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『新世紀エヴァンゲリオン』の組織が災害から皆を守る!?──特務機関NERV災害対策車両に注目!

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『新世紀エヴァンゲリオン』の組織が災害から皆を守る!?──特務機関NERV災害対策車両に注目!

アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する組織「特務機関NERV」は、なんと実社会にも存在する。三菱自動車×TOYO TIRESがコラボレーションした災害対策車両に迫った!

特務機関NERVとは?

いつもより風を感じて──2シーター or 4シーター、オープンカーで走ろう

クルマの電動化、つまりバッテリーに蓄えた電気でモーターを駆動する技術は、走行中の二酸化炭素排出を抑えるためのものだ。ただしそれだけではなく、電動化によってクルマは新たな機能を獲得し、いままでとは異なる役割を果たす可能性が生まれる。

ここでは、洪水や地震などの被災地で活動する災害対策車両として、PHEV(プラグインハイブリッド車)を活用する取り組みを紹介したい。

災害対策車両を製作したのは、災害情報の配信や防災のためのアプリを開発するゲヒルン株式会社。この企業の知名度が高まったのは2011年の東日本大震災で、「特務機関NERV(ネルフ)」というツイッターのアカウント名で情報を発信したことがきっかけだった。

「特務機関NERV」とは、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場する組織で、敵の襲来に警報を鳴らす役割を担う。このアカウント名を使ったことで、全国のエヴァンゲリオンのファンに知られる存在になったのだ。

ちなみに社名のゲヒルンとはドイツ語で“頭脳”の意味。「特務機関NERV」の前身にあたる組織で、代表を務める石森大貴はエヴァンゲリオンの大ファンだと明かす。

「エヴァに、『ヤシマ作戦』というのがありまして、大電力を使う武器のために全国から電気を集める作戦なんですね。このシーンが、震災時の計画停電とか節電の呼びかけと重なって、ネットで話題になったようです」

これをきっかけに、ゲヒルンは「特務機関NERV」というネーミングを使用する権利を取得し、このツイッターアカウントはエヴァンゲリオン側から公認・非公式アカウントとして認められている。

三菱自動車のPHEVに行き着いたワケ

ゲヒルンは災害情報を発信する企業としてアプリを発表するほか、気象庁の協力事業者に認定されるなど、順調に成長を続けている。その成長の過程で必要性を感じたのが停電への対策だった。石森は言う。

「北海道での大規模停電などを見るにつけ、弊社もビルが停電すると災害情報の発信どころじゃないな、と、痛感したんです。大きなIT企業では電源を確保するためにビルごと借りるところもありますが、うちはそこまでできない。どうしようか? と、思っていたときに、PHEVがあるじゃないか! と、気づいたんです。そこから、PHEVを災害対策車両に仕立てるというアイディアがふくらみました」

PHEV(プラグ・イン・ハイブリッド)は、バッテリーに蓄えた電気でEVとして走り、電気が足りなくなるとエンジンが始動して発電する仕組みを持つ。多くのPHEVには電源ソケットが備わり、外部に給電することができる。つまり停電しても、PHEVがあれば電源が確保できるのだ。しかも、ガソリンさえ入れることができれば、ずっと発電を続けることができる。

そこで石森は、自動車メーカー各社が販売しているPHEVを徹底的に研究したという。

「三菱自動車のPHEVに行き着いたのは、給電を重視するシステムになっているからです。ほとんどのPHEVは、電気がなくなってくると一度、電源を落とします。でも三菱のPHEVは電気が減ってくると自動でエンジンが始動して発電してくれるんです。もうひとつ、被災地に出向くことを考えると4輪駆動が好ましいという理由もありました」

こうして石森は三菱自動車のディーラーに足を運び、見積書までもらった。そこでふと思いついて、三菱自動車に連絡を取って企画書を送ると、何度かのやり取りのあとで2台の車両が提供されることになった。

災害対策車両の詳細とタイヤへのこだわり

それがここに紹介する「アウトランダーPHEV」と「エクリプス・クロスPHEV」だ。2台は100VのAC電源(1500W)が使用できるソケットをふたつ備え、フル充電の状態なら一般家庭1日ぶんの電力、ガソリン満タンであれば10日ぶんの電力を提供できる。見積もりまでしてもらったディーラーに申し訳ないと感じた石森は、その後、じしんの愛車としてアウトランダーPHEVを購入したという。

電源車としての機能のほかにも、スカパーJSATの協力で衛星アンテナを備えることで、移動しながらインターネットに接続でき、被災地にWi-FiサービスやIP電話による音声通話を提供できるようになった。また、内閣府準天頂衛星システム戦略室から貸与された衛星安否確認サービス「Q-ANPI」の衛星端末も搭載、こちらは被災した人々の安否の確認や避難所運営に使われる。

2台の災害対策車両を完成させる最後のピースとなったのが、タイヤだ。洪水や地震の被害に遭った場所では瓦礫の中を走るかもしれないし、真冬の雪国に出向くことも考えられる。

そこでタイヤの提供を申し出たのがTOYO TIRESだ。アウトランダーPHEVには「OPEN COUNTRY R/T」を装着した。R/Tとは「ラギッド・テレイン」の意味で、ごつごつした路面に対応できるオールシーズンタイヤ。通常のSUV用のオールシーズンタイヤよりオフロードに強いことが特徴で、道路に大小さまざまな障害物が落ちている被災地を走ることを想定した。

エクリプス・クロスPHEVが履くのは、「CELSIUS」で、積雪した路面でもしっかりとグリップすることを念頭に開発されたオールシーズンタイヤ。冬用タイヤ着用の規制がかかった高速道路でも走ることができるから、季節を問わずに高い機動力が期待できる。

2台の災害対策車両は、SUV用に開発された最新のタイヤを履くことで、様々なシーンで活動できるようになった。

こうして完成した2台は、災害派遣医療チーム(DMAT)よる訓練や、各地の防災イベントに参加する予定だ。災害時支援業務協定を締結する箱根町の防災訓練には2台をすでに派遣している。

ちなみに、箱根町と協定を結んだ理由にも、エヴァンゲリオンがからむ。作中に登場する第3新東京市という架空の都市は箱根町がモデルになっており、箱根町はエヴァのファンにとって聖地なのだ。

エヴァンゲリオンは、隕石の衝突にともなう大災害の後の世界を描いた作品だ。エヴァから派生した「特務機関NERV」が、PHEVの災害対策車両を製作するというストーリーは、ファンのあいだで再び話題になるだろう。

文・サトータケシ 写真・小塚大樹

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