「4ドアクーペ」という新たなジャンルを生んだメルセデス・ベンツCLSが7年ぶりにフルモデルチェンジされた。今回は話題の3L直6ターボエンジンとISGを搭載したモデルをレポートする。(Motor Magazine 2018年9月号より)
乗る者を魅了するインテリアはまさに“メルセデス・マジック”
CLSが最初にお披露目されたのは2003年のフランクフルトモーターショー。クーペのようなダイナミックなフォルムにサルーンの快適性を兼ね備えたスタイリッシュなボディラインを身にまとい、4ドアセダンに新たなジャンルをもたらした。
それは3代目となった新型でも変わらない。また、このモデルはメルセデス・ベンツが掲げるブランドエッセンス「アルティメイト ラグジュアリー」を基に誕生したモデルでもある。
目の前に現れた新型CLS、そのメインカラー「セレナイトブレーマグノ」に目を奪われた。そう3代目のメインカラーは、艶のないマットカラーなのだ。これまでの華麗なイメージからは想像できないほどワイルドな風格だ。
エクステリアも大幅に刷新された。2代目にあったフロントからリアにかけてのサイドキャラクターラインや大胆に膨らんだマッシブなリアフェンダーなどは廃され、緩やかな曲面を用いた新たな手法で構成されている。
ドライバーズシートに座った途端、そこに広がる魅惑のインテリアに引き込まれてしまう。トーンを抑えたシックなベンガルレッドのレザーに包まれたコックピットにグレーアッシュウッドのインテリアトリム、明暗を巧みに使い分けたカラーコーディネートの中にスポーティとラグジュアリーを見事に表現する手法は、まさに“メルセデス・マジック”だ。
パワーユニットはマイルドハイブリッドとディーゼルの2種
CLSに用意されるラインナップは、ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)と48V電気システムを採用した3L直6ターボエンジンを搭載する「CLA450 4マティック スポーツ」、2L直4ディーゼルターボを搭載する「CLS220dスポーツ」の2モデルの構成。
今回試乗したモデルは前者の「CLA450 4マティック スポーツ」、このモデルのみ選択できる左ハンドル仕様だ。
「20年ぶりに復活した直列6気筒エンジンは、どのようなサウンド聴かせてくれるのだろうか」。そんな期待を胸にスタートボタンを指先で軽く触れると、ボンネットの奥の方で微かに鼓動を感じるほど静かに迎えてくれた。
低速時に動力補助として作動する電気モーターは、オルタネーターとスターターとして機能するが、従来のスターターより高出力モーターとなったことでエンジン始動時の振動抑制にも大きく貢献している。
500Nmを発生する完全バランスの直6ターボエンジンは1950kgのボディを軽快に走らせる。低速時には電気モーターがアシストしているのだが、それを体感できるようなチープな味付けなど微塵も感じさせない。
そして、ひとたびアクセルペダルを深く踏み込むと強烈な加速とともに“至高のグランツーリスモ”の一面を覗かせる。しかし、常に“優雅”であり続ける。そう思わせるのは、「エアボディコントロールサスペンション」に他ならない。
このサスペンションは、EクラスとSクラスで体感しているが、久しぶりに乗ってみると改めてその素晴らしい乗り心地に感銘を受けた。不快な突き上げなど皆無で、カーブやブレーキングではロールやピッチングをしっかりと抑制してくれる。これならパッセンジャーカーとしても十分に役目を果たしてくれるだろう。
新しいデザインテイストを取り入れたエクステリアに始まり、12.3インチのダブルディスプレイに広がる最先端のインフォテインメントシステム。そして20年ぶりに復活した直6ターボエンジン+ISGのパワーユニットなど、話題は尽きない。
ディーゼルモデルも気になるところだが、やはりこのクラスのメルセデス・ベンツは6気筒以上のガソリンエンジンで優雅に乗りたいものだ。(文:黒田健一)
メルセデス・ベンツ CLS 450 4マティック スポーツ 主要諸元
●全長×全幅×全高=5000×1895×1425mm ●ホイールベース=2940mm ●車両重量=1950kg ●パワーユニット=直6DOHCターボ+モーター ●エンジン排気量=2996cc ●エンジン最高出力=367ps/5500-6100rpm ●エンジン最大トルク=500Nm/1600-4000rpm ●モーター最高出力=10ps ●モーター最大トルク=250Nm ●トランスミッション=9速AT ●駆動方式=4WD ●車両価格=1038万円
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