実質価格500万円台、一般的な使用なら水素充填は月1回
トヨタの燃料電池車「MIRAI」がフルモデルチェンジ、2代目へと進化しました。初代では燃料電池スタックはさておき、モーターや二次バッテリー(ニッケル水素電池)など既存のハイブリッドカーからの流用パーツも目立っていましたが、新型MIRAIは駆動方式を後輪駆動に変え、燃料電池スタックもフロントベイに収めるなどパッケージングを刷新。バッテリーもリチウムイオン電池にアップデートされています。
燃料の水素も高圧タンクを3本に増やすことで、搭載量を約4.6kgから5.6kgに増やし、ユニット全体の効率をあげることでWLTCモードで約850kmと航続距離を大きく伸ばしています。これだけのポテンシャルがあれば、実用上でも一充填で500km以上走ることが期待できます。平均的な自動車ユーザーの年間走行距離は6000~8000kmあたりが多いといわれ、単純計算では月に1度水素を充填すれば事足りるともいえ、自宅や事業所の近所に水素ステーションがなくとも、それなりの生活圏の中に水素ステーションがあれば運用も問題ないといえます。
先代モデルでは生産性による納車の遅れが問題となりましたが、新型MIRAIは生産能力を10倍に増強したといいますから、有害な排ガスを出さないゼロエミッションビークル(ZEV)として有力な候補に上がってくるといえるのではないでしょうか。価格帯としても補助金を考慮すれば500万円台となり、本格的に電気自動車以外のZEVに選択肢が生まれたともいえそうです。
意識高い系も大満足の“走る空気清浄器”という発想
ところで、新型MIRAIには電気自動車オーナーの筆者もうらやむ機能が備わっています。それは、走る空気清浄器ともいえる機能です。具体的には、エアクリーナーエレメント(ダストフィルター)でPM2.5レベルの細かい粒子まで捕捉し、さらにケミカルフィルターで有害な化学物質を除去するとともに、PM2.5の発生を抑制するというもの。
燃料電池は水素と酸素を反応させる仕組みですから、発電のために走行時に空気を取り入れます。そうした燃料電池車の特徴を活かして、吸入した空気をきれいにして排出するという機能を実現したわけです。走行中にきれいにした空気量は、センターディスプレイ上で確認できるというのも、所有満足度につながりそうです。
走行中に空気をきれいにする機能としては、かつてボルボがラジエターに触媒機能を与え、有害なオゾンを酸素に変えるという技術を採用したこともありますが、エンジン車ではいくら走行中に空気をきれいにするといっても、自らが排出する有害物質があります。しかし、MIRAIは水しか排出しないZEVです。つまり、走れば走るほど空気をきれいにする新概念「マイナスエミッション」を実現するというわけです。
これは同じZEVの電気自動車では真似できない芸当です。空気を汚さないゼロエミッションから空気をきれいにするマイナスエミッションへ、環境対応車に大変革が起きたといえます。環境負荷アリのエンジン車、環境負荷ゼロの電気自動車、そして空気をきれいにする燃料電池車では勝負の土俵が異なるともいえるのです。
充填時間は約3分。水素スタンドが整備されればEVより有利
たしかに水素ステーションというインフラの整備はまだまだ進んでいるとはいいがたく、自宅などで充電できる電気自動車のほうが、普及を考えると有利です。とはいえ、水素充填は約3分で終了するといいますから、インフラさえ整備されれば連続走行の優位性は燃料電池車にあります。
前述したように新型MIRAIは生産能力も高めたということで、初代のように企業や官公庁といったフリートユーザー中心ではなく、多くの市民がマイカーとして選びやすくなりました。ユーザーが増えれば、水素ステーションが増えるというのが資本主義のメカニズム。果たして、新型MIRAIは日本の水素社会化をブーストする存在になるのでしょうか。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
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みんなのコメント
なんと県全体で1件も無しでした。
当のトヨタの販売店ですら装備されていない・・・
これでは買っても飾っておくだけ、走行不可ではありませんか・・・
まだまだ普及はむりでしょうね~
そもそも水素っていくら位するんだろう?