爪痕
土曜夕方のフリー走行はウイリアム・バイロン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が、続く予選は好調タイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)がカップ初のポールポジションを獲得。戦没将兵追悼記念日(メモリアルデー)の週末は、決勝日前日の段階からヘンドリック(HMS)対ジョー・ギブス(JGR)の構図になることが示唆された。
この土曜をシャーロット・モーター・スピードウェイで過ごし、それぞれフリー走行で6番手、予選で5列目10番手としていたラーソンは、ここからふたたびインディアナポリス・モーター・スピードウェイ(IMS)にトンボ帰りし、日曜の“世界3大レース”へと挑んだ。
しかし決勝は雨のためスタートが4時間ほど遅れたうえに、予選5番手から臨んだレースではスピード違反のペナルティを受け、現地午後7時45分ごろに18位でインディ初挑戦を終えることに。この間、すでにシャーロットでは18過ぎにシーズン最長の1戦がスタートを切っており、チーム間の相互連絡の末にラーソンは到着次第、カマロZL1を引き継ぐことが決定された。
ドライバー交代により最後尾スタートに回ったオルゲイアーは、リザーブに指名されつつ最後の瞬間まで「自分にスタートの機会が回ってくるとは考えていなかった」と明かし、ステージ1の序盤こそラップダウンを喫するものの、預かった5号車で249周を周回し、ステージウインを飾ったバイロンやベルらを相手に懸命なドライブを見せ、同一ラップの13番手まで回復する。
■ ラーソンは21時30分ごろに5号車のピットに到着も雷雨が
「正直に言うと、カイルのシートは僕がドライブするシートとは大きく異なる。でもクリフ・ダニエルズ(クルーチーフ)が僕をスピードに乗せるため素晴らしい仕事をしてくれ、必要な場所にクルマを移動させ、あとはバランスを取ることに集中できたんだ」とオルゲイアー。
「ラップダウンからの回復がおそらくこの夜のハイライトだった。ヘンドリック・モータースポーツのチームメイトを追い越せたこと、そしてフィールドで僕がとても尊敬しているタイ(・ギブス)をオーバーテイクできたことは、本当に本当に素晴らしかったし、レースの進め方を向上させるのに役立ったよ」
こうしてピンチヒッターが奮闘するさなか、現地21時30分ごろに5号車のピットに到着したラーソンは、ここからシボレーに乗り込む準備を始める。その直前、最終ステージ229周目のターン2で発生したコリー・ラジョイ(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)のスピンによるコーションの後、最前列はベルとブラッド・ケセロウスキー(RFKレーシング/フォード・マスタング)による一騎打ちの様相となる。
続く236周目のリスタートではベルが勢いを増し、ケセロウスキーをみるみる引き離す展開となるが、シャーロット周辺は雨雲からの雷が予報され、NASCARはエリア警報に従って“落雷警戒”のコーションを発令。その直後にはオーバルに大雨が降り始め、ラーソンはダニエルズを交えオルゲイアーからマシンバランスの詳細伝達を受ける充分な機会を得ることになる。
しかし現地では雨が上がり落雷への警戒は解除されたものの、これまでの雨量と湿度の高さにより路面のドライアップはまるで機能せず。約2時間後には公式なレース終了が宣言され、再開のチャンスは永遠に失われることに。結果、レースハイの90周をリードしたステージ2ウイナーのベルが今季2勝目、シャーロット初制覇でキャリア通算8勝目を挙げた。
明けた月曜の朝、改めてラーソンは自身のSNSを通じてクルマをドライブする機会が得られなかった心境を綴った。
■「これまで経験したなかでもっとも残念な日」も、多くの関係者に感謝
「天候によって物事が大変なことになるだろうことはずっと前から分かっていたが、それが現実になると恐ろしい気持ちになる」と続けたラーソン。
「日曜までは、本当に僕の人生で最高の経験のひとつだった。夢を実現するために皆が僕をサポートしてくれたことに、どれほど感謝しているか言葉では言い表せない。これが“ダブル”を試す最後の機会でないことを願っているが、もしそうだとしたら、それは思い出深いものになったと思う」
「人生で最高の日のひとつになるだろうと思っていた日は、すぐにこれまで経験したなかでもっとも残念な日のひとつになってしまった。この経験には多大な時間、お金、労力が費やされたが、すべてがこのようなかたちで終わってしまうのは本当に残念だ」
「スピード違反で“取り締まられた”インディカー17号車のクルー、僕の家族、友人、ファン、そして過去8カ月の旅を追ったドキュメンタリークルーの皆……とても多くの人を失望させてしまったような気がする。改めてリック・ヘンドリック、ジェフ・ゴードン、ヘンドリック・モータースポーツのクルー全員、そして僕を歓迎してくれたアロウ・マクラーレンやインディアナポリス・モーター・スピードウェイ、そして楽しんでくれた参加者の皆に感謝している」
併催されたNASCARクラフツマン・トラック・シリーズ第11戦『ノースカロライナ・エデュケーション・ロッタリー200』は、終盤のフレッシュタイヤと迅速なピット作業を活用したニック・サンチェス(レブ・レーシング/シボレー・シルバラードRST)が、10番手だった残り9周のリスタートから大逆転での今季2勝目を達成。
同じく併催のNASCARエクスフィニティ・シリーズ第12戦『ベットMGM 300』は、日曜のカップ戦でもラップリードを記録して7位に入ったチェイス・エリオット(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)が、今季初のエクスフィニティ戦でシャーロット初勝利を飾っている。
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