もくじ
ー 衝撃的な新型BMWのフロントグリル
ー どうしてグリルが大きくなったのか?
ー 「挑戦的なデザイン」はひとびとを惹き付けるか?
ー グリル拡大 考えられる理由は1つだけ
AUTOCARの独断と偏見 リアが「ひどい」「美しい」クルマたち
衝撃的な新型BMWのフロントグリル
今週の「彼らは何を考えていたんだ?」ニュースをお届けしよう。提供はBMW。執筆は、わたし英国版AUTOCAR総合編集長のマット・プライヤーだ。
昨日、わたしは同僚が撮影してきた新型BMW X7の写真を見た。それからすぐ、実際に路上で、新型7シリーズとすれ違った。
写真を撮影したプロのカメラマンは、なんとかしてこの新型を見たひとが受ける衝撃と恐怖を最小限に抑えようと、適切な照明をセットして、最適な角度から(後ろから撮るのがベストだ、ということをわたしは発見した)、その姿をレンズに収めようとした。
そう、問題はBMWが最近こだわっているらしい巨大なフロント・グリルだ。
これを見た時に感じたことを表す最適な言葉を、わたしはずっと考えている。今のところ、思い付いたのは「恐ろしい」という言葉しかないのだが、それがBMWの開発テーマだったのだろうか。
新型X7と7シリーズのノーズを見た時、わたしは思わず顔をしかめた。それはちょうど、スポーツで起きたぞっとするような事故の映像が繰り返し放映されるのを目にした時と同じような感じだった。
まさに、痛々しい姿になったクルマとしか言い様がない。
どうしてグリルが大きくなったのか?
なぜ、クルマをそんなふうに思わせるデザインにしたのだろう? 紙に描かれたデザイン画では素晴らしく見えたものが、実車になるまでの間に大きく歪曲してしまったのだろうか?
それとも単に、デザイン・オフィスの幹部がジョークで描き、本当は他の誰かが手を上げて「あの、ボス、すみません。全体的にはとても良いクルマだと思うのですが、そのフロントはちょっと、なんというか、おわかりだと思うのですが、すごく気持ち悪いです」と言わなければならなかったのに、誰も何も言わなかったのでそのまま通ってしまったのだろうか?
ただ1つだけ、絶対になかったと思われるのは、完成したものを見て、誰もが口々に「完璧だ! われわれは実に良い仕事をした」と言ったということだ。
無視することは簡単だ。特にデザインとは、純粋なエンジニアリングに比べたら、主観によるところが大きいからだ。
それはそれとして、わたしは不安を感じている。デザイナーと会ったとき、おそらく冷酷に、彼らの他の仕事、本当に魅力的なクルマのことも、無視してしまうのではないかと。
主要な自動車メーカーがこの数十年の間で送り出した最も醜いクルマを目にしたとき、無視すべきかいなか、境界線はどこにあるのだろう?
「挑戦的なデザイン」はひとびとを惹き付けるか?
BMWは2000年代前半、クリス・バングルがデザイン・ディレクターを務めていた頃には、議論を呼ぶ、時に挑戦的なデザインを送り出してきた時代もあることを、わたしは理解している。
しかし、それらのアイディアの一部が、ある種の顧客を惹き付けたことも事実だ。緊張感のあるサーフェイスには、少なくない数のひとびとが興味をそそられ、このクルマを買うべきだと思ったのだ。
今回もそうなるだろうか。わたしにはわからない。わたしがはっきりと確信できるのは、朝、家の前に駐めてあるクルマを目にして、難しい外科手術の手順を見るときのように顔をしかめるひとびとがいるだろうということだけだ。
グリル拡大 考えられる理由は1つだけ
結局、BMWがなぜそうしたのか、どうしてそうなったのかという理由を探すと、その答えとしてわたしに考えられる可能性は1つだけだ。
BMWはそのドライバーに関して、長年にわたりある種の悪評を得てきた。
例えば英国では、BMWはウインカーレバーがオプションだという古い冗談がある。運転のマナーが悪く、後ろにぴったり張り付いてきたり、追い越し車線に居座り続けたり、ジャンクションで他のクルマが降りるのをじゃましたり、あるいは合流地点で他のクルマが入るのをじゃましたり。それが典型的なBMWドライバーだと。
そういうひとは、最近アウディに乗り換えている。おそらく、新しいグリルはそんな時代の幕を閉じることを意図した最後のデザインタッチなのだろう。
これからBMWドライバーは、今までとは違う目で見られるようになるに違いない。それを言葉で表すと「哀れみ」という。
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