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F1カタールGP決勝が“地獄”と化した理由とは? オコンはレース中に嘔吐も「死んでもリタイアしたくなかった」

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F1カタールGP決勝が“地獄”と化した理由とは? オコンはレース中に嘔吐も「死んでもリタイアしたくなかった」

 F1ドライバーは日々過酷なトレーニングに励むアスリートだ。しかしF1カタールGP決勝を終えたドライバーたちは疲弊しきり、レースの過酷さを物語った。

 57周のレースを終えたドライバーの多くはパルクフェルメにマシンを止め、チームのホスピタリティに戻り、汗で濡れたレーシングスーツを脱いでシャワーを浴びることができた。そして少しリフレッシュした後に、メディア対応へと移っていった。

■F1カタールGP途中棄権のサージェント、重度の脱水症状に見舞われる。過酷なコンディションで失神しかけるドライバーも

 しかし、ふたりのドライバーは例外だった。ウイリアムズのローガン・サージェントは重度の脱水症状によりリタイアを余儀なくされ、そのチームメイトであるアレクサンダー・アルボンもマシンを降りた後メディカルセンターで処置を受けた。その後ふたりは問題なしと診断され、そのまま空港へ向かい、飛行機で帰国することとなった。

 苦しんだのは彼らだけでなく、多くのドライバーから最も身体的に過酷なレースだったという声が聞こえてきた。

「これまでで最も苦しいポイント争いだった」

 7位でチェッカーを受けたオコンはレース後にそう語った。

「15周目か16周目の時点で僕は気分が悪くなって、2周に渡ってコックピットの中で吐いてしまった。『これは長いレースになるな』って思ったよ」

「僕は落ち着いて『F1で一番メンタルが強いんだ』と思い出すようにして、何とか堪えてレースを終えたよ」

「でも正直なところ、こんなにハードなレースになるとは思っていなかった。シンガポールでもレース2回分は普通に走れる。体力的にも筋力的にも、有酸素運動という面でも僕はいつも大丈夫なんだ」

「あまりの暑さにストレートでバイザーを開けたくなった。空気が無かったし、手を添えてヘルメットの中に空気を入れようとしたんだ」

「もっと息を吸って落ち着こうとすればするほど、ヘルメット内に熱がこもってきた。正直、地獄だったよ」

 自他共に認める“サウナー”のバルテリ・ボッタス(アルファロメオ)。暑さに関して耐性もある彼でも、カタールGP決勝は「拷問みたいだった」と認めた。

「シンガポールよりも厳しいと思う」とボッタスは言う。

「コックピット内の温度が上がりすぎていた。熱中症になるほどの限界に達していた」

「マシンの中は拷問みたいだった。これ以上暑いと、もう安全とは言えないよ」

カタールGPが過酷だった理由とは?

 では、なぜカタールGPはシンガポールGPよりも、そしてバーレーンやアブダビ、サウジアラビアといった同じ中東地域で開催されるグランプリよりも過酷だったのだろうか?

 単純明快な答えは、気温の高さと湿気だ。

 2022年のFIFAワールドカップが11月20日以降に開催されたのには、それなりの理由があったのだ。F1カタールGPが初めて開催された2021年大会が11月21日に開催され、2024年大会が12月1日に予定されていることも特筆すべきだろう。

 しかし今年のレースは10月初旬の多忙なスケジュールに押し込まれた。その開催時期にはもっと注意を払うべきだったのかもしれない。

 決勝が行なわれた日曜日のコンディションは、週末のどの時点よりも暑かった。風はほとんど無く、他の中東地域でのグランプリで経験する乾燥した暑さと比べると、湿度が高く感じられた。そのため、ナイトレースでもマシンは熱風を吸い込み、ドライバーが座るコックピットはサウナと化したのだ。

 アストンマーチンのフェルナンド・アロンソはレース中、シート右側が「燃えるように暑い」と訴えた。

 この位置は電子ボックスや油圧ラインが配置され、アロンソは以前にもこうした症状を訴えたことがあった。ただ今回のレースではあまりにも熱くなったため、ピットストップ中に水をかけてくれないかとチームに頼んだものの、マシンに重量を加えることはレギュレーション違反に該当するため、これは叶わなかった。

「このレース中、コックピット内は80度くらいあったよ」とオコンは続ける。

「熱を後ろに送ることができず、ドライバーが運転するコックピット内にこもってしまうから、この点で僕らはベストな仕事ができていないのではないかと思う。今回気分が悪くなってしまった原因はそれだと思う」

 問題は暑さだけではなかった。舞台となったルサイル・インターナショナル・サーキットはハイダウンフォースサーキットであり、ドライバーを絶え間なく高いGフォースが襲う。加えて、今回のカタールGPでは各タイヤセットに18周という周回数の制限が設けられ、実質的に3ストップが義務付けられた。それにより、この1戦でF1はタイヤのマネジメントが必要なく、“予選アタック”を決勝でも続けるミハエル・シューマッハー時代へ戻ったのだ。当時のF1にはブリヂストンとミシュランという2メーカーがタイヤを供給していたいわゆる”タイヤ戦争”の時代であり、そのタイヤは超高性能だったのだ。

 車速が落ちるセーフティカーもレース序盤以外は出動せず、ドライバーはほぼ全周に渡って全開走行を強いられることとなった。

「最も深刻だったのは、ピットストップを3回しなきゃいけなかったことだと思う」

 フェラーリのシャルル・ルクレールはそう語った。

「高速域でタイヤのマネジメントをする必要がなく、予選アタックに次ぐ予選アタックとなった」

「脱水症状が酷くて、視界も悪くなったし、心拍数は星の数ほど……これら全てをコントロールすることも難しかった。本当に辛かったよ」

 ルクレールが指摘する脱水症状。決勝日には多くのチームが水分補給をこまめに行なうようにとドライバーに指示を飛ばしていた。しかしマシンに搭載されたウォーターバッグの中身はすぐに熱を持ち、使い物にならなくなってしまうのだ。

 脱水症状はドライバーの集中力に影響を及ぼす危険性があり、トラックリミット違反の問題が取り沙汰されるサーキットではドライバーにより難しいシチュエーションとなる。

 カタールGPに先駆けて既に体調を崩していたサージェントやクラッシュによりリタイアしたドライバーを除き、多くが最後まで走り切ったことはF1ドライバーというアスリートの身体的、精神的な強さを物語っている。

「リタイアするという選択肢はなかった。絶対にしないね」

 オコンはそう語る。

「僕は死んでもリタイアしないよ」

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