もくじ
どんなクルマ?
ー 通常販売モデルに試乗
ー 限定のプルミエールより高価に
どんな感じ?
ー 良好なシートポジション
ー 軽快かつ素直な挙動
ー コントローラブルで楽しめる
「買い」か?
ー 軽量で身軽な挙動を好むなら
スペック
ー アルピーヌA110ピュアのスペック
どんなクルマ?
通常販売モデルに試乗
日本で乗った最初のロードインプレッションを8月にお伝えした新型アルピーヌA110に、再び試乗することができた。前回乗ったのは導入記念モデルのプルミエールエディションだったが、今回はピュア、リネージの2モデルがある通常市販モデルのなかの前者だった。
この2モデル、エンジンやシャシーなど、走ることに直結した部分に相違点はなく、あくまで装備に関して異なるにすぎない。
なかでも最大のポイントはシートで、ピュアには1脚わずか13.1kgのサベルト製一体型バケットシートが装着され、より快適志向のリネージには同じくサベルト製ながらリクラインと上下調節が可能な、しかもブラウンレザー張りのスポーツシートが標準装着される。
エクステリアで最大の違いはホイールである。径はいずれも18インチだが、ピュアにはプルミエールが履いていたのと基本は同じ、フックス製の軽量鍛造アロイがシルバーにペイントされて装着され、一方のリネージには、オリジナルA110ホイールのパターンを採り入れたデザインの鋳造ホイールが与えられる。
限定のプルミエールより高価に
さらにいえばリム幅も、ピュアの鍛造ホイールはフロントが7.5J、リアが8.5Jなのに対して、リネージの鋳造ホイールはそれぞれ7J、8Jと、0.5Jずつ狭くなる。それやこれやで両モデルの車重は、ピュアが1110kg、リネージが1130kgと、20kgの違いになる。
もうひとつの違いはボディカラーで、ピュアはブルーアルピーヌメタリックにホワイト系が2色の合計3色、リネージはブルーアルピーヌにグリトネールなるグレー系のメタリックが加わる合計2色。
ハンドル位置は基本右だが、ピュアのブルーとリネージのグレーでは左ハンドルも選択可能になる。
プライスはモデルとモディカラーによって変わり、いずれも消費税込みでピュアが790~811万円、リネージが829~841万円となっている。日本では50台限定のプルミエールエディションが790万円だったから、大半の仕様がそれより高価なわけだ。
どんな感じ?
良好なシートポジション
今回の試乗会はFSW=富士スピードウェイがベースで、まずショートサーキットでの試乗と同乗走行、その後、付近の公道での試乗というプログラムだったが、当日の工程とは順を変えて、まずはピュアの公道でのドライビングインプレッションから始めよう。
前回の試乗では、座った状態では高さ調節ができないピュアの軽量バケットシートの着座位置が、スポーツカーとしては高いのが気になった。けれども今回の試乗車は、ボルトを抜き差しすれば可能な高さ調整を最も低い位置に固定してあった。そのため、ドライビングポジション的にも、視界の面でも違和感はなく、実にいい感じだった。
一方、前回リポートしたA110にはちょっと問題があった。走行中のタイヤからの衝撃が気になってその旨を広報スタッフに伝えたら、案の定、タイヤの空気圧が燃費重視のエコモードに設定されていて、前後輪とも正規の値より0.5kgも高かったと報告されたのだ。
そこで今回、初めて正規の空気圧で乗ったのだが、乗り心地に関しては期待したほどの激変はなかった。たしかに不整路での衝撃は前回乗ったときほど強くないが、それでも猫脚のようなしなやかさを感じることはできなかった。試乗したピュアのオドメーターは600km台だったから、ダンパーやブッシュがまだ充分に馴染んでいないのだろう。
軽快かつ素直な挙動
そのことを、ルノースポールからやってきたフランス人のテストドライバー氏に尋ねてみたら、まあ3000-5000kmくらい走れば馴染むんじゃないかな、とのこと。アルピーヌ本来のしなやかな乗り味を堪能できるのは、それくらい走った後になるということらしい。
したがって、舗装の継ぎ目を越える際などには、18インチのミシュランPS4から発せられるショックがボディに軽く伝わってくるが、それでも車重1100kg強の軽量スポーツカーとしては充分快適な乗り心地だといえよう。しかも、スピードを上げるにつれてフラットさを増すライドも、いいスポーツカーの定石どおりだといっていい。
その一方で、正規の空気圧で走ったA110は、乗り心地よりもむしろハンドリングの面で好ましさを発揮した。印象としては、前回乗った空気圧過多の状態に比べて挙動が一段と軽快かつ素直で、コーナリングに前回以上の爽快感がある。いかにスポーツカーであっても、タイヤの空気圧は高ければいい、というものではないのだ。
その結果、ハンドリングは前回乗ったとき以上にアンダーステアが軽く、まさにオンザレール感覚でコーナーの連続を縫っていける。しかも今回、下りのワインディングを攻めてみて、その走り易さに驚いた。上りのコーナーが後輪に荷重を載せた安定したものなのは当然だが、下りでもテールが不用意に張り出される印象はなく、速いペースで安定して駆け下っていく。それも、前44/後56という適切な前後重量配分の賜物だろう。
コントローラブルで楽しめる
ブレーキに関しては、正直なところ、最初はもっと効いてもいいのに、と思った。ところが、下りのワインディングでペースを上げるとパッドに熱が入ったようで、明らかに食いつきがよくなり、望むだけのブレーキングパワーを得られるようになった。つまりブレーキも合格である。
ミドシップに横置きされるエンジンは、日産とルノーとのアライアンスによる1.8ℓ直4ターボで、252psと32.6kg-mを発生、ゲトラク製7段DCTを介して後輪を蹴る。パフォーマンスに対する満足度は普段乗っているクルマなどによって変わるが、少なくとも当方には0-100km/h=4.5秒というA110の加速はすこぶる爽快で、充分に楽しめた。
最後にショートサーキットを合計2周走った印象を記すと、タイトコーナーでスロットルを閉じることによってテールを張り出すことができるが、再び踏み込んだ途端に流れが止まって加速に移っていくので、危なげがない。ひとことでいって、ミドエンジンという配置から想像するより、限界付近の挙動はずっとコントローラブルだと感じた。
最後は同乗走行だったが、ルノースポールからやってきたシャシーチューニング部門のテストドライバー氏は、楽しくてしょうがないという風にfunnyを連発しながら、スロットルオフによるテールアウトコーナリングを何度もやって見せてくれた。それでももちろん、スピンしそうな印象は皆無だった。
「買い」か?
軽量で身軽な挙動を好むなら
プルミエールエディションの790万円に対して、通常販売モデルがそれより高価なのはちょっと意外ではあったが、この手のスポーツカーはプライスの数字で「買い」かそうでないかを決めるものではない。気に入れば少々高価でも買いたくなる、というのがその購入パターンだろう。
それでも敢えてライバルを探せば、前回のリポートにも書いたけれど、同じく4気筒ミドエンジンのポルシェ718ケイマンが最も近い存在かもしれない。で、そのケイマン、最も安価な素のモデルの3ペダルMT仕様が673万円、2ペダルのPDK仕様が720.2万円だから、A110はそれより明らかに高い。
しかしだからといって、A110の魅力が色褪せることはない。PDKの718ケイマンより280kgも軽い車重がA110の最大のポイントで、その軽さがヒラリヒラリとした身軽な挙動に現れているのも素晴らしい。その代わり、ガッチリとしたボディの剛性感ではケイマンに一歩を譲るが、今や街にあふれているポルシェと違って、知る人ぞ知るレアな存在であるところもアルピーヌの魅力のひとつだろう。
そういう部分に惹かれるスポーツカー好きには、ニューA110は「買い」だといえる。そのなかで、走り屋志向のピュアにするか、快適志向のリネージにするかは、まさに好みの問題だろう。蛇足ながら、スパルタン系を好む筆者なら、迷わずピュアを選ぶけれど。
アルピーヌA110ピュアのスペック
■価格 790万円
■全長×全幅×全高 4205x1800x1250mm
■最高速度 250km/h(リミッター)
■0-100km/h加速 4.5秒
■燃費 14.1km/ℓ
■CO2排出量 –
■乾燥重量 1110kg
■パワートレイン 直列4気筒1798ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 252ps/6000rpm
■最大トルク 32.6kg-m/2000rpm
■ギアボックス 7速デュアルクラッチ
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