迷うほどに選択肢が豊富だった!
90年代まではそう変わらない兄弟車というものがトヨタ、日産、ホンダ、マツダ、三菱でよく見られた。トヨタのカローラとスプリンターがその代表といえる。かつてその種の兄弟車が多数あったのはユーザーの選択肢を増やすという面もあったにせよ、この5社は販売チャンネル(2003年度までのトヨタならトヨタ店、トヨペット店、カローラ店、ネッツ店、ビスタ店)があったため、各ディーラーに販売するクルマを供給するためというのが最大の理由である。逆に考えればディーラー系列がなくなればこの種の兄弟車の必要性はないわけで、トヨタが原則全ディーラー全車種扱いとなったこともあり、今後この種の兄弟車が登場することはなくなるだろう。そんな時代となったこともあり、ここでは三兄弟以上の兄弟車を振り返っていく。
同じ中身なのになんでこんなに差が付いた! 明暗クッキリ兄弟車の勝ち負け4選
1)トヨタ・マークII3兄弟
現在でいえばトヨタ・ハリアーのような「手が届く高級車」というジャンルを確立したマークIIは、トヨペット店扱いのマークIIに加え、オート店が前身となるネッツ店扱いのチェイサー、ビスタ店扱いのクレスタと兄弟車を増やした。それぞれ「中核となるマークII」、「スポーティなエクステリアを持つチェイサー」、「セダンボディでフォーマルなクレスタ」というキャラクターを持っていたが、基本的にはエクステリアとインテリアの細かな違い以外は同じクルマだった。
マークII三兄弟は1996年登場のX100系まで続いたが、100系の次のX110系ではチェイサーとクレスタがビスタ店扱いのヴェロッサに統合された。さらにエンジンが直6からV6となったX120系ではヴェロッサが消え、マークIIから車名を変えたマークXのみとなり、昨年末でマークXも絶版となってしまった。
2)日産サニー5兄弟
1966年登場の初代サニーは初代カローラとともに大衆車というジャンルを確立したモデルである。日産は初代サニーが登場した頃にプリンス自動車と合併したこともあり、1970年にはプリンス自動車主導で開発されたサニーと同クラスでFF車となるチェリーが登場。サニーはサニー店扱いで、チェリー店扱いだったチェリーは1978年にヨーロピアンなキャラクターを持つパルサーに移行するのだが、80年代から当時日産店、モーター店、プリンス店、サニー店、チェリー店という5チャンネルがあった日産のディーラー系列すべてにこのクラスのモデルが供給されるようになった。
そんな背景もありその頃加わったのが、日産店扱いでブルーバードの弟分的なキャラクターのリベルタビラ、モーター店扱いで小さな高級車的なキャラクターを持つローレルスピリット、プリンス店扱いでスカイラインの弟分的なキャラクターのラングレーだった。
書いていても混乱する五兄弟であっただけに、1990年にサニーとパルサーがフルモデルチェンジした際にリベルタビラとラングレーは廃止され、日産店とプリンス店でもパルサーが販売されるようになり、ローレルスピリットは4ドアながら全高の低いハードトップとなるプレセアに移行した。90年代後半以降日産の経営が傾き、1999年から日産のディーラー系列がレッドステージとブルーステージの2つになったこともあり、2000年でパルサーとプレセアは絶版となり、サニーも2004年にティーダを後継車に姿を消し、現在はティーダもなくなってしまった。
何兄弟といえばいいか分からない程に増殖したモデルも
3)マツダクロノス兄弟
マツダはバブル期に昭和までのマツダ店、マツダオート店、アメリカ製のフォード車とフォードのバッジを付けたマツダ車を扱うオートラマ店の3チャンネルから、マツダ店、マツダオート店をアンフィニ店、プレミアムなユーノス店、カジュアルなオートザム店、オートラマ店という5チャンネルにするという大勝負に出た。そのため兄弟車が一気に増えたのだが、そのなかでも強烈だったのが1991年登場のミドルセダンのクロノスをベースとした兄弟車である。
挙げていくと、マツダ店がオーソドックスな4ドアセダンのクロノス、2ドアクーペのMX-6、アンフィニ店に5ドアセダンのMS-6、4ドアクーペのペルソナの後継車となるMS-8、ユーノス店はクロノス兄弟では唯一の5ナンバー幅でスタイリッシュなユーノス500、オートザム店に個性的なスタイルを持つ4ドアセダンのクレフと、ここまでで6台だ。
さらにオートラマ店では4ドアと5ドアのセダンのテルスター、アメリカ製でMX-6の兄弟車となる2ドアクーペのプローブで8台と、クロノス兄弟はよく6兄弟と言われるが、見方によっては何兄弟なのか正解がわからないくらい増殖した。
クロノス兄弟はキャラクターが強いのはスタイルに魅力があったユーノス500くらいで、ユーノス500以外は印象が薄かったのに加え、短期間に車種を増やしたこともあり全体的に完成度が高くなかったのもあり、車種は増えても販売はまったく伸びなかった。
さらにマツダの5チャンネル制開始から総時間の経たないうちにバブル期が終わったことも追い打ちを掛け、クロノス兄弟を含めたマツダの5チャンネル制は2000年代はじめまで長く続いたマツダ低迷の大きな原因となってしまった。
4)三菱ギャラン兄弟(6代目モデル)
三菱自動車は2000年代はじめまで三菱自動車において伝統的なイメージのあるモデルを扱うギャラン店と、比較的登場の新しいモデルを扱いカジュアルなイメージを持つカープラザ店という2つの販売チャンネルがあった。
ここまでは特筆すべきことではなく、かつて三菱自動車はミドルクラスカーのギャランをギャラン店で、カープラザ店ではギャランの兄弟車となるエテルナを販売していた。これも普通のことだが、もっとも成功したギャランである1987年登場の6代目モデルの兄弟車となるエテルナは4ドアセダンのギャランに対し、5ドアセダンだった。これなら棲み分けされた兄弟車なのだが、1989年のマイナーチェンジではエテルナに4ドアセダンのサヴァが加わり、ややこしい兄弟関係となった。
その後エテルナは1992年登場の7代目ギャランでは継続されたものの、1996年登場の8代目ギャランでエテルナの名前は消えた。かと思うと1998年に8代目ギャランとわずかに違うデザインを持つ兄弟車で、エテルナの後継車的な存在となるアスパイアが登場。しかし2003年にカープラザ店がギャラン店と統合され、アスパイアも絶版となった。
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