2023年10月28日、全日本スーパーフォーミュラ選手権第8戦が三重県の鈴鹿サーキットで開催され,
野尻智紀(TEAM MUGEN)が今季3勝目を挙げた。宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S) が2位、3位には太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)が入り初の表彰台を獲得した。(文:河村大志/写真提供:日本レースプロモーション)
追いかける立場の野尻がポールポジション獲得で3ポイント加算
近年まれにみる激戦が繰り広げられている2023年のスーパーフォーミュラ。ここまで7戦を消化し、最終戦の鈴鹿ダブルヘッダーを残すのみとなった。トップの宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S) が94点、ランキング2位のリアム・ローソン(TEAM MUGEN)86点、同3位野尻智紀(TEAM MUGEN)84点、ランキング4位平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)51点、そしてランキング5位坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)50点となっており、この5名がチャンピオン獲得の権利を残している。
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しかし、平川と坪井は連勝が必須条件で、尚且つ上位3名の結果次第という状況。実質的に宮田、ローソン、野尻の3人のチャンピオン争いとなる。
チャンピオン決定戦となる鈴鹿ラウンドを前に、ドライバー変更が発表されている。TCS NAKAJIMA RACINGから参戦している山本尚貴は9月17日に行われたスーパーGT第6戦SUGOの決勝レースでクラッシュ。精密検査の結果、スーパーフォーミュラ第8戦と第9戦を欠場することが決まっている。山本の代役は「スーパーサブ」である大津弘樹が担当。代役参戦ながら今季3戦目に臨む。
そしてサプライズとなったのが大草りき(TGM Grand Prix)の参戦だ。TGM Grand Prixのステアリングを握っていた大湯都史樹が鈴鹿ラウンド直前にチームを離れること発表。代役については様々な憶測が飛び交う中、抜擢されたのが大草だった。
大草は昨年、スーパーGTの300クラスでルーキーながらチャンピオン争いに加わるなど印象的な走りを見せていた。しかし、フォーミュラの経験は全日本F3とフォーミュラ・リージョナルのスポット参戦のみ。フォーミュラの実績が極めて少ないため、大草の代役参戦は驚きを持って報じられた。
今週、月曜日の夕方に代役の要請を受け、文字通りぶっつけ本番の挑戦となった大草だが、金曜日に行われたフリー走行では順調にプログラムを消化。ミスを犯すことなく周回を重ね、トップから1秒1落ちの17番手でフリー走行を終えた。予選ではグループB敗退となったが、22台中17番手と奮闘。決勝は9列目からのスタートとなった。
一方、チャンピオン争いを繰り広げる宮田、ローソン、野尻はフリー走行から上位につけ準備万端。野尻がトップ、宮田が2位、ローソンが4位につけた。迎えた予選Q1でもランキング上位3名は順当にQ2に進出。その中でも速さを見せたのはランキング3位ながらも金曜日にトップタイムを記録した野尻だった。
ポールポジションが決まる予選Q2はTEAM MUGENの2台がセクタータイムを更新しながら周回する中、佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)がデグナーでストップ。赤旗が掲示され、この煽りを受けた野尻やローソンをはじめとする数台がタイムを残すことができなかった。
セッションは残り3分で再開となる。アタックラップで赤旗となりユーズドタイヤしか残っていないローソンはタイム更新が難しい状況。一方、ライバルの野尻はスクラブ済みのニュータイヤに交換しており、ローソンが野尻を上回るには厳しい状況だ。そこでローソンは野尻のタイヤ温度を挙げさせない作戦に出たのか、ウォーミングラップで強引に野尻の前に出てペースをコントロールする。しかし、翌週のアタックラップで冷静に野尻は最速タイムを刻みポールポジションを獲得。ローソンはユーズドタイヤでのアタックのため予選を7番手で終えた。
ランキングトップの宮田は予選2位。野尻に3ポイント詰められる結果となったが、決勝に照準を合わせている。野尻がポールポジションを獲得したが、宮田とローソンの並々ならぬ思いも感じることができる予選であった。
2023年 スーパーフォーミュラ 第8戦 予選結果(Q2)
1. 野尻智紀(TEAM MUGEN)1’37.292
2. 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)1’37.599
3. 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING) 1’37.637
4. 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)1’37.706
5. 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING) 1’37.717
6. 平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)1’37.856
7. リアム・ローソン(TEAM MUGEN)1’37.878
8. 山下健太(KONDO RACING)1’37.935
9. 小林可夢偉(Kids com Team KCMG)1’38.222
10. 松下信治(B-Max Racing Team)1’38.840
11. 佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)2’08.056
12. 福住仁嶺(ThreeBond Racing)2’08.836
決勝は5周目のクラッシュで赤旗終了!野尻が優勝で宮田との差は6.5に
決勝の天候は晴れ、気温21度、路面温度26度というコンディション。スタートはポールシッターの野尻が抜群の蹴り出しでホールショットを奪う。一方、2万グリッドの宮田は、4番グリッドから好スタートを切った太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)に前に出られ3番手で1コーナーをクリア。
しかし、宮田は冷静にオープニングラップで太田を射程距離内にとらえ2周目の1コーナーでオーバーテイクし2番手を奪い返した。その後方ではスタートでポジションをひとつ上げたローソンが5番手の坪井にもロックオン。5周目の1コーナーで坪井をパスし5番手に浮上する。
その後方では130Rで大きなクラッシュが発生。17位争いをしていた笹原右京(VANTELIN TEAM TOM’S)と大津が接触しコースアウト。笹原のマシンははタイヤバリアに乗り上げ、マシンは真っ二つになるほどの凄まじいクラッシュであった。
このアクシデントによりSCが入り、赤旗が掲示されレースは中断。中断が続く中、15時30分にレース終了が正式に発表された。
結果は3周完了時点の順位が反映され、野尻、宮田、太田の3名が表彰台を獲得。ローソンは坪井を抜いたものの、3周完了時点ではオーバーテイクが完了していないため6位となった。また、レース距離の75%を消化していないため、ハーフポイントが付与された。
この結果、ランキングトップの宮田が103.5ポイント、ランキング2位の野尻が97ポイントとなり、両者のポイント差は6.5ポイントにまで詰まっている。ランキング3位のローソンは6位、2.5点を加算し、88.5ポイント。最終戦では厳しい戦いを強いられることになった。
チームチャンピオンシップではTEAM MUGENが最終戦を前にチームタイトルを獲得。翌日に行われる最終戦で2冠を狙う。
2023年 スーパーフォーミュラ第8戦 決勝リザルト
1. 野尻智紀(TEAM MUGEN)3周
2. 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S)
3. 太田格之進(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
4. 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)
5. 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)
6. リアム・ローソン(TEAM MUGEN)
7. 平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)
8. 小林可夢偉(Kids com Team KCMG)
9. 福住仁嶺(ThreeBond Racing)
10. 佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING)
2023年 スーパーフォーミュラ ドライバーズランキング(第8戦終了時点)
1. 宮田莉朋(VANTELIN TEAM TOM’S) 103.5
2. 野尻智紀(TEAM MUGEN) 97
3. リアム・ローソン(TEAM MUGEN) 88.5
4. 平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL) 53
5. 坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING) 53
6. 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)41
7. 山下健太(KONDO RACING) 30
8. 大湯都史樹(TGM Grand Prix)22
9. 佐藤蓮(TCS NAKAJIMA RACING) 17.5
10. 小林可夢偉(Kids com Team KCMG)17.5
2023年 スーパーフォーミュラ チームランキング(第8戦終了時点)
1. TEAM MUGEN 163
2. VANTELIN TEAM TOM’S 98.5
3. P.MU/CERUMO・INGING 62
4. ITOCHU ENEX TEAM IMPUL 53
5. DOCOMO TEAM DANDELION RACING 48.5
6.KONDO RACING 40
7. TCS NAKAJIMA RACING 31.5
8. Team KCMG 21.5
9. TGM Grand Prix 20
10. docomo business ROOKIE 13
11. ThreeBond Racing 9
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