完璧なほどにリニアなV型10気筒エンジン
text:Matt Saunders(マット・ソーンダース)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
アウディは、R8にアルミ製構造を与えることで、サスペンション設定の自由度を高めている。ダンパー自体は固定式で、ボタンで減衰力を変えることはできない。しかし、変える必要性はほとんど感じない。
ビルシュタイン製のスプリングレートは、ライバルと比べて、最も柔らかい設定ではないことにも驚く。マクラーレンのように、道路と呼応するかのごとく流暢に走るわけではないが、荒れた路面を柔らかく吸収する能力は英国の道路にもピッタリ。
多くのグランドツアラーと呼ばれるモデルより、快適だ。ここだけを見ても、アウディR8 RWDは四輪駆動のR8とはかなり異なる。
それはつまり、安楽に速く運転できることも意味する。望んだ通りのスピードで走らせることができる。一緒に暮らしやすい側面の1つとなっている。
自然吸気のV型10気筒エンジンは、パフォーマンス重視のランボルギーニ・ウラカンRWDに積まれるものと、アクセルレスポンスに違いはある。しかしパワーデリバリーは、完璧なほどにリニア。
フロントタイヤが駆動しなくても、濡れた路面でもトラクションに不足はない。7速デュアルクラッチATも、指摘が難しいほどの仕上がり。唯一、プラスティック製でずんぐりとしたシフトパドルが、このマッチングにはふさわしくない部分だろう。
その気になれば、ダブルウイッシュボーン式のサスペンションと電動パワーステアリングを介して、重心移動を活かした流れるような運転を楽しめる。気持ち良い領域は、高い部分にあるけれど。
後輪駆動化で派手なドリフトも楽しめる
アウディらしく、肉付きの良いレザー巻きのステアリングホイールへは、ほとんど路面のテクスチャが伝わてこない。充分に楽しいが、残念な部分だ。
しなやかな乗り心地を得ていながら、姿勢制御にも優れている。ただし、特に垂直方向の制御は、ミドシップ・スポーツカーのベストほど歯切れが良いわけでもない。もっとも、それはサーキットでの話で、一般道では問題になるほどの差ではないだろう。
後輪駆動のR8 RWDが獲得したもう1つの特徴が、より直感的な回頭性。切り始めでとても敏感なステアリングレスポンスや、可変レシオの悪影響はない。クワトロのR8より、ややリア寄りの前後重量バランスが好感触へ貢献している。
ちなみに1595kgの車重のうち、リアタイヤに掛かる割合は60%だという。不意を突かれることなく、高い満足感のまま、大陸を高速で駆け抜けられる。日常性を高めている、もう1つの要因といえる。
加えてR8 RWDは、はるかにエキサイティングな運転も可能。これは、クワトロ版R8では楽しむことができない、チャレンジ領域だ。
後輪駆動となったことで、2速や3速で曲がるコーナーでは、望めばリアタイヤを豪快にスライドできる。たとえトラクションやスタビリティ・コントロールの制御が程々に入る、スポーツ・モードでも。限界領域でのアンダーステアはほとんど発生しない。
ハンドリングも乗り心地も改善
ここでの課題は、ステアリング。先述の通り、路面の状態を感じ取るのが難しい。しかも、ドリフトし始めると、スイッチを弾かれるように急激に流れる。ミドシップ・モデルの典型ではあるが。
コーナーの頂点を過ぎたところで、適切にアクセルペダルを操作すれば、ステアリングをほとんど操作せずにクルマを流していける。見事な挙動で、ドリフトアングルはスロットルの開度で自在に調整できる。
このバランスを引き出せた瞬間が気持ちイイ。ただし、エラーマージンはポルシェ911や、アストン マーティン・ヴァンテージより間違いなく狭い。同価格帯として、結果的に比較検討したくなる。
ESPの効きの設定が厳しい理由でもある。湿った路面のコーナーでは、ESPの警告灯が点灯することも多いが、点かない場面もあるのだ。楽しむには、ドライバーの技術が試される。ライバルのミドシップ・モデル以上に、簡単には自己満足を得られないのでご注意を。
フロントのドライブシャフトをなくすことで、ハンドリングは甘美になり、乗り心地の良さも引き上げられたR8 RWD。それはフェイスリフト前の、限定モデルのR8 RWSでも同様だった。
日常的な利便性も魅力。とても親しみやすいスーパーカーでもある。フロントノーズの車高は充分あり、視認性も良い。車内は静かで快適で、1日中運転していても疲れない。巡航時の燃費は9.6km/Lだったから、満タン時の航続距離は800kmにも及ぶ。
よりチャレンジングで親しみやすい
R8 RWDは四輪駆動版より1万5000ポンド(198万円)も安い。最高出力は29psほど低く、電磁サスペンションも備わらないが、どちらもR8自体の魅力を高めてはいない。筆者が契約するなら、R8 RWDとなる。
自然吸気V型10気筒エンジンが生み出すトルクは潤沢。いつでも引き出せる。総合的に見て、アウディR8 RWDは、とても秀逸なグランドツアーだといえる。
反面、RWDに限らず、R8はステアリングに伝わる感触が少ない。NAのV10も素晴らしいが、エンジンとの一体感を味わいたいのなら、マクラーレン570Sや991型のポルシェ911 GT3の方が適している。
状態の良い中古車なら、R8 RWD以下の価格で見るけることも英国では可能だ。雨天時も頻繁に運転するなら、クワトロ版R8とどちらが良いか、じっくり検討するべきだろう。
だが、アウディR8 RWDを気に入る理由はいくらでもある。より楽しいアウディR8は、間違いなくRWDの方。
チャレンジングで、親しみやすい。そして、R8の中で一番特別なスーパーカーだ。
アウディR8 RWD(英国仕様)のスペック
価格:11万6280ポンド(1534万円)
全長:4426mm
全幅:1940mm
全高:1240mm
最高速度:323km/h
0-100km/h加速:3.7秒
燃費:7.9km/L
CO2排出量:289g/km
乾燥重量:1595kg
パワートレイン:V型10気筒5204cc自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:540ps/7900rpm
最大トルク:54.9kg-m/6400rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
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みんなのコメント
ドイツイタリアは随分中身の共用を仲良くやってますよね。VWもカイエンも・・
スープラがBMだ・と揶揄する時代じゃないのかも知れないな。
R8ももうすぐ廃盤ですね。