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垣間見えたスーパーカー新・辛口松竹梅作戦──松の辛口セナに対するマクラーレン初の梅の辛口モデル

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垣間見えたスーパーカー新・辛口松竹梅作戦──松の辛口セナに対するマクラーレン初の梅の辛口モデル

「そもそもマクラーレン・セナの3分の1のコストで、絶対パフォーマンスは違っても、同じようなステアリングフィール、同じようなブレーキング性能、同じような加速感を提供できる今までにないマクラーレンなのです」(開発&マーケティング担当Darren Goddard氏)。

最先端スーパースポーツカーは今どう進化しているのか? 小沢は先日行ったハンガリーの国際サーキット、ハンガロリンクでその一端を垣間見ることができた。そう、6月28日に発表された新型マクラーレン600LTの初の国際試乗会に招かれたのだ。小沢としてもF1グランプリまで開催されるクローズドコースでのスーパースポーツ体験はひさびさである。

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さて、600LTとはどういう位置づけのスーパースポーツなのか。車名だけでは一瞬分かりにくいが、現在のマクラーレンはいわば松竹梅の3クラス分けがなされている。ざっくり1億円以上の特上松クラス「アルティメットシリーズ」に、3000万円以上の上竹クラス「スーパーシリーズ」に、2000万円以上のエントリー梅クラス「スポーツシリーズ」だ。ま、エントリーと言っても最低540psととんでもなくハイパフォーマンスだが、基本この3クラスはすべてピュアなミドシップスポーツで、微妙に異なるカーボンモノコックを骨格としている。結局どれもガチンコで硬派なスーパーカーってことだ。

問題の600LTだがベースは570psのスポーツシリーズ、570S。そしてLTはロングテールの略で、原点はかつてル・マン24時間レースで優勝した1997年型マクラーレンF1 GTRロングテール。つまりサーキット指向の超辛口グレードであることを意味し、それを松クラスのスポーツシリーズに初設定したのが今回の一番のトピックスなのだ。

ちなみに昨年末発表の特上松クラスの超辛口モデル、限定500台のマクラーレン・セナが約1億円でエンジン出力800ps。かたや600LTはおそらく年内限定らしいが台数限定はなく、日本正規価格3000万円切りの2999万9000円で600ps。パフォーマンスは劣るが価格的には相当お買い得感高し。これでテイストがセナに近ければ、言うことナシってワケだ。

気になる600LTの辛口っぷりだが、ぶっちゃけ相当なレベルだ。マクラーレンとしてLTの名を与えるのは実は3台目で、3年前に500台限定の675LTが出ているが、コチラはスーパーシリーズの650Sをベースとし、エンジンパワーを25psあげて675psにあげているほか、ボディパネルを35%、シャシーを30%新作して約100kg軽量化。結果お値段は650Sより1000万円以上高い4353万円。

ところが新作600LTは、ベースとなった2556万円の570Sに比べ約440万円高で、それでいてカスタムメニューは信じられないほど豊富。

パワーユニットはお馴染みのマクラーレンオリジナルの3.8リッターツインターボV8をキャリブレーションし直し。最高出力を30ps上げて600ps、最大トルクも20Nm上げて620Nmにし、同時にトルクカーブをよりリニアにしている。ギアボックスは570Sと同じ7速SSG(シームレスシフトギアボックス)だが、よりギアチェンジ時間が速められている。

だが、キモはエンジンパワー以上にボディの軽量化とサスペンションの締め上げだ。570Sをベースにパーツの23%を新作、全体で約100kgも軽量化している。トータル車重は1250kgを切る1247kgだ。

改良パーツはさまざまで、シート、ホイール、アルミサスペンション、カーボンブレーキ、エキゾースト、ハーネス、カーペット、ガラスはすべて軽量化。加えルーフ、フロントフェンダー、サイドシル、リアウィングをすべて軽量カーボンパーツに替え、エアコン、オーディオ、ドアポケット、グローブボックスをすべて取り外し。もっとも一部オーダーで付けることも出来、今回の暑いハンガロリンクはクーラー付きで走ることができたのだが。

足回りも車高を8mm下げているだけでなくスプリングレートは570Sに比べ、フロントが13%、リアが34%固められ、絶対的にも675LTより硬い。同時にアンチロールバーもフロントが50%、リアが25%、570S比で固められている。

制動力に関しても手抜きはなく、ブレーキはスーパーシリーズ用の軽量カーボンタイプを使い、タイヤはセミレーシングのピレリPゼロ・トロフォRの600LT特注。結果、0→100km/h加速は2.9秒と3.0秒のフェラーリ488GTBより速く、ランボルギーニ・ウラカン・ペルフォルマンテに匹敵。

走り・曲がり・止まりを全域でテコ入れし、いつ何時でもサーキットを本気で走れるように仕上げたマクラーレンなのだ。

さて人生2回目のハンガロリンク・フルコース試乗。前回はメルセデス・ベンツAクラスで走ったので少し余裕もあったが、600psのマクラーレン600LTでは全くなし。マジメな話、4速アクセル全開で抜けるコーナーではカラダをサポートする左膝がガクガク震えた。これまたひさびさの体験だ。

全長4.3kmチョイの中にコーナーが16カ所も連続するハンガロリンク。コーナー手前でフルブレーキしてはフル加速しての繰り返し以上に、軽くアクセルオフで抜けるコーナーも時折あってかなりシビれる。1カ所リズムを狂わせるとそれが後まで響いたりするのだ。

しかもマクラーレンのサーキット試乗スタイルがまた異色。大抵は、先導車のリードのもと4~5台が連なって走るカルガモスタイルが多く、前が遅いと全体ペースが遅く、フラストレーションが溜まる。ところがマクラーレンではレポーターそれぞれの助手席に、インストラクターが1人1人座り、個別でペースを指示する。しかもこのインストラクターがレポーターの運転技量を経験で読んで、かなりのペースで走らせる。これがドキドキなのだ。

なにしろ車重1.2トンちょいで600psの600LT。さすがに0→100km/h、2.9秒の実力は伊達じゃなく、アッという間にほとんどのコーナーで100km/hを超え、ストレートエンドでは200km/hに達する。

だが、不思議なのはその速さと同時に味わえる不可解な安心感で、直前にベースの570Sでコースの下見をすることができたので「LT」との違いがよく分かった。

そもそもの570Sでもミドシップカーならではのステアリングのダイレクト感とリアタイヤをたっぷりと感じられたマクラーレン。だが、600LTになって30ps速くなったと同時に100kgの軽量化もあって実質100ps近いモア・パワーを得ているのに、逆に恐くないのだ。

締め上げられた足回りのお陰でステアリングのダイレクト感はダン違いかつ濃厚になり、コーナリング中のフィール変化もすぐさま伝わってくる。

さらに決定的なのがカーボンブレーキでまあ良く止まる止まる。ハンガロリンクは1コーナー手前で時速200kmを超えるが正直10周ほど走って毎回ブレーキを余らせてしまっていた。余裕で止まれると分かっていても手前から踏んでしまう。それが600LTの凄さなのだ。

最後にインストラクターの運転の同乗走行も出来、そこで600LTの真価を知り、まだまだ行けたことが分かった。実はもっとコーナーの奥まで突っ込んでリアタイヤを滑らせ、レーシングカートのように走れるクルマなのだ。

これぞまさしくリアルレーシングカー体験。今まで乗ったどのクルマよりダイレクト感があって操る感も得られてしかも速い。こういう世界を600psマシンで体験できるとは知らなかった。

ある意味2999万9000円は安いのである。とても買える立場ではないのだが。

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