この記事をまとめると
■総額100万円以内で購入できるこだわりのドイツ車を探す
ウソだろ! そんな開き方!? 個性にもほどがあるドアをもつクルマ5台
■ドイツ人の質実剛健で倹約家な気質に沿ったシンプルなクルマが候補となる
■数世代前のモデルであればメルセデス・ベンツやBMWなども狙える
100万円以下でドイツ人気質の詰まった名車を探す
「総額100万円以内で買える、ドイツ車のエッセンスが詰まったドイツの名車を5車種ほど紹介せよ」とのオーダーだが、なかなか難しい注文である。
まず「ドイツ車のエッセンス」とは何か? というところから考えてみるとしたら、主には下記のとおりとなるだろうか。 ・ボディのガッチリ感が強い ・高速域での安定性が良好(アウトバーンを走らなければならないため) ・衝突安全性に優れる(アウトバーンを走らなければならないため) こういった資質を漏れなく含有しているドイツ車は、もちろん多数ある。だが「総額100万円以内で買えるもの」という条件が付くと、いきなり難しくなるのだ。
安く買える中古のドイツ車は、ガッチリ感も高速安定性も安全性も「いまやさほど特別ではない」となっている場合も多い。もちろん年式的に古くても、いまだ超絶的なガッチリ感などが堪能できるモデルもある。しかし、そういった名車系の良質物件は、折からのネオクラシックブームにより相場が高騰しており、なかなか100万円以下で買える状況でもない。
ということで、今回のオーダーに対してはお手上げ状態なわけだが、内容を「ドイツ車のエッセンスが詰まった名車」から少し捻じ曲げて「“ドイツ人”のエッセンスが詰まった100万円以下の中古ドイツ車」とすれば、5車種ぐらいは挙げられるかもしれない。
ということで、ちょっと考えてみよう。
まずドイツ人といえば「質実剛健」というフレーズがしばしば用いられるが、要するに「合理的な倹約家である」ということだ。無駄な消費は好まない人々である。もちろん金もちは普通にメルセデスなどを買うが、日本人のように「とくに金もちではない人が、残価設定ローンで白いCクラスを買う」みたいなことはほとんどない。
そんなドイツ人庶民の倹約マインドを体現しているクルマのひとつが「フォルクスワーゲン・ゴルフ」だろう。よく走るきわめて優秀なクルマだが、とくにゴージャスでも大ぶりでもないので、そんなに高くはない。ならば無駄にベンツなどを買う必要はいっさいない。ゴルフでぜんぜん十分じゃないか──という倹約精神および合理精神の権化的存在である。
そんなフォルクスワーゲン・ゴルフも、日本仕様の現行型を新車で買うとなるとけっこう高いが(一番安いやつでも341.1万円である)、ゴルフ7こと先代のゴルフであれば、走行5万kmぐらいのTSIハイラインまたはTSIコンフォートラインでも総額90万円前後でイケる。
次に考えられるドイツ精神は「毎日の食事に無駄な金と無駄な労力は使わない」ということだろうか。
日本人はつい毎日の食事にエンターテイメント性を求め、たまにちょっと高級な食材を買ってみたり、盛り付けにこだわってみたり、献立に変化もつけたがる。だが、ドイツの人々の平日の夕食はパンとチーズ、ハム、そして少々の野菜で構成される「冷たい食事(Kaltes Essen)」がひたすら繰り返される場合が多い。彼の地では「そのほうが台所が汚れなくていい」ということになっているのだ。
この「地味だが合理的であり、よく考えてみればドイツのハムやチーズは美味いから、それでいいのかもしれない」という精神を体現しているクルマは、たとえばフォルクスワーゲン・パサートヴァリアントだ。パサートヴァリアントは華美な部分やエンターテイメント性はあまり有さない地味なステーションワゴンだが、味と栄養(性能や実用性)は十分以上であり、価格も、Dセグメントの輸入ステーションワゴンとしては比較的安価。まさに合理的な夕食……じゃなかったクルマである。
もちろんそんなパサートヴァリアントも、日本仕様を新車で買おうとすると一番安いグレードでも521.6万円だ。しかし、先代の中古車であれば、走行5万km程度の物件が総額90万円前後。
地味だが、毎日乗っても飽きないニュアンスのステーションワゴンである。
メルセデス・ベンツやBMWなら数世代前のモデルが狙い目
次なるドイツ精神は「誇り高い」ということになるだろう。まぁあえて悪くいうなら「尊大」ということで、その昔は大日本帝国も三国同盟ではいろいろと苦労したようだ。また、ドイツの自動車メーカーとコラボした経験を持つ国産自動車メーカーのエンジニアからは、「彼らのプライドの高さには閉口した」的な話をしばしば聞く。
そんな、良くも悪くも誇り高く尊大なドイツ精神を日本において感じたいならば、「ベンツ」に乗るに限るだろう。メルセデスというよりもベンツと呼びたくなるあの偉そうな感じというか何というかは、国産車ではなかなか感じ得ないものである。
真のドイツ的尊大さを味わうには、現行世代のEQSセダンやメルセデスAMGのG63あたりに乗るのが一番だが、それらはさすがに総額100万円以下で買うのは不可能。ならば、次善の策としてW204型Cクラスの後期型を選ぶのがちょうどいい落としどころだろう。
W204こと先々代のCクラスは、前期型においてはいまひとつ質感に乏しく、「ドイツ的尊大さ」はイマイチ感じにくいものだった。だが、2011年5月以降の後期型は、品質、質感ともに向上。さすがに前述したEQSセダンやメルセデスAMG G63ほどの尊大さを味わうことはできないが、その一端を垣間見ることはできる。そして総額90万円台にて、C 180またはC 200アバンギャルドのAMGスポーツパッケージが見つかるはずだ。
そして、お次に堪能してみたいドイツ精神は「冷血な感じ」だろうか。
といってもこれは真のドイツ人っぽさでは決してなく、単に戦争映画やアニメの影響を受けてのものである。血も涙もない、そして笑顔を見せることもいっさいない、デスラー総統っぽい感じの人物像だ。……なんてことをいっていると、在日ドイツ大使館からクレームが入りそうだが、「勝手な妄想、大変申し訳ございません」と陳謝したうえで先へ進もう。
そんなデスラー総統っぽい雰囲気を日本において堪能したいのであれば、選ぶべきブランドはアウディに限る。あのクールな世界観は、日本的な温情とは真逆の冷血なニュアンスに満ちており、いかにも素敵だ。
そして総額100万円以下の予算でアウディを入手するとなると、先代A4アバントの後期型がいちおうベストかと思われるが、ファミリーユースにも向いているステーションワゴンでは、デスラー総統っぽい冷血さが若干減じてしまう。
そのため、ここはクールな2+2クーペである「アウディTT」でどうだろうか。現行型はさすがに総額100万円以下では無理だが、先代であれば、1.8または2.0 TFSIのまずまず良好な物件を、総額90万円台で見つけることができるだろう。
最後に堪能してみたいドイツ人精神は「しっかり長期休暇を取る」という部分だ。
平日の夜は冷たい食事(Kaltes Essen)をひたすら繰り返す彼の地の人々であるが、バカンス(ドイツ語ではUrlaub)となれば、仕事のことなどお構いなしにばっちり長期有給休暇を取り、どこか遠くへと出かけていく。たった1日か2日の有休を取るのもためらわれることがある日本社会に暮らす身としては、ドイツ人労働者の「有休平均取得日数は30.9日で、取得率はほぼ100%!」という力強い労働マインドあるいは休暇マインドを、一度見習ってみる価値はあるはずだ。
そして、そんな休暇マインドを感じさせるドイツ車といえば、フォルクスワーゲンのトランスポーターあたりが適任なのかもしれない。だが、総額100万円以下では無理であり、なおかつトランスポーターを買っても有休の平均取得日数がわずか10.9日で、平均取得率も62.1%にすぎない日本では、あまり使い道がない(※数字は厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」より)。
となれば、優雅でスポーティなオープン2シーターであるBMW Z4の先々代モデルを総額90万円前後で購入するのはいかがだろうか。
ソフトトップを下ろして、どこかへひとりあるいはふたりで日帰り旅行に出かけてバカンス気分にひたるというのが、ドイツ精神を味わううえではちょうどいい選択となるのかもしれない。
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西ドイツ車の優れたデザインとステータス、堅牢で安心感あるボディー、圧倒的な走行性能は100万円の中古でもしっかり味わえるし故障の心配は国産も同じだねw