改善を求めたいブレーキペダルの感触
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
メルセデス・ベンツA 250eでエネルギーの回生モードがオートの場合、ナビゲーション・システムの地図情報と、センサーで計測した先行車両との距離を利用。エネルギーの回生量を、自動的に制御してくれる。
エネルギーの回生量を高める手段として、このような複数の情報を利用するメーカーは、メルセデス・ベンツ以外にもある。だが、アダプティブ・クルーズコントロールと独立して機能させているメーカーは、ほとんどない。
おしなべて、PHEVをハイブリッド・モードで運転していると、ブレーキペダルの感触に違和感があることが多い。ジャンクションなどでアクセルペダルを放した際、エネルギーの回生による減速がどれだけ生じるのか、一貫性も得られにくい。
その前提のうえで、A 250eはブレーキペダルを踏み込んだ時の、クルマの反応と効きの強さが予想しにくいと感じた。どれだけエネルギーを回生できているのかも、わかりにくい。
A 250eはペダルの踏み込み時に、エネルギー回生を働かせると同時に、踏み込み量で摩擦ブレーキの強さも調整している様子。その結果、複雑になり、制動力の反応が掴みにくいのだろう。
おそらく、減速時のエネルギー回生は効率的に行えるのだとは思う。だが筆者はなにより、クルマはスムーズで運転しやすいものであってほしいと思う。
普通の速度域なら乗り心地や操縦性も良好
エンジンとモーターを組み合わせて運転する場合、ドライビング・モードはインディビジュアルとスポーツ、コンフォート、エコが選べる。どれを選んでも、初期のアクセルレスポンスには優れる。
環境に優しいモードになるほど、内燃エンジンと8速ATのアクセルへの反応は鈍くなる。郊外へ出たら、毎回スポーツ・モードへ変更するドライバーも多いだろう。
走行性能自体は充分に力強い。特にマニュアルモードで低いギアを選んでいれば、電気モーターのトルクが加算され、低回転域から鋭いピックアップが得られる。
ただし1.3Lエンジンは、あまり高回転域が好きではない。4000rpmを超えるとノイズが大きくなり、必死感が伝わってきてしまう。ドライバーが熱い走りに夢中になるのを、制限するようだ。
サスペンションは、通常の固定ダンパーを採用。ドライビング・モードを変えても、減衰力などは変わらない。
スプリングは柔らかめで、高速道路ではかなり快適。街中で、大きなつぎはぎを超えた時も同様だ。一方で、車内にはかなりの音量のロードノイズが響いてくる。外界との隔離感は、充分ではないといえるだろう。
垂直方向の姿勢制御はやや詰めが甘く、速度を上げると、重い車重の割に減衰力が弱く感じられる場面もある。コーナリング時の姿勢制御は良好で、一定の速度域までなら、操舵感も正確だ。
グリップ力は、横荷重に対してやや弱く、加速時のトラクションもそれなり。ペースを速めていくと、落ち着きに欠く場面はありそうだ。
航続距離の短いEVと考えれば優れている
高速道路の速度域を超えると、A 250eは複雑なメカニズムを搭載した、車重がかさむ前輪駆動のハッチバックだと実感する。反面、日常的な速度域では充分な動力性能を備え、走りもまとまっている。ドライバーの条件次第で、充分に許容することはできるだろう。
筆者は、洗練性やスムーズさといった、運転のしやすさの基本的な部分に目をつぶることはできない。メルセデス・ベンツ製のPHEVとして、品質の向上には大きく期待したいどころだ。
運転が好きなドライバーが、何年も通勤時間を過ごすクルマとしては、ベストの選択肢とはいいにくい。税制面で有利ではあっても、事前に一度試乗することをオススメしたい。
A 250eのダイナミクス性能は、人によっては筆者ほど気にしないこともあるだろうし、より苛立たしく感じる人もいるだろう。同様に、EVモードがもたらす自動車との暮らしの変化が、大きな感銘を与える可能性は十分にある。
メルセデス・ベンツA 250eは、航続距離が短いEVとして考えれば、極めて優れていることは間違いない。しかし3万ポンド(396万円)を超えるAクラスとして考えた場合、足を引っ張る部分があることも、間違いはないと思う。
メルセデス・ベンツA 250e AMGライン・プレミアム(英国仕様)のスペック
価格:3万5980ポンド(474万円)
全長:4419mm
全幅:1796mm
全高:1440mm
最高速度:234km/h
0-100km/h加速:6.6秒
燃費:90.9km/L
航続距離:69-70km(WLTP)
CO2排出量:26g/km
乾燥重量:1680kg
パワートレイン:直列4気筒1332ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
バッテリー:15.6kWhリチウムイオン
最高出力:218ps/5000rpm(システム総合)
最大トルク:45.8kg-m/1620-4000rpm(システム総合)
ギアボックス:8速デュアルクラッチ・オートマティック
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