■新型ランクル300どう変わった? オンロード中心に乗ってみた!
トヨタ「ランドクルーザー」(以下ランクル)の原点は1951年に警察予備隊向けの機動車への納入を狙って開発された「トヨタ・ジープBJ型」。
それ以来70年に渡り進化・熟成を重ねてきました。その開発思想は極めてシンプルです。
「道なき道でも自由に走れる」
「命・荷物を運ぶために壊れない」
「もし壊れても何とかして帰ってくることができる」
これらの実現のために、ランクルは世界中のあらゆる地域・道で使われることを想定し、最も厳しい基準を持ってクルマ作りを行なってきました。
豊田章男社長は「ランクルは『世界の命を守るクルマ』で、トヨタのラインアップのなかでも重要な1台」と語っています。
そのなかでも、1967年に「40系」の派生モデルとして生まれた「50系」から続くステーションワゴン系と呼ばれるモデルは、1984年に「60系」、1989年に「80系」、1998年に「100系」、2007年に「200系」と進化。
プロユースから乗用までこなせる快適性を追求した旗艦モデルとして、ランクルシリーズをけん引するフラッグシップとなります。
そんなステーションワゴン系の最新作が、2021年8月2日に発売開始された「300系」です。
今回は「実際に乗ってどうなのか?」という部分に着目。試乗したモデルは最上級グレード「ZX」のガソリン/ディーゼルになります。
エクステリアは、一目でランクルだと解るプロポーションですが、いい意味で“泥臭さ”がない洗練された印象です。
煌びやかで堂々としたフロントマスク、よりスクエアなサイド、ドシッと構えたスタンスの良さなどから200系よりも大きくなったように感じますが、全長や全幅、ホイールベースは不変です。
ステップに足を掛けてヨイショと運転席に座ると、ほかのトヨタ車と変わらない自然なシートポジションに200系からの進化を感じます。
インパネ周りは最新のトヨタデザインを踏襲していますが、機能別に集約されたスイッチ類は過酷な状況でも確実に操作できるように大きさ/形状も考慮されています。
メーター周りは左右のアナログメーターの視認性は高いものの、センターディスプレイは多くの機能を盛り込み過ぎで、個人的には一等地にある大型のセンターディスプレイをもっと上手に活用すべきだと思いました。
さらに空調の温度表示はディスプレイ表示だけでなく独自表示があったほうが解りやすいのではないかと。
疑問に思ったのはシフトレバーより先の部分の使い方で、最下段はシガーソケットやUSBなどが集約されているのは理解できますが、CDスロットとの間のスペースは一等地なのにちょっと勿体ないなと。
2列目はフロア高の改善で立膝になりにくくなっているのとシートの掛け心地のアップなどから快適性は大きく向上。
ガソリン車のみ設定の3列目は体育座りなのでロングドライブは辛いものの、頭上/足元スペースは170cmくらいまでの大人であれば必要十分なスペースは確保されています。
加えてシート収納は跳ね上げ式からフロア格納式(電動)に変更されたことで、リアルな積載性は大きく向上しています。
走りはどうでしょうか。
今回、乗って即座に感じたのは「クルマのすべてが“軽い”」でした。
エンジンはガソリンが4.6リッターV型8気筒(316ps/460Nm)から3.5リッターV型6気筒ツインターボ(415ps/650Nm)に刷新。
ディーゼルは100系以来となる復活で新開発の3.3リッターV型6気筒ツインターボ(309ps/700Nm)、どちらも新開発の10速AT(200系は6速AT)が組み合わされます。
200系の4.6リッターV型8気筒は、回すとパワフルさを感じたものの、発進時はアクセルを踏んでから1テンポ遅れて「ヨッコラショ!!」と動き始めるようなイメージで、そのラグも踏まえたアクセルワークが求められました。
一方、300系はガソリン/ディーゼル共にどちらも必要なだけアクセルを踏めばOKです。
ターボラグは皆無でドライバーの意志に忠実な応答性から、オフロード走行時のような微速走行から高速合流時などの俊敏な加速、さらにワインディングでのアクセルコントロールなど、すべての領域で乗りやすくなっています。
これはエンジンの基本素性の良さに加えてギア比の適正化、さらに200kgの軽量化も効いていると思います。
ガソリン/ディーゼル共に2.5トンの巨体を軽々と走らせるパフォーマンスを備えていますが、ガソリンはランクルとは思えない軽快で雑味のないフィーリング、ディーゼルはグッと湧き出るトルクを活かした回さない余裕が印象的です。
ちなみに燃費は、東京から埼玉間(高速7割、一般道3割)を交通の流れに合わせたペースで簡易計測してみるとガソリンは8.5~9km/L、ディーゼルは12~12.5km/Lという値でしたが、まだまだ伸びそうな予感も。
参考まで200系は6~6.5km/L程度だったことを考えると大きな差です。
フットワークは「ランクルだから」という言い訳なしの進化です。
ステアリング系は信頼性の高い油圧式パワステ+電気式操舵アクチュエーターの組み合わせになった事で、軽めの操舵力になったのはもちろんステアリングの戻しやすさ、さらに路面からのキックバック低減などを実感。
センター付近に乗用車系とは違う緩さはありますが、ギアの隙間が埋まったかのような精度の高さやいいベアリングを使っているかのような滑らかさなど、心地よいダルさを残しながら正確性を大きく引き上げられています。
ちなみに電気式操舵アクチュエーターの採用でステアリング支援(LTA)も可能になっています。この辺りは信頼性と先進性の両立とランクルらしいやり方です。
シャシは、ランクル伝統のラダーフレーム構造ながらTNGA理論を用いてすべてを刷新した「GA-Fプラットフォーム」は、生産現場の匠の技と最新技術の融合で開発された物で、堅牢性&構造性と軽量化を両立。
オンロードでは普通に走っている限りはラダーフレームであることを感じさせない一体感の高いハンドリングと直進安定性、そしてあの有名な高級SUVよりもスムーズでやさしい乗り心地や静粛性の高さは200系とは別物。
ただ、重箱の隅を突くと、20インチタイヤ&ホイールはバネ下のバタつきやコーナリング時に凹凸を超えるような状況の際にいくつか条件が重なるとリアタイヤが左右にズレるような感覚を僅かに感じました。しかし、200系に比べるとそのレベルは僅かなので、心配するほどの話ではありません。
■ワインディングでのランクル300はどう進化した?
ワインディングでペースを上げて走らせると300系の魅力はさらに増します。
ボディの軽量化(アルミ材の積極的採用)や前後バランスの改善(エンジン/トランスミッション搭載位置を200系より低く(28mm)、車両後方配置(70mm)に移動)やフロントサスペンションアームの最適配置/リアサスのショックアブソーバーの最適配置による接地性の高さとスムーズな足の動きなど、基本素性の良さが走りにシッカリと表れています。
具体的には上屋の軽さや低重心化により無駄な動きが出にくくなったこと、フロントヘビーな感覚が減ったことで4つのタイヤをより効率的に使えるようになったことなどから狙い通りのラインがトレースしやすくなっており、結果として「誰でも上手に」走らせることができるはずです。
そういう意味でいうと、200系は「ワインディング“も”走れる」ランクルでしたが、300系は「ワンディング“が”走れる」ランクルといってもいいのかもしれません。
もちろん、なかには「さまざまなウィークポイントを許容しながらドライバーが上手に走らせることもランクルの旨味の一つ」という意見もありますが、語弊を恐れずにいうなら、すべてに遅れや緩さがあった200系と比べると「隔世の感」があるのも事実です。
300系にはパワートレイン/ステアリング/サスペンション(AVS)/エアコンの制御が変わるドライブモードセレクト(ZXは6種類)が採用されています。
そのなかで、「スポーツ+」は薄皮一枚剥したかのようなダイレクト感や俊敏性をアピールした走り、逆に「コンフォート」は単に快適性重視ではなく歴代ランクルを思い出すような大らかな動きをドライバーがコントロールする歓びも感じられるなど、各々のモードが解りやすいのも特徴です。
ただ、個人的にはオールラウンダーな「ノーマル」で十分だと感じました。もちろん「オレ様仕様」にセットアップ可能な「カスタム」もシッカリと用意されているのでご安心を。
※ ※ ※
今回はオンロードだけの試乗でしたが、200系で気になっていた部分はほぼ解消されていました。
オフロードはどこかのタイミングでテストしてみたいと思っていますが、筆者(山本シンヤ)のこれまでの経験から推測すると、基本素性の進化に加えて走行路面を判定し自動でモード選択する「マルチテレインセレクト」などの最新技術の活用などにより、200系を超えるオフロード性能を、「誰でも」、「安心して」、「快適」に実現しているのは間違いないでしょう。
価格は、510万円から800万円と200系(482万6800円から697万4000円)と比べると上級グレードがかなり高めに感じますが、これはディーゼルとGRスポーツが新たに追加されたためで、仮にガソリン車のZX同士で見ると約30万円高といった感じ。
性能・機能・装備アップを考えるとほぼ据え置き、いやむしろバーゲンプライスといって良いと思っています。
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実際に走る場面ほぼほぼない、説