2020年のMotoGPでは、スズキのジョアン・ミルが最高峰クラスのチャンピオンに輝いた。スズキにとっては実に20年ぶりの最高峰クラスの王座……リーマン・ショックを背景とした経済的な影響で2011年に同カテゴリを一時撤退し、2015年に復帰してから6年目での戴冠だった。
スズキは2015年のフル参戦復帰前、2014年最終戦バレンシアGPにワイルドカード参戦。当時のテストライダーであるランディ・ド・プニエの手で、GSX-RRをデビューさせていた。
■スズキ、ライバルからの“完璧なバイク”との賞賛にもプレッシャーは無かった?
しかしその際に厳しい状況に直面したことで、復帰に向けて心配が高まったと、チームマネージャーのダビデ・ブリビオは認めた。
この14年最終戦でド・プニエは、週末を通して2度のエンジントラブルを経験。さらに決勝レースでもエンジントラブルが発生してしまったのだ。
その後、冬季テストでもエンジントラブルが続いたことで懸念が大きくなっていたが、2015年のフル参戦する時までには、スズキはこれらの問題へ対処を完了させていた。
2020年のバレンシアGPでミルがタイトルを獲得した際、6年前のワイルドカード参戦のことが思い浮かんだかと、ブリビオに訊くと、彼はこう答えた。
「いや、そのレースについては考えていなかったんだけど、あれはとても厳しかった」
「2014年の最終戦にワイルドカードでランディ・ド・プニエと参戦したが、エンジンに問題を抱えていたことを覚えている」
「冬の後半には電気的な問題があることを発見し、それが基本的にエンジンの故障を引き起こしているものだと分かったんだ」
「(14年バレンシアの)日曜日の朝、ワイルドカード参戦用として認められている3基のエンジンのうち、1基が残るのみだった」
「スペアバイクには4基目のエンジンがあったが、それが必要になっていたら、我々はピットレーンスタートとなってしまっていただろう」
「そしてこうしたレースがあったことで、我々は冬の間非常に心配していた。セパンテストでも再びエンジンが故障してしまったからね」
「だからとても、とても厳しいスタートだった。しかしエンジニアは非常に優秀で、彼らは問題を発見し修正した」
「そして、この数年間信頼性には全く問題が無かったと言えるだろう」
そしてブリビオはスズキ創立100周年、レース活動60周年という節目の年に、こうしたことが起こるとは予想していなかったと語った。
「今日は歴史的な日だ。我々はものすごいことを成し遂げたんだ」
「私が映画編集者で脚本家だったとしても、この難しい年に、スズキ100周年のタイミングで世界チャンピオンとなるというのは、出来すぎだろうと思う」
「だがとにかく、我々はスズキ100周年、レース活動60周年の年に勝つという歴史的なことを達成したんだ。これ以上のことは想像もできない。数年前にゼロから始まったこのプロジェクトに情熱とモチベーションを持ったメカニックやエンジニアといった人々が加入してくれた。彼ら全員が喜んでくれていると思う」
「彼らにはトライするモチベーションがあった。そして特にライダーたち、ジョアンは信じられないほどのものだった」
「ジョアンという特別なライダーを目にしていると思う。アレックス(リンス)も素晴らしい仕事をしてくれた。彼に怪我といくつかのミスがなければ、あそこに立っていたかもしれないんだ」
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