現在位置: carview! > ニュース > スポーツ > 引退レースをクラッシュで終えたダニカ「この1カ月だけでも忘れられない瞬間が幾つもあった」

ここから本文です

引退レースをクラッシュで終えたダニカ「この1カ月だけでも忘れられない瞬間が幾つもあった」

掲載 更新
引退レースをクラッシュで終えたダニカ「この1カ月だけでも忘れられない瞬間が幾つもあった」

 ダニカ・パトリックのインディ500が終わり、彼女のレーシングキャリアに幕が降ろされた。

 ゴールまでマシンを運ぶことにかけては優れた才能の持ち主であるダニカ。彼女は過去に7回出場したインディ500で6回もトップ10フィニッシュし、そのうちの1回は3位だった。

第102回インディ500まとめ

 ここまで安定した好成績を残せているドライバーは少ない。今年優勝したウィル・パワーは、去年までにダニカより3回多い10回出場していながら、トップ10はダニカより少ない5回しか記録していない。


 しかし、2011年以来となったインディカー・レース、プロとして走る最後のレースでのダニカはチェッカーフラッグを受けることができなかった。

 200周のレースがまだ半分にも届かない68周目、ターン2出口側ウォールに彼女は激しく突っ込んだ。16番手を走行中で、ひとつ前の順位を走るマシンとの間には結構なスペースがあったが、目に見えない空気の流れが彼女のマシンの走行バランスを崩した。

 突然のオーバーステアからスピンを始めたマシンはコントロール不能で、ノーズ側からウォールに突っ込み、コース内側にストップ。マシンへのダメージは大きく、その場でリタイアするしかなかった。

 キャリア最後のレースのリザルトは、33台がエントリーした中での30位となった。

 ストックカードライバーとしての最後のレースだった、今年の2月のデイトナ500でも、彼女はゴールまで走りきることはできなかった。

 先頭グループでの接触が引き金になっての多重アクシデント。13番手を走っていた彼女はパックの中でアウト側にポジショニングしていたのが不運で、まるで行き場がない状態でクアラッシュ。完全なる犠牲者だった。まだレースは200周の半分が過ぎたばかりの102周目で、結果は40台出走中の35位だった。

 彼女の華やかなレース人を締め括るために企画された“ダニカ・ダブル”だったが、2レースともクラッシュでリタイアという実に苦々しい結果に終わった。
 それでも、彼女のインディ500参戦には大きな意味があった。ストックカーへ転向した彼女は、自らのルーツであるオープンホイールの世界でキャリアを閉じたかったのだ。ダニカの知名度を轟かせたインディ500は、全米のファンに感謝を表し、別れを告げるためには最高の舞台だった。


「この1カ月だけでも忘れられない瞬間が幾つもあった」とリタイア直後にダニカは涙を堪えて語った。

「このプロジェクトに関わった人たち、ファン、いいマシンを与えてくれたエド・カーペンター・レーシング、そしてスポンサーに感謝したい」というコメントを残し、ダニカはスピードウェイを去った。

 インディ500は多くのプラクティスを走ってから決勝に臨める上、良いマシンに乗れたらそれなりのパフォーマンスを見せることが可能。普通のドライバーなら零細チームにでもシートを確保するのは大変だが、彼女にはインディでの驚くべき実績がある上、期待できる宣伝効果はとてつもなく大きい。

 ダニカの知名度はレーサーとしてアメリカで群を抜いている。そのアドバンテージを知っているダニカ陣営は、チップ・ガナッシ・レーシングやアンドレッティ・オートスポートと交渉し、最終的にエド・カーペンター・レーシングにシートを獲得した。

 今年のインディでは意外にもホンダ勢がスピードの確保に苦しんだ。チーム・ペンスキーに次ぐシボレーのナンバー2チーム的存在となったエド・カーペンター・レーシングで走るダニカは、狙い通りに予選でファストナイン入り。


 チーム内では最下位だったが、彼女のすぐ後ろのグリッドはインディ500優勝3回のエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)、その次が4度のシリーズ・タイトル獲得と2008年インディ500優勝の実績を誇るスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、さらに次が2004年のチャンピオンで、インディ500でも2013年に優勝しているトニー・カナーン(AJ・フォイト・レーシング)という錚々たる顔触れだった。

 ダニカが優勝したら全米どころか全世界で話題になり、賞賛の嵐が吹き荒れただろう。しかし、猛暑となってドライビングが一段難しくなったマシンで彼女はスタート直後からポジションを下げる苦戦を余儀無くされ、レースが中盤に入ってからも前を走るマシンとの間隔を広く保ってのサバイバルレースを戦っていた。

「目立たない戦いに終わったら、ウイナーの記事に隠れて話題にもならない。そういうものだと思う」ともダニカは語った。

 2005年にインディカーに登場。そのシーズンとインディ500、両方のルーキー・オブ・ザ・イヤーにダニカは輝いた。インディでは女性として初めてリードラップを記録した。2008年にはインディー・ジャパンで優勝。もちろん女性初。そして、2009年にはインディ500で3位フィニッシュし、年間ランキングは自己最高の5位となった。

 ダニカのストックカー行きは、スポンサーの意向も大きかっただろうし、彼女自身、アメリカで当時圧倒的な人気を誇ったNASCARのストックカーで自分を試してみたいという考えを持ったのだろうとも思う。もちろん高額のギャラも魅力的だった。

 しかし、結局彼女はストックカーではほとんど活躍することができなかった。ダニカはインディーカーに残るべきだった。今更言っても遅いが……。

 もし残っていたら、彼女は2勝目を挙げていた可能性が強いし、女性初のインディ500優勝ドライバーになれていたかもしれない。それを考えるとNASCAR転向という決断は大いに悔やまれる。きっと彼女自身には、後悔はまったくないのないのだろうが……。ダニカに迫り、乗り越えて行く才能と情熱を持った女性ドライバーがまた現れるのを期待したい。

【キャンペーン】第2・4 金土日はお得に給油!車検月登録でガソリン・軽油7円/L引き!(要マイカー登録)

こんな記事も読まれています

レクサス新型「LX」がスゴイ! ”頑丈“すぎる新ハイブリッド搭載の「本格モデル」! “超タフ”な新仕様「オーバートレイル」もある「最上級“SUV”」が販売店でも話題に
レクサス新型「LX」がスゴイ! ”頑丈“すぎる新ハイブリッド搭載の「本格モデル」! “超タフ”な新仕様「オーバートレイル」もある「最上級“SUV”」が販売店でも話題に
くるまのニュース
国内外で活躍するBIRTH RACING PROJECTがドライバーデベロップメントプログラムを始動へ
国内外で活躍するBIRTH RACING PROJECTがドライバーデベロップメントプログラムを始動へ
AUTOSPORT web
【アメリカ】ホンダの大型SUV「プロローグ」に反響多し! 「100万円以上も安くなるのスゴイ」「あえてシンプルなデザインが素敵」の声! 日系車で「1番人気」を獲得!
【アメリカ】ホンダの大型SUV「プロローグ」に反響多し! 「100万円以上も安くなるのスゴイ」「あえてシンプルなデザインが素敵」の声! 日系車で「1番人気」を獲得!
くるまのニュース
デザインコンセプトは「ナチュラルユニーク」! スズキが軽乗用車「ワゴンR スマイル」の新型モデルを発売
デザインコンセプトは「ナチュラルユニーク」! スズキが軽乗用車「ワゴンR スマイル」の新型モデルを発売
バイクのニュース
クルマのエアコンフィルター交換、サボってない? 自分で点検・交換する方法を紹介!【カーマニア本田浩隆の愛車日常メンテナンス】
クルマのエアコンフィルター交換、サボってない? 自分で点検・交換する方法を紹介!【カーマニア本田浩隆の愛車日常メンテナンス】
くるくら
ゲイルスピードのアルミ鍛造ホイールに X350/X500/GSX-R1100用が登場!
ゲイルスピードのアルミ鍛造ホイールに X350/X500/GSX-R1100用が登場!
バイクブロス
2025年[フルモデルチェンジ]予定の日産・キックス! [コンパクトSUV]として爆ウレするために必須の条件とは?
2025年[フルモデルチェンジ]予定の日産・キックス! [コンパクトSUV]として爆ウレするために必須の条件とは?
ベストカーWeb
6年ぶりに復活した日産S14「シルビア」…きっかけは「チャージスピード」のフルエアロ! ただいま「痛車にしようか思案中」
6年ぶりに復活した日産S14「シルビア」…きっかけは「チャージスピード」のフルエアロ! ただいま「痛車にしようか思案中」
Auto Messe Web
F110カップに『GSTR GRAND PRIX F110 CUP 2025シリーズ』と題したスカラシップを設定
F110カップに『GSTR GRAND PRIX F110 CUP 2025シリーズ』と題したスカラシップを設定
AUTOSPORT web
「冬の方が夏に比べて“燃費が悪くなる”と聞きましたがなぜですか?」 納得の理由に「雪降るエリアだと仕方ない」「冬に燃費稼ぐのは諦めます」の声! すぐできる“燃費を良くする方法”とは?
「冬の方が夏に比べて“燃費が悪くなる”と聞きましたがなぜですか?」 納得の理由に「雪降るエリアだと仕方ない」「冬に燃費稼ぐのは諦めます」の声! すぐできる“燃費を良くする方法”とは?
くるまのニュース
トヨタ車体が提案! 斬新ドア採用の「クロスバンギア」は市販化する? ノアヴォク派生ぽい「“SUVミニバン”コンセプト」はどうなるの?
トヨタ車体が提案! 斬新ドア採用の「クロスバンギア」は市販化する? ノアヴォク派生ぽい「“SUVミニバン”コンセプト」はどうなるの?
くるまのニュース
タクシー・ライドシェアに「チップ文化」は根付くか? 配車アプリ普及で、月収アップに追い風? その効果と課題を考える
タクシー・ライドシェアに「チップ文化」は根付くか? 配車アプリ普及で、月収アップに追い風? その効果と課題を考える
Merkmal
「えっ!?」スクーターメーカー「ベスパ」製の4輪車なんてあったの?  65年前に登場した4人乗りの“マイクロカー”を発見 どんなクルマ?
「えっ!?」スクーターメーカー「ベスパ」製の4輪車なんてあったの? 65年前に登場した4人乗りの“マイクロカー”を発見 どんなクルマ?
VAGUE
買うなら今よ! 3代目[トヨタ・ヴィッツRS]走りが楽しすぎる件
買うなら今よ! 3代目[トヨタ・ヴィッツRS]走りが楽しすぎる件
ベストカーWeb
金属の塊から削り出したよう! 新型BMW X3のシンプルかつ迫力ボディをデザインのプロが分析
金属の塊から削り出したよう! 新型BMW X3のシンプルかつ迫力ボディをデザインのプロが分析
WEB CARTOP
“釣り業界最大級のイベント”過去最大!227社が出展する“釣りの祭典”『釣りフェス2025 in Yokohama』開催
“釣り業界最大級のイベント”過去最大!227社が出展する“釣りの祭典”『釣りフェス2025 in Yokohama』開催
AutoBild Japan
日産とビームスのコラボレーションモデル、ついに登場!──GQ新着カー
日産とビームスのコラボレーションモデル、ついに登場!──GQ新着カー
GQ JAPAN
【欧州】トヨタ“2代目”「C-HR」なぜ日本で売らない!? 最新版は“プリウス顔”の超カッコイイ「クーペSUV」に! 初代「大ヒット」でも未導入な理由とは
【欧州】トヨタ“2代目”「C-HR」なぜ日本で売らない!? 最新版は“プリウス顔”の超カッコイイ「クーペSUV」に! 初代「大ヒット」でも未導入な理由とは
くるまのニュース

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村