■余裕のある2.4リッター水平対向4気筒エンジンを搭載する「GR86」で長距離を走ってみた!
トヨタのスポーツカー「GR86」。2021年10月に9年ぶりの全面を果たし発売されました。
【画像】スポーツカーで長旅全然問題なし! 長距離ドライブにも優れるトヨタ「GR86」を画像で見る(84枚)
「スポーツカーのワクワク・ドキドキ、走る愉しさを守り続けたい」との思いをスバルと共にし、スバル新型「BRZ」と共同開発されたGR86ですが、今回ロングドライブでの乗り味を確かめるために、東京から九州までの往復2800kmをドライブしました。
目的地は、レースが開催される大分県のオートポリス。多くの人は飛行機とレンタカーでいくと思いますがあえて自走でいってみました。
今回、借りたのは「GR86」のRZ(6AT)グレード。6ATということでアイサイトが装着されており、高速巡航はアイサイトにお任せすることでかなり楽になると思われます。
東京・新宿の都庁前をスタート・ゴール地点にしていざ出発。首都高を経て東名高速に入っていきます。
東名高速に入って早速アイサイトをセット。これで右足をアクセルから離しても問題ありません。
もちろん咄嗟の動きにも対応できるように、いつでも足はアクセルとブレーキを踏めるようにしておく必要はありますが、これから始まる長距離走行で足首をずっと同じ角度にしておくのはかなり疲れます。それがないだけでも疲労度はぐっと差が出てきます。
大井松田から始まるワインディング区間で何か感じられるかと思いましたが、高速道路を巡航速度で走る分には、本格的なワインディンロードとは違い、それほどスポーツ感を感じられないまま登り切ってしまいました。
最高出力235馬力・最大トルク250N・mを発揮する2.4リッター水平対向4気筒エンジンをむやみに吹かさなくてもさらっと登り切る能力を持っています。
新東名の制限速度120km/hの区間ではアイサイトをフル活用。基本的には真ん中の車線を走りますが、適宜右車線に出てトラックなどを追い越して真ん中車線に戻るといったことを繰り返します。
前走車に追いついて少し減速してから右車線に出て追い越しをかけると、ギアが一段落ちて力強く加速していきます。
新東名を走り続け中京圏に入り、伊勢湾岸道の刈谷ハイウェイオアシスの観覧車が綺麗に見えたので、写真を1枚撮るためだけのタッチアンドゴーで立ち寄り。そこからは淡々と新名神を走り続けます。
新名神から草津JCTで名神に入ったところで京都東から事故渋滞という表示が現れました。
そのまま渋滞に突入するのか、京滋バイパスに入って迂回するのか悩みます。京滋バイパスは少し遠回りをしている感じがしてしまうが、止まっている時間を考えると走っていたほうが、気が楽と判断。
瀬田東JCTから京滋バイパスに入り大山崎JCTから名神に復帰し高槻JCTから新名神に行きます。
迂回ルートが多くなったこの京都大阪周辺。走り慣れないとどこに向かったら良いのか不安になりますが、ナビは常にVICSなどを拾い道案内をしてくれます。ナビを信用して行くのも悪くないです。
山陽道龍野西SAで給油。この時点で585km走って40リットルの給油となり燃費は14.62km/Lの計算です。
広島県の小谷SAで木曜日の2時30分。眠気に負けて仮眠をとりました。
サンシェードやタオルなどで遮光をしてシートを倒して寝ます。
今回は一人旅なので気楽です。運転席側はペダルやハンドルなどが睡眠には邪魔になるので、助手席側でなるたけシートを水平にして就寝。
つま先部分の広がりがやや足りず、ちょっと足の行き場に苦労しました。シートを倒してヘッドレストを少しあげ、シートバックとヘッドレストの隙間に頭を落とすと寝やすくなります。
GR86はスポーツカーなので車中泊に向いているというわけではありませんが不可能ではありません。
山陽道というと海沿いを走っていると思いがちですが、意外と山陽道は山道が続き制限速度も80km/h区間が大半です。
とくに山口県に入ってからは結構な山間部になり、勾配もでてきてカーブ半径も小さくなるので運転には注意が必要です。
GR86のように車高の低い車は大型車の死角に入りやすく、大型車の隣りとかにいると意外と気が付かれにくいのか、大型車がふいに車線変更をしてくることもありました。なるべく並走しないで存在感をアピールしながら走ったほうが安全でしょう。
関門海峡を超えるといよいよ九州。この橋を渡るくらいでちょうど東京から1000kmくらいになります。
九州道に入り、通常のオートポリスに行くルートならばまっすぐ日田を目指すのが普通でしょう。ナビも日田から降りて山間部を抜けて行く指示を出します。
しかし今回はそんないつも通りの道を走っても面白くないと思い、東九州道に入り湯布院を目指しました。オートポリスの近所にありながら行くには少し遠い「やまなみハイウェイ」を走りたかったからです。
湯布院インターで降りてガソリンスタンドで給油。この時点での走行距離はトータル1125km、龍野西で給油してから540km走って41リットル給油。この区間での燃費は13.17km/Lとなりました。
さて、いよいよやまなみハイウェイです。観光道路でもあるので交通量は多め、安全に配慮しながらGR86のワインディングでのシャープな回答性、6ATながらマニュアルモードでのシフトアップ・ダウンと存分に走りの楽しさを体感できました。
GR86とSUBARU BRZは兄弟車ながら走りの特性が違います。
ワインディングでの走りはGR86のほうがめちゃくちゃ楽しい。一方のBRZはグランドツーリングカーとして落ち着いた感じがあり、高速道路などではゆったりとしていて走りやすい。
この性格の差を感じながらやまなみハイウェイまで来ましたが、ワインディングでより一層その違いを体感できました。
ここまで1000km以上走って来ているにも関わらず、ワインディングをずっと走っていたいと思わせるGR86の運動性能は抜群です。このままオートポリスに行かず山道をずっと走っていようかと真剣に考えたほどです。
しかしゴールをせねばという思いもあり、やまなみハイウェイの気持ちよさに後ろ髪を引かれながら一路オートポリスを目指します。
オートポリスまでもなかなかのワインディングでしたが、全く気にならずスイスイと走り抜けオートポリスに到着しました。ここまでの所要時間は25時間、走行距離は1223kmです。
ここでゴールな訳ですが、宿が熊本市内にあるので、そこまで走行、全行程の燃費計測のために再度給油をしました。
結果、東京→オートポリス→熊本までの全走行距離は1282.3kmで給油量は94リットル、燃費は満タン計測で13.64km/Lという結果になりました。
■ずっと走っていたい? 気になる部分も気にならない? それがスポーツカー
東京からオートポリスを経由して熊本まで1282kmを走り切り、熊本市内の宿で十分な休息を取りましたが、レースのために毎日オートポリスまでの山登りと取材の日程がスタートします。
開催期間中、毎日思っていましたが、どんなに疲れて宿に帰るときも、次の日朝が早くてもGR86に乗るとなぜか自然と楽しくなり、ウキウキした気持ちで山登りと山下りをしていました。
これがSNSなどでGR86のオーナーが投稿していた「どんなことがあっても、私にはGR86がある」ということかと実感。
また撮影で展望台にいると同じマグネタイトグレーメタリックのGR86と偶然出会いました。お話を伺うと偶然にも「数日前に納車されたばかり」と語る若者が乗っていました。
初めて会ったにも関わらず会話が弾むのもクルマ好きが乗る車種ならではでしょう。
ちなみに霧が立ち込めヘッドライトオン、リアフォグオンの状態でも先行車を見失うような天候になり、アイサイトが白過ぎて対象を認識できないエラーが出たりもしました。
これは人間の目と同じ原理で、アイサイトはカメラで認識を行っているためきりで真っ白だったりするような状況では白線などを認識しにくい状態になると使えなくなる場合もありるということです。そういうときは人間の目でも見えにくいので安全運転により一層気をつけましょう。
そんなこんなで金・土・日の3日間のオートポリス取材は無事に終了し、月曜の朝いよいよ帰京です。
熊本まで25時間掛かっていれば、東京に帰るにもほぼ同じような時間が掛かる訳です。
九州道の熊本インターで乗る前に給油。3日間山登りをした結果、走行距離は333km、 32リットルの給油をおこないました。燃費は10.40km/Lです。
帰りは行きよりももっと淡々と走行をこなし、山陽道の吉備で休憩し、新名神の宝塚北SAで夕飯と給油を行います。
熊本インターで高速に乗る前に給油してから走行距離は684km、43.7リットルを給油したので燃費は15.65km/Lです。
宝塚北SAを出発し淡々と関西圏を抜けていきます。新東名の長篠設楽原PAにピットイン。ここからはほぼ直線で、距離感も時間感覚も分かっているので少しだけ安心感はあります。
実際東京に近づくとどんどん渋滞が始まっており、首都高からの渋滞が海老名くらいまで断続的に続いていました。
見事に渋滞にどっぷりとハマりましたが、無事に新宿で給油を行い、新宿の都庁前に到着しました。
結果、全行程で総走行距離は2794.3km、総給油量204.79リットルとなり、燃費は満タン方式で13.64km/Lとなりました。
そもそも東京からオートポリスまで自走という段階で驚かれますが、それほど苦痛でもありませんでした。それはGR86のクルマとしての良さが理由でしょう。
ただ全てが良い訳ではなくて、不満点もあります。燃費がもう少し伸びてくれるか、タンク容量を現状の50リットルからもう少し大きくしてくれると長距離ドライブでの安心感が違います。
シートはスポーツカーらしく低く構えている関係で体も沈みこんでいます。天井にグリップが無いので車内から降りる際に、体を起こすのが少し大変です。グリップがあれば体も起こしやすいのに。と思ったことが何度もありました。
2ドアのスポーツカーなのでドアが大きく、狭い駐車場では乗り降りに苦労しますが、それはスポーツカーを楽しむための苦労と思うしかありません。
またラゲッジの開口部が少し狭く感じられます。3泊4日を収めるキャリーケース2つ相当の荷物をラゲッジに収納するのには斜めにして入れたり少し工夫が必要になります。今回は一人旅なので問題ありませんでしたが、2人旅ならばラゲッジに荷物を積むのに工夫が必要でしょう。
とはいえ、不満点は乗っているうちに工夫をこらせば対処できる部分です。それを上回る楽しさがあれば、どんな距離でも楽しく走れることを実感しましたし、アイサイトがあったおかげで格段に、高速巡航が楽になります。
「スポーツカーはMTでないと」という意見もわかりますが、ATでもワインディングも十分に楽しめますし、ロングツーリングでも非常に快適に走れます。
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