コロナ禍のトヨタを救ったのは日本で絶版となった“あの名車”!?
9月29日に発表されたトヨタの2020年8月世界販売台数は前年同月比89.4%、日本での販売台数も同89.4%、世界生産台数も同93.3%、日本での生産台数も同88.5%と、新型コロナウイルス禍によるダメージからの回復がいち早く始まっている。
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なかでも好調だったのが中国で、8月の販売台数は前年同月比127.2%、生産台数も同115.0%と前年を大きく上回った。その牽引車となったのが日本では20年前に絶版となった「レビン」だったという。
本稿では、かつてのレビンとはまったく違うモデルになったレビンの今を紹介したい。
文:永田恵一/写真:TOYOTA
【画像ギャラリー】懐かしの日本版の写真も! 日本と中国の新旧レビンを見る
■そもそもレビンってどんなクルマ?
カローラクーペのスポーツグレードよりもさらに「ホットな」モデルとして登場した初代カローラレビン
レビンは、カローラの派生車となるスポーティな2ドア車で、カローラが2代目モデルだった1972年3月に「カローラレビン」として兄弟車のスプリンタートレノともに登場。
初代モデルのトップグレードは、1クラス上のセリカに搭載されていた1.6L直4DOHCエンジンを搭載しており、そのパワフルな走りに当時の若者を魅了された。
レビン/トレノは、1983年登場で、1.6L直4 DOHCで名機と呼ばれている4A-GE型エンジンを初搭載し、今でも大人気のAE86型を含む4代目モデルまでがFR(後輪駆動)車で、5代目モデルから最終型となった7代目モデルはFF(前輪駆動)車に移行した。
しかし、1990年後半からのRVブームの影響による2ドア車の需要減少もあり、2000年にこちらも最終型となったセリカの7代目モデルを実質的な後継車とし、惜しまれながら絶版となった。
20年前に惜しまれつつ絶版となったレビンはスポーティな2ドア車だった。2014年に中国で登場したレビンは4ドア車として甦った
レビンが中国で復活したのは、日本での絶版から14年後の2014年の4月に開催された北京モーターショーだった。
この時、現在のカローラスポーツの前身となるオーリスを4ドアセダンにしたモデルとして中国で販売される。
■レビンとカローラは何が違う?
2018年にモデルチェンジして2代目となった中国仕様のレビン(左)とカローラ(右)
中国仕様のカローラとレビンの関係・違いは、「中身は同じだけれどオーソドックスなフロントマスクなどを持つカローラとスポーティで若々しいレビン」という具合で、これはカローラと兄弟車だったスプリンターの関係に近い。
日本で兄弟車がある大きな理由は、以前はディーラー系列(トヨタならトヨタ店、トヨペット店、カローラ店、オート店、ビスタ店)があったので、ディーラーに販売するタマを供給するためだが、中国もそれに近い。
というのも中国は輸入車に対する関税が今でこそ15%に緩和されたが、しばらく前まで非常に高く、レクサスに代表される高級車、高額車以外は関税を避けるため中国で現地生産をしたい。
その条件として「中国以外の自動車メーカーは中国の自動車メーカーと50:50となる対等の資本関係で合弁会社を設立する」というものがあり、トヨタは第一汽車(略して一汽)と広州汽車、日産は東風汽車、ホンダは東風汽車と広州汽車が中国でのパートナーとなっている。
そのため中国では、トヨタは一汽トヨタと広州トヨタ、ホンダも東風ホンダと広州ホンダという、同じトヨタ、ホンダでも別会社のトヨタ、ホンダがある。
こうした背景もあり2014年まで中国で販売されるカローラは一汽トヨタ製と広州トヨタ製があったのだが、2014年のフルモデルチェンジを期に中国で販売されるカローラは、一汽トヨタがカローラ、広州トヨタはレビンという「別の車名だけど細部だけが違う」アルファードとヴェルファイアのような兄弟車となった。
なお、こういった中国製日本車の兄弟車は、トヨタでは一汽トヨタ、広州トヨタの順にC-HRとIZOA、ワイルドランダーとRAV4、ヤリスとVios、ホンダでは広州ホンダ、東風ホンダの順にヴェゼルとXR-V、オデッセイとエリシオン、アヴァンシアとUR-Vなどがある。
■海を渡って蘇った新型レビンとは?
2018年の広州モーターショーで登場した2代目レビン。欧米仕様のカローラセダンを中国仕様にしたものだ
中国の日本車事情の説明がだいぶ長くなったが、2018年11月の広州モーターショーで登場した2代目モデルとなる現行レビンも、中国で販売されるカローラの兄弟車で、カローラとの違いは初代モデルと同様だ。
クルマ自体は欧米仕様のカローラセダンを中国仕様にしたものなので、現行型から3ナンバーボディとなった日本で販売されるカローラセダンよりホイールベースを含めた全長、全幅は大きい。
インテリアは基本的に日本のカローラセダンと共通だが、ダッシュボード上に置かれるモニター付きのディスプレイオーディオに加え、現行プリウスPHVのような上下に長いモニターも設定される。
パワートレーンはCVTと組み合わされ、レビンでは185Nmの最大トルクに由来する185T系、カローラではD4-T系のグレード名になる1.2L4気筒ターボエンジンと、レビン/カローラともにデュアルエンジン系という妙に中国らしいグレード名となる現行プリウスなどと同じ1.8Lの2モーターハイブリッドの2つだ。
どことなく未来的なリアのボトム部分。下向きに取り付けられたマフラーがクリーンなイメージだ
さらにレビン/カローラともに先代プリウスPHVに近い存在となるプラグインハイブリッドもデュアルエンジンE+のグレード名を使い、先代モデルの継続生産という形で設定されている。
中国での価格はグレード、装備による差はあるが、レビン/カローラともに実質的には同等で、レビンでは1.2L 4気筒ターボ車が185T/11万5800元(約180万2000円)からで、ハイブリッドのデュアルエンジン/13万3380元(約208万2000円)から。
先代モデルとなるプラグインハイブリッドのデュアルエンジンE+/20万3800元(317万1000円)の車両価格に1万元(約15万6000円)の補助金があるので、実質301万6000円からとなっている。
* * *
カローラというクルマは実によくまとまったクルマなので、中国でも人気なのはよく分かるが、特にレビンが売れているのはスタイルがより支持されている、値引きに代表される販売条件がカローラより有利といった事情があるのかもしれない。
いずれにしても20年前に絶版となった2ドアだったかつてのレビンは、14年後に中国で復活し、その6年後には中国で人気車となっていることを今頃どこかで驚きながら喜んでいるのではないだろうか。
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